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即活用!企業システムにおけるプロジェクト管理
「即活用!企業システムにおけるプロジェクト管理」

第3回:スコープ管理とスケジュール管理

著者:システムインテグレータ  梅田 弘之   2004/12/13
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説明の中で、(I1)や(S2)などの記号が出てきますが、これは第1回で使ったプロジェクト管理状況チェック表のNo.と対応しています。チェック表で明らかになった問題点に対応する部分は、特に注意して読んでみてください。
スコープ管理

   スコープ管理とは、プロジェクトの目標や作業範囲、成果物をきちんと定義し、その承認、検収について管理することです。スコープには成果物スコープ(Product Scope)とプロジェクトスコープ(Project Scope)があります。前者は、プロジェクトで作成すべき成果物を、後者はそのための作業の範囲を明確にすることです。

   第2回のプロジェクト計画書(第2回:表1)に含入したプロジェクトの目標、成果物などは、もともとこのスコープ管理の計画プロセスのアウトプットなのです。スコープ管理では、PMBOKの知識管理体系(第2回:図1)に則り、[プロジェクトの立ち上げ][スコープ計画][スコープ定義][プロジェクト成果物の検収][スコープ変更管理]という5つのプロセスが規定されています。


PMBOKのプロセス定義

   前回、PMBOKのプロセスにおける「入力」「ツールと実践技法」「出力」という3パートについて、スコープ管理の「プロジェクトの立ち上げ」プロセスを例にとって説明しました(第2回:図2)。スコープ管理には、このほかにも「スコープ計画」「スコープ定義」「成果物の検収」「スコープ変更管理」というプロセスがあります。同じように、「統合管理」や「スケジュール管理」など他の知識エリアにもさまざまなプロセスが定義されています。

   表1は、PMBOKで定義されているプロセス全体と、各プロセスの「入力」「ツールと実践技法」「出力」パートの内容を一覧で表したものです。プロセスにはIn(入力)とOut(出力)があります。どのようなツールや手段(ツールと実践技法)を使って、元になる情報・資料(In)からプロセスの成果物(Out)を作り出すかが定義されているのです。


表1:スコープ管理における5つのプロセス(プロセスの構成Sheet)
(画像をクリックするとEXCELファイルをダウンロードできます。/48KB)



スコープ管理のプロセス
1.プロジェクトの立ち上げプロセス
   当たり前のことですが、プロジェクトがスタートするためには、企業内でプロジェクトをオーソライズする必要があります。弊社の場合は、営業部門が「プロジェクト開発依頼書」を発行し、これを受けて開発部門が「プロジェクト実行予算計算書」というドキュメントを作成します。これが承認(オーサライズ)されると、管理部門がプロジェクトコードを採番して発行し、プロジェクトが正式にスタートする社内規定になっています。


2.スコープ計画
   スコープ計画プロセスでは、プロジェクトの成果物(成果物スコープ)や作業範囲(プロジェクトスコープ)の概要を計画します。方式の設計や費用対効果の分析などにより、プロジェクト全体のスコープ概要を決定してゆきます(S1)。


3.スコープ定義
   スコープ計画をブレークダウンして、具体的なスコープにする工程がスコープ定義プロセスです。成果物スコープでは、どのようなドキュメントや納品物を作成、提出するかを明確に定義します。請負開発の場合は、後でトラブルにならないように最初に成果物をきちんと決めておくことが重要です(S3)。PYRAMIDでは、「プロジェクト計画書」(第2回:表1)の中で提出する成果物を定義する様式にしています。

   プロジェクトスコープの場合は、WBSなどの手法を用いてプロジェクト遂行に必要な作業を具体化します。成果物スコープと同様、請負開発の場合は、これら具体化された作業の分担を明確にしておくことが重要です(S2)。PYRAMIDでは、これらの分担はこの後説明する「スケジュール管理表」の中に記載する様式にしています。


WBS(Work Breakdown Structure:作業分割構造)

   プロジェクトスコープを「スコープ計画」から「スコープ定義」に具体化するために、WBSという手法が使われることもあります。これは、プロジェクトに必要な作業をトップダウンで分析し、階層構造で表現したもので、作業をツリー構造で表し、上部から下部に従って作業を具体化します。ブレークダウン方式で作業の洗い出しを行うことにより、作業想定の漏れをなくそうというもので、ツリー上に登場しない作業が範囲外ということになります。

   図1はECサイト構築プロジェクトのWBSの例です。結合テストにおける作業内容をブレークダウンし、「品質基準定義」「テスト仕様書作成」「結合テスト実施」「テスト報告書作成」という4つの作業を具体的なプロジェクトスコープとして定義しています。このような作業の最小単位は、ワークパッケージ(Work Package)と呼ばれ、これがプロジェクトスコープの管理単位となります。


図1:WBSの例(結合テスト作業)

 「成果物スコープ」と「プロジェクトスコープ」

スコープには、「成果物スコープ」と「プロジェクトスコープ」があります。成果物スコープは、プロジェクトの成果物を定義するものです。システム開発の場合は、一般にプログラムソース・オブジェクトや納品ドキュメントなどが成果物とされますが、もちろんシステムが正常に稼動して使ってもらうということ自体も広義の成果物ということになります。

一方、プロジェクトスコープは、その成果物を作り出すために行う作業の分担を表すものです。基本設計作業や総合テスト、データ移行、ユーザー教育など、プロジェクト遂行に必要な作業を洗い出し、自社の作業範囲がどこまでなのかを明確にすることが大切です。
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システムインテグレータ
著者プロフィール
株式会社システムインテグレータ  梅田 弘之
東芝、住商情報システムを経て1995年にシステムインテグレータ社を設立。 常駐・派遣主体の労働集約的な日本のソフトウェア業の中で、創造性にこだわってパッケージビジネスを行っている。 国際競争力のない日本のIT産業が、ここから巻き返しを図るための切り札は「プロジェクト管理」だと信じ、実践的なプロジェクト管理手法「PYRAMID」を自社開発している。


INDEX
第3回:スコープ管理とスケジュール管理
スコープ管理
  スケジュール管理
  まとめ