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エンジニアの視点から活用するXMLDB
エンジニアの視点から活用するXMLデータベース

第1回:事例から見るXMLデータベース適用範囲の広がり
著者:メタジトリー  丸山 則夫   2006/2/28
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エンタープライズがXMLにもたらしたもの

   コンテンツマネジメントシステムなどのシステムが頭にエンタープライズという冠を付けた途端に、米国の市場の状況が変わってきました。急激な商品の生存競争が起こったのです。特長のないものは消え、強い企業は弱い企業を買収しながら、エンタープライズコンテンツマネジメントシステムなどは恐竜のごとく、巨大化する進化をたどりました。

   それまで多数存在していたカンファレンスの開催は延期や中止が続出ししていたことを記憶しています。このような製品およびそれを担いでいた企業の統合化の流れを起こした起爆剤がXMLであったのではないでしょうか。

   XMLが起爆剤である理由は異なるマネジメントを統合する強力接着力(統合力)があるからです。その変化(統合)のスピードは瞬間接着(統合)といかないまでも、相当なスピードをもたらしたからです。

   多くの製品がはじめに多くの種類を生み、その中で淘汰がはじまると、残ったものは巨大化していきます。しかし、その状況下でも氷河期の哺乳類のごとく寸敏なマネジメントシステムは生き残り、もしくは次の時代を夢みる新たなコンテンツマネジメントシステムも存在しています。


エンタープライズシステムとXML

   筆者は数年前にXMLを採用した観測システムの基本設計に参画しました。そのシステムは5つ程度の大きなサブシステムから構成され、全国規模のものでした。そのシステムのXMLの適用の特徴は以下の通りです。

  • リソース(マスタデータ)を一箇所で管理し、一元管理することで分散システムが同じ状態で動作可能にするための原本データベースを設置した
  • 情報交換としてのXMLを採用した

表2:観測システムのXML適用の特徴

観測システムにおいてのデータ交換
図5:観測システムにおいてのデータ交換

   このシステムのサブシステム内の処理について、XMLを使わなくてならないという制約がありませんでした。しかし、他のシステムとのインタフェース部に関してはXMLのデータで制約を設けてデータの統一化・標準化をはかりました。物理的なシステムの中は別々でも、外の流通データがXMLとその形式を統一したのです。

   筆者が担当したことは、システム全体のデータの論理構造を明確にし、その上でデータ項目の名称/型/長さなどの統一をはかることでした。つまり、統一した論理構造からサブシステム間で流れるXML形式のメッセージを切り出したのです。その標準化作業は設計初期段階で実施し、それを元に各サブシステムは具体的な設計を実施しました。

   この事例のように、統一したXMLのメッセージにより動作するサブシステムをもつエンタープライズシステムは、広範囲な標準データのXMLDBを保有しているといえます。


メタデータとXML

   観測システム構築の翌年にEAのリファレンスモデル作成に参加し、筆者はDRM(データリファレンスモデル)を担当しました。その時に注目されたのは、横断的なデータ交換におけるXMLの有効性でした。

   リファレンスとした時の整理方法としてXMLが有効である点は、既述のアメリカにおいてXMLがエンタープライズに与えた影響力の例からでも明らかです。そして、適用規模が大きくなると、そのリファレンスを格納して共有・再利用する仕組みが必要なり、様々なリポジトリを生みます。

   リポジトリもXMLDBの応用系の1つといえます。XMLを語るとき、リポジトリ技術および活用は基礎知識といってもよいでしょう。

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株式会社メタジトリー 丸山 則夫
著者プロフィール
株式会社メタジトリー  丸山 則夫
株式会社メタジトリー 代表取締役。長年、データ分析およびデータベースの設計、社内統合の情報基盤の整備に従事。 1998年XMLの可能性に着目。電子カタログ、電子ドキュメントなど広範囲な実績をベースに、XMLソリューションのコンセプトをビジネス展開。


INDEX
第1回:事例から見るXMLデータベース適用範囲の広がり
  XMLDBの背景の説明
  厳密な意味でのXMLDBとは
エンタープライズがXMLにもたらしたもの
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