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エンジニアの視点から活用するXMLDB
エンジニアの視点から活用するXMLデータベース

第1回:事例から見るXMLデータベース適用範囲の広がり
著者:メタジトリー  丸山 則夫   2006/2/28
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厳密な意味でのXMLDBとは

   様々なメディアや雑誌などで「XMLDB」という言葉が盛んに用いられますが、厳密に考えると筆者は違和感を持ちます。XML形式のドキュメントを格納する仕組みと捉えられなくはないのですが、XMLのドキュメントやデータ自身がスキーマを持っていますので、わざわざデータベース格納用スキーマを作らなくてはならないという原則はありません。従って、なにをどうマネジメントすればXMLDBといえるのでしょうか。

   また、スタイルシートやクエリーが国際標準となっていますので、それを使うことで標準操作でXMLのドキュメントやデータを扱えます。こういったことから、DBMSがなくてもXMLはそれ自体がデータ操作機能を保有しているものといえるでしょう。それなのになぜXMLDBと名乗る意義は何なのでしょうか。これが、このシリーズの1つのテーマです。


B2Bの電子カタログとしてXMLに着目

   筆者が直接XMLDBを活用するようになった時期は1999年頃です。ヨーロッパのあるPC販社がXMLを使ったカタログをWebで公開し、B2B・B2Cを行っていることを聞いたのが著者がXMLDBを活用しようと思ったきっかけです。

XMLを使ったカタログをWebで公開した例
図3:XMLを使ったカタログをWebで公開した例

   その頃は日本でB2Bが騒がれはじめた時期であり、筆者が所属していた会社も新しいEDIを企画していました。筆者がB2BおよびEDIで得意としたところは、XML電子カタログのドキュメントを受発注という情報処理に結び付けることでした。カタログなどのドキュメントの中には情報処理で扱うデータが含まれており、そのデータを自動的に抽出して業務処理に活用できれば、きっとすばらしいことができると考えていました。

   また情報処理のデータを容易にドキュメントに組み入れられれば、機械の冷たいデータ処理と人の温もりのある仕事が連動できるのではないかという夢を描いていました。


技術者にとってのXMLの魅力

   技術者にとってXMLの魅力はメタデータです。メタデータのないXMLはあり得ませんし、そのメタデータを自由に定義できるのがXMLです。技術進化の流れはXMLの整備、つまりモデリングへと必然的に進んで行きます。

   その頃、ebXMLやロゼッタネットなどの話題の中で、データ構造も含んだメタデータの標準化に急激な注目が集まりだしました。

   流通データの標準は蓄積データ(データベースデータの蓄積)に繋げると、両者の関係は「シースルー」の関係となります。このような入り口と内部(データベース)の連携の技術がXMLが得意とする適用分野と捉えられます。


マネジメントシステムとしてのXML

   2000年前後はXMLの優位性の議論が盛んに行われていました。その頃のXMLに対する企業の姿勢は推進派と拒否派と二分していました(その傾向は現在でもその空気を継続しています)。

   XMLの適用領域は段々と広がってきて、先に述べたB2Bのほかに注目する適用領域としてコンテンツマネジメントシステム、ナレッジマネジメントシステム、ドキュメント・マネジメントシステムの実用化へと進んできました。

XMLDBの適用範囲の広がり
図4:XMLDBの適用範囲の広がり

   これら以外にも、ラーニングマネジメントやビジネスプロセスマネジメントなどのマネジメントシステムは沢山あります。

   これらのマネジメントシステムのXML採用には、対象とするサービスのデータにXMLを使うものとマネジメントデータ自身をXMLで保有するものとの2種類あります。

   特に後者は管理データのXML化技術として急激に進化していきました。このような様々なマネジメントシステムは、適用するサービスを特化したXMLDBといえます。

   さらに、これらのマネジメントシステムはサービス対象データやマネジメントシステム自身で扱うデータを他のソフトで活用したり、他のソフトウェアのデータを活用したりするために、インポート/エクスポート機能を持たせて、そのデータにXML形式を採用するケースが多いようです。

   XMLのマネジメント適用の特長は次のようにまとめられます。

  • マネジメントするプロセスの支援データのXML化はプロセスの柔軟性、拡張性が期待できる
  • マネジメント対象データのXML化は拡張性、相互流通性が期待できる

表1:XMLのマネジメント適用の特長

   表1の特長により、これらのマネジメントシステムは頭にエンタープライズの冠を付けたエンタープライズマネジメントシステムへと発展することになります。

   以前、筆者は米国にコンテンツマネジメントの技術調査を何度か実施しました。調査当初のコンテンツマネジメントシステムは個性的なものが沢山存在しており、その違いに目を見張りました。

   そのころXMLの採用はまだ初期段階だったので、XMLをブランド定着の手段としている商品(ソフトウェア)も見られましたが、多くの商品はよりよい機能を保有するためにXMLの採用を積極的に進めていました。

   初期段階のコンテンツマネジメントシステムで著者が注目したのは、ドキュメントやコンテンツ自身をXML化の特徴と既存の非XMLのドキュメント、コンテンツを扱うためにマネジメントデータのXML化の特徴とその有効性でした。


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株式会社メタジトリー 丸山 則夫
著者プロフィール
株式会社メタジトリー  丸山 則夫
株式会社メタジトリー 代表取締役。長年、データ分析およびデータベースの設計、社内統合の情報基盤の整備に従事。 1998年XMLの可能性に着目。電子カタログ、電子ドキュメントなど広範囲な実績をベースに、XMLソリューションのコンセプトをビジネス展開。


INDEX
第1回:事例から見るXMLデータベース適用範囲の広がり
  XMLDBの背景の説明
厳密な意味でのXMLDBとは
  エンタープライズがXMLにもたらしたもの
  ナレッジと新たな技術の創造へ