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システム企画担当者のためのBIシステム導入の勘所
〜速く、安く、確実に導入するには〜 |
第1回:BIの世界を体験する−イントロダクション
オープンソースBIツールOpenOLAP
著者:アイエイエフコンサルティング 平井 明夫 2004/11/16
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はじめに
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読者の皆さん、はじめまして。今回より12回にわたって、この連載を担当するアイエイエフコンサルティングの平井です。
この連載は、ユーザー企業のIT部門の方々を対象に、ビジネスインテリジェンス(BI)、オープンソースソフトウェアという2つの観点から、システムをいかにして、速く、安く、確実に導入するかのヒントを提供していきます。
連載第一回目の今回は、まずオープンソースのBIツール「OpenOLAP」を使用して、BIアプリケーションの世界を体験していただきます。
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BIツールとは
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会計、販売、顧客、在庫、購買、生産といった企業の業務アプリケーションのデータを取り出し、その傾向や特徴を複数の視点で分析するソフトウェアをBIツールと呼びます。
もっとも一般的なBIツールの利用分野として、販売分析があります。販売分析では、販売管理システムから売上実績データを取り出し、各製品の売上全体に占める割合や前年の同じ月の実績との比率のレポートをつくり、営業担当者などが販売方針を決める際の基礎データとして活用します。
このように便利なBIツールではありますが、ソフトウェア本体や動作環境として必要となるソフトウェアが高価なため、今までは、一部の大企業向でしか利用されてきませんでした。
ここで紹介するOpenOLAP(オープンオーラップと発音する)は、本体も含めて、無償で入手可能なオープンソースソフトウェアだけでシステムを構成できるため、極めて低いコストでBIツールを導入できます。
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BIツールの基本操作
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BIツールでは、論理的に3次元以上の視点を持つ分析用データベースから2次元のクロス集計表としてデータを取り出し、ドリルダウン、スライシング、ダイシングという3つのデータ分析操作により、データの多次元的な分析を行います。
図1は、分析用データベースとデータ分析操作を模式化したものです。
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図1:分析用データベースとデータ分析操作
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この図で、さいころの形をしたものが分析用データベースです。この例では、期間、製品、地域という3次元のデータベースになっています。これらの次元は、それぞれ階層を持っています。
一方、さいころの中には、販売金額という数値が入っています。ただし、この数値は、既に3つの次元と階層の全ての組み合わせについての集計値になっています。
したがって、このさいころの手前の面を2次元の表として見ると、図1の左下のように横軸が期間で縦軸が地域の表になっており、表の中には期間と地域の組み合わせ(この場合9通り)の集計値が含まれていることになります。
このように、分析用データベースの中には、次元(ディメンション)とその次元を構成する項目(メンバー)をキーとして、非常に多くの集計値(メジャー)が含まれています。
RDBでは、データをレコードの単位で、SQLを使用して取り出しますが、BIツールでは、集計値を2次元の表の単位で扱い、ある一つの2次元表に対して次の3つの操作を行うことにより特定の表をとりだすことになります。
OpenOLAPは、分析用データベースの作成をDesignerと呼ばれるモジュールで、OLAP分析操作はViewerと呼ばれるモジュールで実行します。
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BIツールのデータ析操作
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BIツールのデータ分析操作には、ドリルダウン、スライシング、ダイシングという3つのデータ分析操作があります。
ドリルダウンは、ディメンションの階層にしたがってデータを掘り下げる操作です。図1の例では、期間ディメンションの年階層から月階層にドリルダウンしています。ドリルダウンの反対で、より上位の階層に戻る操作をドリルアップと呼びます。
スライシングは、多次元データベースの目に見えていない奥行きになっている次元に沿って切れ目を入れて(スライスして)データの対象を絞り込む操作です。図1の例では、製品次元に沿ってスライスして製品Aだけを対象としたデータに絞り込んでいます。
ダイシングは、多次元データベースをさいころ(ダイス)に見立て、それを転がす(ダイシングする)ことによって、目に見える面を取り替える操作です。図1の例では、地域ディメンションと製品ディメンションをダイシングにより取り替えています。
OpenOLAPのViewerでは、ドリルダウンはマウスのクリックで、スライシングはプルダウンメニューで、ダイシングはマウスのドラッグ・アンド・ドロップで実現されています。
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OpenOLAPの構成
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OpenOLAPの構成を、図2に示します。
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図2:OpenOLAPの構成
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分析用データベースを作成するための元となるソースデータは、いったんPostgreSQLに格納する必要があります。Designerでは、まず分析用データベースのモデルとして、ディメンション、メジャー、及びディメンションとメジャーの組み合わせを定義します。
定義されたモデルは、メタデータとして、PostgreSQLに格納されます。Designerでは、分析用データベースのことをキューブと呼びます。キューブは、Designerにより、ソースデータとメタデータから作成されます。キューブもまたPostgreSQLに格納されます。
Designerの操作は、全てWebブラウザーから実行できます。
キューブへのアクセスは、Viewerにより行われます。ViewerはWebブラウザー上でのデータ分析操作を実現しています。
ユーザーインターフェースとして、Viewerでは、ドリルダウンはマウスのクリックで、スライシングはプルダウンメニューで、ダイシングはマウスのドラッグ・アンド・ドロップで実現されています。
また、Viewerから分析結果をExcel形式のファイルに出力することができます。
今回は、BIアプリケーションの世界を体験していただくために、Viewerを使用したデータ分析操作についてお話します。Designerについて、この連載の後半の方で、詳しくご説明する予定です。
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著者プロフィール
株式会社アイエイエフコンサルティング 平井 明夫
日本DEC(現hp)、コグノス、日本オラクルを経て現職。一貫してソフトウェア製品の開発、マーケティング、導入コンサルティングを歴任。
特に、データウェアハウス、BI、OLAPを得意分野とする。現在、企業業績管理、管理会計などデータ分析ソリューションの短期導入を可能にするテンプレートやパッケージの開発を行っている。
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