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BIの現状と今後
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第2回:従来のBIを補完するリアルタイムBI
著者:野村総合研究所  城田 真琴   2006/3/15
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欧米ベンチャー企業が提供するリアルタイムBIソリューション

   イベントの抽出から履歴データとの相関分析、さらには予測分析、アラート通知までの一連のフローをリアルタイムで実現するのが、欧米のベンチャー企業が中心となって提供しているソリューションである。主なベンダーを表2に示す。
企業名 設立 所在地 企業概要
Celequest 2002年 米カリフォルニア州レッドウッドシティ 元Informaticaの代表が設立。包括的なオペレーショナル・パフォーマンス・マネジメント・ソリューションを提供。アラートと同時に問題解決に役立つと思われる指標や情報も提示する点が特徴。
Syndera 2002年 米カリフォルニア州レッドウッドシティ リアルタイムなイベント検出、分析、アクションを可能にするオペレーショナル・インテリジェンス・ソリューションを提供.主要顧客は、金融、通信、製造、流通など。
Think Analytics 1999年 英スコットランドグラスゴー 主にCRM向けに顧客行動のリアルタイム予測分析ソリューションを提供。2005年11月にビジネス・オブジェクツに製品のOEM供給することを発表。
SeeWhy Software 2002年 英バークシャイア ビジネス・オブジェクツの出身者が設立。セルフチューニング型のリアルタイムBIソリューションを提供。

表2:リアルタイムBIソリューションを提供する主要ベンダー

   こうしたベンダーはそれぞれ自社のソリューションを「リアルタイム・オペレーショナル・インテリジェンス」「オペレーショナル・ビジネス・インテリジェンス」「オペレーショナル・パフォーマンス・マネジメント」などと称しているが、基本的にほぼ同じものである。

   各社が提供するシステムのアーキテクチャは似通っており、以下のようなコンポーネントから構成されるケースが多い。

イベントをキャプチャするコンポーネント
ERP、CRMなどのアプリケーションやメッセージ・キューイングシステム、EAI(Enterprise Application Integration)、DBなどのソースからビジネスイベントを抽出する。
イベントとコンテクチュアルデータの統合によるモデリングの実行
続々とキャプチャされるイベントを履歴データと統合し、ビジネス的にどういう意味を持つかをリアルタイムに分析し、データモデルを生成する。このモデルは新たなイベントの発生がするとダイナミックに更新される。
ルールベースのモニタリング
生成されたデータモデルに対し、KPIなどの指標を利用して分析を行う。ここでは、KPIがあらかじめ設定した閾値を超えるとビジネスルールに基づくアクションが実行される。
アラートによるユーザへの通知
例外的な状況が発生した場合には適切なユーザへ電子メールの送信、ダッシュボードへの表示、レポートの作成などによって通知する。この際、問題解決に役立つ詳細な情報も一緒に提供される。

表3:リアルタイムBIのコンポーネント

   またベンダーによっては、ビジネスにインパクトを与えるイベントなどを事前に予測する機能も提供するケースもある。

   なお、一般的なこうしたベンチャー企業のソリューションでは、イベントデータをそのまま分析用のデータとするため、データをDWHにローディングするというプロセスは省略される。このため、クレジットカードの不正利用検出やオペレーショナル・リスク・マネジメントなど真のリアルタイム性を求めるケースで非常に有効なソリューションといえよう。

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野村総合研究所 城田 真琴
著者プロフィール
野村総合研究所  城田 真琴
IT動向のリサーチと分析を行うITアナリスト。大手メーカーのシステムコンサルティング部門を経て2001年、野村総合研究所に入社。専門は、BIの他、SOA、EAなど。最近はSOX法対応ソリューションのリサーチを手がける。著書に「EA大全」(日経BP社)、「2010年のITロードマップ」(東洋経済新報社)(いずれも共著)など。


INDEX
第2回:従来のBIを補完するリアルタイムBI
  バッチ指向からイベント指向へ
  リアルタイムBIの実現に向けて
欧米ベンチャー企業が提供するリアルタイムBIソリューション
  埋め込み分析というアプローチ