2006年を象徴するキーワードの1つとなった「SaaS」は、2007年になっても相変わらず注目を集め続けている。ここでは注目のキーワードを解説した記事のうち、SaaSに関連するもの3本を紹介する。
2006年注目を浴びたHOTキーワード10
前編:イントラブログ/SNS、見える化、ERP、SOX法、SaaS
著者:ThinkIT編集局
SaaSは本当にASP 2.0にすぎないのか
本年を象徴するキーワードの1つとなっている「SaaS(Software as a Service)」は、注目を集めているものの、その実態はいま1つ見えにくいままである。
なぜならSaaSはネットワークを通じてソフトウェアの機能を提供するというデリバリモデルそのものであり、これまでにASPサービスとして展開されていたものと同じ印象を与えてしまうからだ。このため「ASP 2.0」と呼ばれることもあるのだが、否定的な意味合いなのか肯定的な意味合いなのかは、発言する人によって異なるだろう。
ASPとSaaSの大きな違いをあげるとすれば、それはASPが比較的企業の業務に直結したサービスを提供していたのに対し、SaaSはオフィス系アプリケーションや地図、スケジュールといった個人のツールをサービス化したものだといえるだろう。これらのツールは企業内でも一般的に利用されていたものだが、導入コストや工数、保守といった面で様々な負担を企業に強いていた。ある意味でSaaSはこれらの保守や管理をアウトソーシングする1つの手段として活用されることとなるだろう。コスト面については別の可能性もある。従来のアプリケーションは1本いくらのライセンス体系であり、基本的には「買い取り」という形となっていた。ハードウェアはリースできるがソフトウェアはその対象とはならず、さらに一部のソフトウェアを除いて試用できないこともあり、新規ソフトウェアの導入に二の足を踏むケースも多い。一方SaaSではバージョンアップ費用の必要がなく、常に最新のバージョンを利用できる点も大きなメリットとなるだろう。
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第6回:Windows Mobile(前編) 〜パーソナルからビジネスへ
著者:ThinkIT編集局
ビジネスのモバイル化が生む矛盾
これまで、直接情報にアクセスするためにはオフィス内にあるクライアントPCを利用することが中心となっていたが、ビジネスにスピードが求められるようになった昨今では、外出先や取り引き先で直接データを扱う必要がでてきている。この要求に最初に応えたのがノートパソコンだ。必要な情報を持ち歩き、その場で閲覧や処理を行うことができるノートパソコンは、IT化されたビジネスの中で必須のツールとなったが、その一方で紛失や盗難というハードウェア資産のみならず、ビジネス上のデータそのものに対する危険性も生んでしまった。
この対処法として、ノートパソコンに対する全体的なセキュリティ強化策や、持ち出すデータに対してのアクセス権の設定、暗号化など、様々な仕組みが用意されるようになった。しかしそれでも危険性を払拭できないと考える企業では、次第にノートパソコンの持ち出しなどを禁止するという、物理的な対策を行いはじめたケースもある。実際に効果的な手法ではあるものの、ビジネスのスピード化という観点からみれば時代に逆行している面もある。ビジネスのスピード化を求めればビジネスに危険が生じ、危険を解消しようとすればビジネスのスピードが鈍る。この2つの課題の間の綱引きに明確な答えはなく「何を重要とするか」という状況となっているのだ。
そんな中、注目されつつあるのが、ネットワーク越しにデータへアクセスし、かつセキュリティを担保するASPやSaaSといったサービスである。
ネットワークサービスを利用するためのモバイル環境
ASPやSaaSは、提供されるサービスに対して何らかのネットワークを経由して接続を行う。データはサーバ上で管理され、端末はその表示や修正のインターフェースとしてのみ機能するため、手元にある機器の側には基本的に保存されることはない。そして、この端末側の機器としては、これまでもモバイル環境として利用されてきたノートパソコンがその役目を担うこととなった。
さて、一方でASPやSaaSを導入するということは、データにアクセスしている間はなんらかのネットワークを利用する必要がある。これは、Webブラウザや専用のクライアントを利用してデータにアクセスしている以上、仕方のない制約といえる。
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第7回:Windows Mobile(後編) 〜目的を明確化したデバイスの選択
著者:ThinkIT編集局
ASPとSaaSサービスをWindows Mobileから利用する
ActiveSyncによるデータ連携では、基本的にWindows Mobile上にデータが保存されることから、Microsoft Exchange Serverを使って情報漏洩対策を施していない場合には紛失による漏洩の不安が残る。そこで、現在注目されているのが、各種通信機能を利用したASPおよびSaaSサービスの利用だ。
シンプルなWebインターフェースを持つASPサービスであれば、Windows Mobileに搭載されているInternet Explorer MobileやOperaから利用可能だ。また高度な機能を備えたSaaSサービスであれば、専用のアプリケーションが用意されているケースもある。
例えばセールスフォース・ドットコムでは「AppExchange Mobile」という、Windows Mobile向けのアプリケーションを提供している。これを利用することで、すでに提供されている60種類を超えるオンデマンド型のアプリケーションをWindows Mobile上から活用できるようになる。実データはサーバ側に蓄積されており、他のユーザが社内から更新したものを外出先で確認したり、また外出先から編集することができる。これにより常に最新のデータを基にビジネスを進めることが可能だ。ただし、ビジネスを進める現場で、利用可能な通信機能をWindows Mobileが搭載していることが前提となるのは間違いない。
Windows Mobileデバイスの選択
これまでにみてきたように、Windows Mobileデバイスをビジネスに活用するためには、以下の点が検討課題となり、複合的にデバイスとサービスの組み合わせを判断すべきだ。
- 活用すべきデータ
- データのセキュリティ
- 情報の更新頻度
- データを利用する場所
表4:Windows Mobileデバイスを利用する場合の課題
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