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リッチクライアントは何を解決するのか
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リッチクライアントは、前述したこれまでのクライアント技術がはらんでいた問題を踏まえ、ファットクライアントとHTMLクライアントの双方のメリットを備える技術として登場した技術である。具体的には双方から以下のようなメリットを継承している。
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ファットクライアントから継承したメリット
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クライアントリソースの有効利用
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リッチクライアントでは、ファットクライアントと同様にいちいちサーバにアクセスしなくともクライアント側だけで入力チェックやリスト表示、画面遷移など多くの処理を行うことができる。サーバへのアクセスは必要なデータの取得や送信時のみに行えばよい。
このように必要なときだけサーバにアクセスする処理形態をとれるリッチクライアントでは、オフライン環境でも、ある程度の処理を行うクライアントアプリケーションを開発することが可能となる。
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高い表現力と操作性の作りこみやすさ
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リッチクライアントでは、ファットクライアントと同様に利用者とのインターフェースである画面上に、多くのグラフィカルユーザインターフェースを自由に配置することができる。HTMLクライアントでもHTML以外の言語を駆使した場合、ファットクライアントに近いユーザインターフェースを作りこむことはできるが、作りこみやすいとは言い難い。
さらに最近のリッチクライアントでは、動画やアニメーション、音声や3次元(3D)グラフィカルユーザインターフェースなどを提供する技術や製品が提供され始めており、その意味ではファットクライアント以上の高い表現力や操作性をより簡単に作りこむことが可能になりつつある。これはWebアプリケーション利用者の幅(子供から高齢者、企業内であれば経営者、営業、技術者、コールセンターなど)が広がる中で、様々な利用者に合った使いやすいインターフェースを作りこむ自由度を高めることにつながる。
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HTMLクライアントから継承したメリット
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プログラムの配布が容易
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リッチクライアントではHTMLクライアントと同様に、Webサーバから動的にクライアントアプリケーションをダウンロードし起動することができる。そのため、ファットクライアントのようにCD-ROMでの配布やインストール、環境設定などの作業を行わなくてもよいといったメリットがある。なお、1度ダウンロードしたクライアントアプリケーションは、クライアントマシンのローカルディスクに保存することで、2度目以降からはローカルファイルとして保存されているクライアントアプリケーションを起動するといった方法をとることができる。これにより、Webサーバやネットワークにかかる負荷を減らし、またアプリケーションが起動するまでの時間を短縮することが可能である。
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リッチクライアント独自の便利機能
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リッチクライアントでは、ファットクライアントやHTMLクライアントのメリットを継承し、問題点を解決するほかに、以下のような独自の便利な機能も実現されている。
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Webブラウザ特有の問題を解決
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リッチクライアントの多くは、Webブラウザに非依存な実行環境を用意している。そのため、開発者は、Webブラウザの「戻る」ボタンや画面のリフレッシュなどに起因する"Webブラウザ特有の問題"に悩まされることがない。
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通信機能の充実
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リッチクライアントの実行環境には、Webサービスなどの通信プロトコルのサポート、メッセージ到達保障、認証処理、ロギング、暗号化/復号化といった、クライアントアプリケーションがサーバと通信する際に必要となる"お決まりの機能"があらかじめ用意されている技術や製品がほとんどである。そのため、リッチクライアントの開発者は、業務ロジックの作り込みに集中でき、なおかつ配布するクライアントアプリケーションのサイズを小さくすることが可能となる。
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まとめ
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今回は、リッチクライアントが登場した背景やその特徴を解説した。次回は、野村総合研究所にて実施したリッチクライアント市場調査結果を紹介する。
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著者プロフィール
株式会社野村総合研究所 田中 達雄
1989年4月に富士通株式会社に入社。ソフトウェア工学を専門分野とし「UMLによるオブジェクト指向開発実践ガイド(技術評論社出版)」を共著。2001年2月に野村総合研究所に入社。現在、情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト集団に所属。Webサービス/BPMなどの統合技術、エンタープライズ・アーキテクチャなどが専門。
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