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はじめに
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皆さん、はじめまして。本連載を担当するビーブレイクシステムズの川本と申します。
本連載ではEclipseトップレベルプロジェクトの1つであるオープンソースのレポーティングツール「Eclipse BIRT(Business Intelligence and Reporting Tools)」を取り上げます。
皆さんはJavaの開発ツールは何を使っていますか。おそらく多くの方がEclipseを使って開発を行っていると思います。
では、Java開発における帳票ツールとして何を思い浮かべますか。帳票ツールには商用製品からオープンソースソフトウェアまで様々なプロダクトが存在しますが、オープンソースの帳票ツールに絞って見てみるとデファクトスタンダードといえるものは存在しません。
そのような状況の中、開発環境としてデファクトスタンダードの地位を確立したEclipseから提供されるEclipse BIRTは多くの注目を集めています。
帳票開発用に別ツールの利用方法を覚えるよりも、使い慣れたEclipseでJavaのコーディングと同じ感覚で帳票開発が可能であれば、開発スピードの向上に多くの期待が持てます。
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BIとは
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まずEclipse BIRTのBI(Business Intelligence:ビジネスインテリジェンス)とはどういう意味でしょうか。
直訳すれば「仕事の知識」となりますが、ここでの意味としては、「企業内外の大量のデータから、ビジネス活動を適切かつ効率的に運用するためのデータを抽出し、企業の意思決定を適切かつ効率的にバックアップするシステム」といった方が正しいでしょう。
企業のデータベースには、商品データや顧客データ、受発注データといった何百万にもおよぶ膨大なデータが存在します。
企業はBIを導入することにより、その膨大なデータの中から新製品の開発やマーケティング戦略の立案から社内組織の非効率な部分の発見と改善などができます。そういった様々なビジネス活動において、意思決定の裏づけとなる有益なデータをリアルタイムに抽出・分析することができます。
いわばBIは企業に蓄積された様々な「データ」を、ビジネスに有益な「知識(インテリジェンス)」に変換してくれるのです。
では、OLAP(Online Analytical Processing)分析やデータマイニングとどう違うのでしょう。
OLAP分析ではDWH(データウェアハウス)に対しSQL文を駆使し、結果を得るという専門的技術が必要でした。しかしBIはSQLを知らないユーザでも容易に必要とするデータを取得し分析できるのです。ここがOLAPと大きな違いとなります。
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Eclipse BIRTとは
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Eclipse BIRTとは、Eclipse Foundationのトップレベルプロジェクトの1つであり、レポーティングソフトベンダーの米Actuate社が開発したEclipseベースのオープンソースレポート作成ツールです。2005年6月にバージョン1.0が発表され、現在(2006年2月)の最新バージョンは2.0です。
Eclipse BIRTのプロジェクトは、Eclipse上やWebブラウザ上、またはサードパーティーベンダー上でのレポートファイル作成機能(レポートデザインエンジン)、HTMLやPDF形式でのレポート出力機能(レポートエンジン)などを有します。

図1:BIRT Project
表1にEclipse BIRTの主なコンポーネントを記します。
- レポートデザイナ(BIRT Report Designer)
- Eclipseのワークベンチ上で動作するグラフィカルなレポートデザイナ
- レポートデザインエンジン(Report Design Engine)
- レポートデザインファイル生成コンポーネント(レポートデザインファイルとはEclipse BIRTで作成されるXMLファイルです)
- レポートエンジン(Report Engine)
- レポートデザインファイルのHTMLまたはPDFフォーマットへの変換を行うコンポーネント
- データエンジン(Data Engine)
- レポートエンジンとデータのインターフェイスを処理するコンポーネント。レポートエンジンはデータ、データソース、データの加工をデータエンジンを通して行います
- レポートビュワー(Report Viewer Servlet)
- レポートエンジンを使用してレポートデザインファイルをWeb上で表示可能にするコンポーネント。Tomcatなどのコンテナ上に配備すればWebアプリケーションとして動作します
表1:コンポーネント
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著者プロフィール
株式会社ビーブレイクシステムズ 川本 博之
Javaスペシャリスト。前職ではJava専業ソフトウェアハウスにおいてプロジェクトリーダーとして活躍。現職ではオープンソースに関する技術の研究活動を日々行なう。常に、ビジネス設計を意識したユーザが使いやすいシステム構築を心掛けている。
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