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教育現場におけるオープンソース実証実験

第5回:実証実験の評価分析
著者:三菱総合研究所  飯尾 淳   2005/10/13
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先生方からのアンケートの分析

   まずは先生方からのアンケートを集計してソフトウェアの利用率を算出しました。対象としたソフトウェアは、Webブラウザ、オフィススィート、マルチメディア処理、教材アプリケーションの4種類です。なお、この教材アプリケーションとは「スタディノートWeb掲示板」やそのほかの教育用ソフトウェアを指しています。

   これらのアプリケーションの利用率を見ると、Webブラウザの利用率が86.7%とダントツに高い数値を示しています。一説にはIT利活用教育のほとんどがインターネットを使った調べ学習に留まっているという意見もあります。Webのコンテンツを使用した調べ学習が非常に多いという現実はこの結果からも明らかになりました。また、オフィススィートの利用はまだ約1/3に留まりました。


機能性と操作性

   次に、各アプリケーションの機能性を評価した結果を図2に示します。マルチメディアを除き、7割から8割以上の先生方が機能的には問題ないと答えています。また操作性については問題ないと答えた割合が向上し、Webブラウザの操作性については「機能が足りず、使えなかった」と答えた先生は少数でした。

各アプリケーションの機能性の評価
図2:各アプリケーションの機能性の評価
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大表示します)

   マルチメディアについて評価が低いことについては2つの理由があり、それこそが越えなければならない障壁です。

   1つめは動画ファイル形式の問題から教材用マルチメディアコンテンツで見られないものがあったことです。本連載ですでに報告したようにHTMLの記述の仕方に問題があり、ページに埋め込まれた動画をWebブラウザで見ることができないという現象やプレゼンテーションソフト(OpenOffice.org Impress)に動画を貼りつけるのがうまくいかなかったという問題もあり、動画データの取り扱いにまだ課題が残されている点を多くの先生方から指摘されました。

   もう1つは、リムーバブルメディアの取り扱いです。こちらも既報のように、マウント/アンマウントの問題がややこしく感じられたために不評でした。この点は本来はデスクトップ・OS自身の問題点としてカウントされるべき問題のはずですが、実際にリムーバブルメディアでやり取りするデータのほとんどがデジカメの写真データであったために、マルチメディア機能の不備として認識されてしまったという事情もありました。


魅力と満足度

   図3はLinuxデスクトップPCの魅力と今後の利用についての質問と、今回の実証実験に関する総合的な満足度についての感想を求めた結果です。前者については、学校での利用には適していないと答えた先生は63名中2名でした。また後者に関して、今回の実験は非常に不満であった、と答えた先生は1名だけでした。正直なところ不安要素を抱えての実験開始だっただけに、とりあえずのこの結果にプロジェクト関係者は胸をなでおろしたものです。

LinuxデスクトップPCの魅力と今後の利用についてと、総合的な満足度
図3:LinuxデスクトップPCの魅力と今後の利用についてと、総合的な満足度
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大表示します)

   7割から8割の先生方から学校の利用には問題ない、あるいは実験にはほぼ満足したと回答を得ることができました。しかし、逆に見ればまだ改善の余地は2〜3割も残されているともいえます。

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三菱総合研究所
著者プロフィール
株式会社三菱総合研究所  飯尾 淳
情報技術研究部  主任研究員
1994年(株)三菱総合研究所入社。並列計算機関連、ソフトウェア工学、音響・画像処理関連と幅広いテーマで先端情報技術の研究開発業務に従事。専門は、画像処理とユーザインタフェース。著書に「Linuxによる画像処理プログラミング」、「リブレソフトウェアの利用と開発〜IT技術者のためのオープンソース活用ガイド〜」など。技術士(情報工学部門)。


INDEX
第5回:実証実験の評価分析
  実証実験の評価
先生方からのアンケートの分析
  LinuxデスクトップPCに対する苦言と期待
  子どもたちの意見