TOP
>
システムトレンド
> 実証実験の評価
教育現場におけるオープンソース実証実験
第5回:実証実験の評価分析
著者:
三菱総合研究所 飯尾 淳
2005/10/13
1
2
3
4
次のページ
実証実験の評価
本連載の第5回では、実証実験のユーザによる評価について解説します。OSS開発者やOSSデスクトップの振興にたずさわる人々にとって非常に有用なデータのいくつかを紹介しますので、OSS関係者はぜひお読みのうえ、今後の開発にお役立てくだされば幸いです。
この実証実験ではつくば市と岐阜県の小中学校における利用経験から、IT活用授業のためのツールとしてLinuxデスクトップPCを教育現場でほぼ問題なく使用できることが確認されました。プロジェクトでは実際に授業で使用した先生方と子どもたちにアンケートを配り、利用者による直接的な評価分析を試みました。
今回はアンケートによる評価の分析結果と、OSSデスクトップの普及に向けて有効と考えられるコメントのいくつかを紹介します。これらのコメントの中には、現場のユーザからの真摯なリクエストが多く含まれており、興味深いものとなっています。
アンケートの概要
実証実験の効果を定性的に評価するために、本プロジェクトでは個別に関係者のコメントを求めたり、広くアンケートを行ったりして、意見を収集して分析を行いました。アンケートは先生方を対象にしたものと、実際に受業でLinuxデスクトップPCに触れた子どもたちを対象にしたものの2種類を用意し、PCを使って教育を実践する側と実際にPCを使って勉強する側の両面からの評価を試みました。
LinuxデスクトップPCを活用した授業を実施したのは2学期末から3学期にかけてだったので、先生方へのアンケート、子どもたちへのアンケートのいずれも、2月の後半から3月の上旬にかけて実施しています。その結果の詳細は現在IPAのWebサイトで公開している報告書に記載されていますので、詳しい結果を知りたい方は、下記のURLからそちらも参照してください。
IPAのWebサイトで公開している実証実験 実施報告書
「学校教育現場におけるオープンソースソフトウェア活用に向けての実証実験」
http://www.ipa.go.jp/software/open/2004/stc/mri/report/OSDS_report.pdf
なお先生方によるアンケート評価は、同時期につくば市で実施した「Linux PCを活用した共同学習システムの検証プロジェクト」でも類似の分析が行われています。このプロジェクトは、CEC(コンピュータ教育開発センター)によるEスクエア・アドバンス「IT活用教育推進プロジェクト」の一環として実施されたものであり、本プロジェクトと一部リンクしたプロジェクトですが、こちらは特につくば市で活用された共同学習システム「スタディノートWeb掲示板」をLinuxから使うことに焦点を当てて評価しました。
この分析結果もWebサイトで公開されています。本連載で紹介する結果と同じような傾向が読み取れ、興味深い結果となっています。詳しい結果に関しては、下記のURLから参照してください。
Linux PCを活用した共同学習システムの検証
http://oss.mri.co.jp/e2a/
先生方からの評価
先生方へのアンケートはA4版のアンケート用紙にして5枚、設問数が17問の質問紙を用意しました(図1)。ほとんどが選択肢と自由記述を組み合わせた質問です。先生方からは66名の回答を収集でき、そのうちの63通が有効回答でした。3学期も押し迫った忙しい時期に多くの先生方に協力していただき、たいへん感謝しています。
図1:先生方へのアンケート用紙(抜粋)
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大表示します)
各先生方には、実際に使用したソフトウェア、各アプリケーションの機能性と操作性、LinuxデスクトップPCの魅力や今後の利用についてと総合的な満足度について質問しました。その結果、現状のLinuxをデスクトップ用途で用いたときに問題となる障壁がはっきりと浮かびあがったのです。
1
2
3
4
次のページ
著者プロフィール
株式会社三菱総合研究所 飯尾 淳
情報技術研究部 主任研究員
1994年(株)三菱総合研究所入社。並列計算機関連、ソフトウェア工学、音響・画像処理関連と幅広いテーマで先端情報技術の研究開発業務に従事。専門は、画像処理とユーザインタフェース。著書に「Linuxによる画像処理プログラミング」、「リブレソフトウェアの利用と開発〜IT技術者のためのオープンソース活用ガイド〜」など。技術士(情報工学部門)。
INDEX
第5回:実証実験の評価分析
実証実験の評価
先生方からのアンケートの分析
LinuxデスクトップPCに対する苦言と期待
子どもたちの意見