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リッチクライアントの現状と今後の動向
リッチクライアントの現状と今後の動向

第2回:リッチクライアントの市場調査結果
著者:野村総合研究所  田中 達雄   2005/3/14
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リッチクライアントに関するのアンケート調査内容

   筆者らは、第1回で報告したような特徴を備えたリッチクライアントに対する評価や市場ニーズを確かめるために、2004年3月15日から4月2日にかけて、「リッチクライアントに関する市場調査」というアンケート調査を実施した。

   アンケートは、無作為に抽出した国内企業約2,000社に郵送で送付し、275社から回答を得た。業種や企業規模(従業員数)の分布は図1のとおりである。参考として回答者のリッチクライアントに対する理解度を示しているが、リッチクライアントを「内容まで深く理解している」、「ある程度の内容は理解している」の合計が約29.5%である。
アンケート結果の概要
図1:アンケート結果の概要


   以降、この調査結果の内容をもとに、今後のリッチクライアントの方向性について考察する。


何をリッチクライアントにしたか?

   まず、現在稼動中のシステムで利用しているクライアントアプリケーションの形態について聞いたところ、全体の約14.4%がリッチクライアントを、約30.5%がHTMLクライアントを、そして約39.4%がファットクライアントを利用しているという結果が得られた(図2)。このことから、依然としてファットクライアントの比率が高いことがわかる。

   また、現在リッチクライアントを利用しているシステムで、以前にどのような形態のクライアントアプリケーションを使っていたのかについては、HTMLクライアントからリッチクライアントに移行したケースが12.9%、ファットクライアントからリッチクライアントに移行したケースが24.0%という結果が得られ、ファットクライアントからの移行が、HTMLクライアントからの移行の約2倍に達していることがわかる(図3)。

現在利用しているクライアント技術
図2:現在利用しているクライアント技術


リッチクライアントへ移行したシステムの種類
図3:リッチクライアントへ移行した
システムの種類


   さらに、リッチクライアントに移行したシステムの種類については、第1位が「非Web系の社内基幹系業務システム」で約17.1%、第2位が「非Web系の社内情報系システム」で約13.5%であった(図4)。

リッチクライアントへ移行したシステムの詳細
図4:リッチクライアントへ移行したシステムの詳細


   HTMLクライアントのユーザビリティの問題を解決するものとして、注目されることが多いリッチクライアントであるが、実際にはHTMLクライアントよりもファットクライアントから移行する場合のほうが多い。さらに、その内訳を見ると、社内基幹系業務システムの割合が最も高い。

   これらの結果から、Webアプリケーションの利便性については認識していたが、ユーザビリティを犠牲にしてまでHTMLクライアントに移行できなかった社内基幹系業務システムを、リッチクライアントを使ってWeb化しているという傾向がうかがえる。

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野村総合研究所
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  田中 達雄
1989年4月に富士通株式会社に入社。ソフトウェア工学を専門分野とし「UMLによるオブジェクト指向開発実践ガイド(技術評論社出版)」を共著。2001年2月に野村総合研究所に入社。現在、情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト集団に所属。Webサービス/BPMなどの統合技術、エンタープライズ・アーキテクチャなどが専門。


INDEX
第2回:リッチクライアントの市場調査結果
リッチクライアントに関するのアンケート調査内容
  これから何をリッチクライアントにしたいのか?
  ファットクライアントの移行ニーズ
  リッチクライアントのメリット/デメリット