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リッチクライアントの現状と今後の動向
リッチクライアントの現状と今後の動向

第1回:リッチクライアントとは
著者:野村総合研究所  田中 達雄   2005/3/7
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Webアプリケーションの時代

   次にファットクライアントの欠点を解消するものとして普及し始めたのが、HTMLとWebブラウザを用いたクライアントアプリケーションである。本連載では、このクライアントアプリケーションをHTMLクライアントと呼ぶ。

   HTMLクライアントの最大の特徴は、「配布の容易さ」にある。Webブラウザがインストールされたクライアントマシンがあれば、インターネット/イントラネットを通じて、どこからでもWebサーバからHTMLファイルをダウンロードし、クライアント画面を描画することができる。クライアント/サーバ・システム時代のときのように、アプリケーションプログラムをCD-ROMなどで配布したりクライアントマシンの環境を再設定したりする必要はない。

   図4に「リッチクライアント評価」調査の結果から導き出したHTMLクライアントの優位性トップ10を示す。これを見ると、以下のようにファットクライアントではワースト10に含まれていた配布やクライアント環境に対する項目が優位性の上位を占めていることがわかる。

HTMLクライアントの優位点(トップ10)

図4:HTMLクライアントの優位点(トップ10)



HTMLクライアントの問題点(表現力と操作性の乏しさ)

   HTMLクライアントは、クライアント/サーバ・システムの問題点であったプログラムの配布やクライアント環境設定に関する問題を解決したが、Webブラウザをクライアントとして利用するが故のデメリットもあった。

   Webブラウザが描画するHTMLファイルは、もともとテキストデータをマークアップするために考案された言語であり、クライアントアプリケーションとして利用するには、ユーザビリティの点で問題があった。例えば、タブキーによる入力フィールドの自動移動や、入力項目のオートフォーマット(「30000」と入力したものを「\30,000」に自動変換するような機能)などは、HTMLだけでは不可能である。

   その後、HTMLを補完する技術としてCSS(Cascading Style Sheet)やJavaScriptなどの言語が登場し、ユーザビリティの問題も多少改善されるようになるが、今度は1つの画面の開発に複数の言語を組み合わせることが多くなり、開発作業が煩雑化するといった問題が生じた。一方、これもHTMLを補完する目的で、JSP(Java Server Pages)、ASP(Active Server Pages)、PHP、Perlなどのサーバサイドの技術が使われ始め、アプリケーションの開発やメンテナンスはますます煩雑化することになった。加えて、HTML以外の言語(CSSやJavaScriptなど)をHTMLファイル内に組み込むとWebブラウザの種類やバージョンによって動作が異なったり、あるいは動作しなかったりするといった問題も生じた。そのため、アプリケーションを更新する度に複数のWebブラウザやバージョンで動作確認テストを行わなければならず、テスト工数を増大させる原因になった。

   図5は「リッチクライアント評価」調査の結果から導き出したHTMLクライアントの優位性ワースト10である。これを見ると、以下のようにファットクライアントでは優位性トップ10に含まれていたUIやクライアントリソースの有効利用に関する項目が上位を占めていることがわかる。

HTMLクライアントの優位点(ワースト10)

図5:HTMLクライアントの優位点(ワースト10)


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野村総合研究所
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  田中 達雄
1989年4月に富士通株式会社に入社。ソフトウェア工学を専門分野とし「UMLによるオブジェクト指向開発実践ガイド(技術評論社出版)」を共著。2001年2月に野村総合研究所に入社。現在、情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト集団に所属。Webサービス/BPMなどの統合技術、エンタープライズ・アーキテクチャなどが専門。


INDEX
第1回:リッチクライアントとは
  リッチクライアントが注目される背景
  クライアント/サーバ・システムの時代
Webアプリケーションの時代
  リッチクライアントは何を解決するのか