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BIの現状と今後
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第2回:従来のBIを補完するリアルタイムBI
著者:野村総合研究所  城田 真琴   2006/3/15
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埋め込み分析というアプローチ

   ベンチャー企業がリアルタイムBIソリューションをいちはやく開発したのに対し、SAP、Oracleといった大手ソフトウェアベンダーも、ベンチャー企業とはまた違ったアプローチでリアルタイムBIソリューションを実現している。ここでは、SAP、Oracleが提供しているソリューションを紹介する。
SAP

   SAPでは「SAP Analytics」という名でリアルタイムBIソリューションを提供している。SAP Analyticsでは、mySAP ERPなどのアプリケーションのトランザクションに分析機能を埋め込んだ「埋め込み分析」というアプローチでリアルタイムBIを実現している。この製品は一般ビジネスユーザが目の前にあるプロセスを実行しようとするその瞬間に、「リアルタイムな業務状況を正確に把握することで、洞察に富んだ意思決定とプロセスの実行を支援する」ことを目的として開発されたものである(図4)。

SAP Analytics
図4:SAP Analytics
出所:SAP

   また、複数のシステムからリアルタイムに集められたデータは一覧化され、ダイナミックな分析画面を通じてわかりやすく表示される。さらに、表示されたデータをドリルダウンすることで関連する詳細な情報を瞬時に表示することも可能である。

   SAP Analyticsには、同社のこれまでの業務ノウハウをベースとした、業務別の分析テンプレートが200種類以上も用意されている。例えば、「販売・与信分析ダッシュボード」では販売目標と販売実績の対比や顧客の信用度、与信限度とそれに基づいたスコアなどの分析が行えるテンプレートが提供される。

   また、「生産分析ダッシュボード」では、プラント設備別の稼働率の分析や投入物価格、資源活用、廃物・投入量の変化などの生産変数分析が容易に行えるようなテンプレートが用意されているといった具合である。


Oracle

   Oracleでは、同社のERPソフトである「Oracle E-Business Suite 11i.10」に「Oracle Daily Business Intelligence」(Oracle DBI )というレポーティング機能を埋め込むことで、リアルタイムBIを実現している。DBIは「Oracle E-Business Suite」上で実行された各業務単位の情報を業績管理情報として有効活用することを目的とした経営分析システムであり、ユーザは事前に定義したKPI(Key Performance Indicator)や定型帳票をリアルタイムに経営ダッシュボードなどから参照することができる(図5)。

Oracle DBI
図5:Oracle DBI

   例えば経営者なら、業績情報について四半期などのスパンではなくその日の業績を前年の同じ日の業績と比較するといった、細かいレベルで参照することが可能になる。リアルタイムに必要とする指標を参照できるため、経営者は自社のビジネスの状況を常に把握し、問題があればすぐに対応できる。

   DBIでは、Oracle E-Business Suiteのすべてのアプリケーションで共用される単一のデータモデルを基盤にし、トランザクション処理用データモデルと参照用のデータモデルを同一のデータベースインスタンス内に実装することで、集計データから明細レコードへ直接ドリルダウンが可能である。

   技術的には、Oracle DBが備えるマテリアライズド・ビューの機能により、差分更新やクエリ・リライト、自動リフレッシュなどが可能になったことやRAC(Real Application Clusters)技術によって、トランザクション処理と参照処理がシングルデータベース上で共存できるようになったことが大きい。

   なお、OracleでもSAP同様に「DBI for Supply Chain」「DBI for Procurement」「DBI for Marketing」など業種・業務別のテンプレートを多数用意している。

   これらアプリケーションベンダーの提供するソリューションは、今、ビジネスの現場で行っていることを定量的な指標を用いて、正確に把握しようとするもので、豊富なレポーティング機能に特徴がある。


今回のまとめ

   今回は既存のBIを補完するリアルタイムBIについて解説した。これは、既存のBIを置き換えるものではなく、適材適所でうまく使い分けていくべき新たなソリューションである。

   ビジネスを取り巻くスピードが増すなかでリアルタイムBIのニーズは間違いなく高まっているといえるが、必ずしもすべてのビジネスの現場で本当の意味でのリアルタイム性が要求されるわけではない。

   つまり、重要なことは、業務によって「Real Time」ではなく「Right Time」でBIの機能が提供されれば必要十分なケースも多分にあるということである。自社の業務にとってのRight Timeとは何かをきちんと見極めることが大切になる。

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野村総合研究所 城田 真琴
著者プロフィール
野村総合研究所  城田 真琴
IT動向のリサーチと分析を行うITアナリスト。大手メーカーのシステムコンサルティング部門を経て2001年、野村総合研究所に入社。専門は、BIの他、SOA、EAなど。最近はSOX法対応ソリューションのリサーチを手がける。著書に「EA大全」(日経BP社)、「2010年のITロードマップ」(東洋経済新報社)(いずれも共著)など。


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