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BIの現状と今後
BIの現状と今後

第2回:従来のBIを補完するリアルタイムBI
著者:野村総合研究所  城田 真琴   2006/3/15
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バッチ指向からイベント指向へ

   これまでのDWHやBIといえば、主に企業の経営層や経営企画部門、マーケティング部門が主なユーザであり、企業の戦略的な意思決定プロセス、特に中長期的な戦略の策定に活用されてきた。そこでは、前日までのトランザクションデータが夜間バッチでDWHにロードされ、ある程度時間をかけて分析されるというのが通常であり、アプリケーションによっては、1日遅れでもなく、週次、月次のデータが分析対象になるというケースが一般的であった。

   しかし、ビジネスを取り巻くスピードが増している昨今において、中長期的な戦略の立案だけでは十分ではなくなってきている。目の前に起きている重要なビジネスイベント(在庫切れ、納期遅延など)をいかにはやく検出し、迅速に分析・意思決定を行い、ビジネスチャンスを逃さない適切なアクションを取れるかが企業の競争優位を確保する上で重要になりつつある(図1)。

バッチ指向からイベント指向へシフトするBI
図1:バッチ指向からイベント指向へシフトするBI
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   つまり、これまでのBIが企業の経営者層に対して中長期的な意思決定に必要な情報を提供してきたのに対し、これから必要となるであろうBIは、現場のマネージャなどに対して、ビジネスの現場で何が起こっているかという情報をタイムリーに提供することで、迅速な意思決定を可能とするものである。

   言い換えれば、従来のBIが「過去に何が起こったか?」の分析に焦点を当てていたのに対し、今後のBIは「今、何が起きているか?」「これから何が起こりそうか?」をリアルタイムに分析・予測するものだといえよう

   こうしたリアルタイム性を高めたBIは、リアルタイムBI、もしくはオペレーショナルBIと呼ばれ、欧米で注目されているトレンドの1つとなっている。従来のBIとこのリアルタイムBIの比較を以下に示す(表1)。

これまでのBI ポイント リアルタイムBI
専門の分析スタッフ、経営層 対象ユーザ 現場の部門マネージャ、一般社員
戦略的/戦術的意思決定 利用目的 日々の業務における意思決定
DWHなどに蓄積されているデータ
(既に発生した事象の分析)
対象とするデータ トランザクションデータ
(今、目の前で起こっている事象の分析)
サマリーデータ
(DWHから定期的に抽出される)
データの細かさ 非常に詳細なデータ
(個々の顧客の購買データなど)
1日〜1ヶ月 分析までに要する時間 リアルタイム、もしくは数分遅れ
定期的なレポーティング、クエリ アクションのトリガ イベントドリブン
(例外的なイベントの検出時)
一方向 データフロー クローズドループ
(業務システムへフィードバックされる)
大規模なDWH、データマート、ETLツールなどが必須 システム投資 大規模なDWHは不要。
相関分析エンジンが差別化要素。

表1:従来のBIとリアルタイムBIの比較

   これまでのBIが主に経営層や経営企画部の専門スタッフを主要ユーザとして、戦略的もしくは戦術的な意思決定に利用されてきたのに対し、リアルタイムBIでは現場の部門マネージャ、さらには一般社員が日常業務における意思決定にBIを活用するようになる。

   また、DWHから定期的に抽出されるサマリデータを分析対象としていた従来のBIと比べて、リアルタイムBIの場合は個々の顧客の購買データのような粒度の細かいトランザクションデータが分析対象となる。最終的に分析された結果が、単にレポーティングされるだけに留まらずに業務システムへフィードバックされ、業務の改善に役立てられるのがリアルタイムBIの特徴である。

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野村総合研究所 城田 真琴
著者プロフィール
野村総合研究所  城田 真琴
IT動向のリサーチと分析を行うITアナリスト。大手メーカーのシステムコンサルティング部門を経て2001年、野村総合研究所に入社。専門は、BIの他、SOA、EAなど。最近はSOX法対応ソリューションのリサーチを手がける。著書に「EA大全」(日経BP社)、「2010年のITロードマップ」(東洋経済新報社)(いずれも共著)など。


INDEX
第2回:従来のBIを補完するリアルタイムBI
バッチ指向からイベント指向へ
  リアルタイムBIの実現に向けて
  欧米ベンチャー企業が提供するリアルタイムBIソリューション
  埋め込み分析というアプローチ