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第6回:Windows Mobile(前編) 〜パーソナルからビジネスへ

著者:ThinkIT編集局   2007/4/19
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ビジネスのモバイル化が生む矛盾

   IT化の進むビジネスにおいて、蓄積されたデータへのアクセスと新しい情報の登録というのはビジネスプロセスの中に組み込まれた必須の作業となっている。その一方で情報にアクセスできる/登録できるということは、常にその情報の漏洩や改竄といった問題も同時にはらんでいる。

   これまで、直接情報にアクセスするためにはオフィス内にあるクライアントPCを利用することが中心となっていたが、ビジネスにスピードが求められるようになった昨今では、外出先や取り引き先で直接データを扱う必要がでてきている。

   この要求に最初に応えたのがノートパソコンだ。必要な情報を持ち歩き、その場で閲覧や処理を行うことができるノートパソコンは、IT化されたビジネスの中で必須のツールとなったが、その一方で紛失や盗難というハードウェア資産のみならず、ビジネス上のデータそのものに対する危険性も生んでしまった。

   この対処法として、ノートパソコンに対する全体的なセキュリティ強化策や、持ち出すデータに対してのアクセス権の設定、暗号化など、様々な仕組みが用意されるようになった。しかしそれでも危険性を払拭できないと考える企業では、次第にノートパソコンの持ち出しなどを禁止するという、物理的な対策を行いはじめたケースもある。

   実際に効果的な手法ではあるものの、ビジネスのスピード化という観点からみれば時代に逆行している面もある。ビジネスのスピード化を求めればビジネスに危険が生じ、危険を解消しようとすればビジネスのスピードが鈍る。この2つの課題の間の綱引きに明確な答えはなく「何を重要とするか」という状況となっているのだ。

   そんな中、注目されつつあるのが、ネットワーク越しにデータへアクセスし、かつセキュリティを担保するASPやSaaSといったサービスである。

ネットワークサービスを利用するためのモバイル環境

   ASPやSaaSは、提供されるサービスに対して何らかのネットワークを経由して接続を行う。データはサーバ上で管理され、端末はその表示や修正のインターフェースとしてのみ機能するため、手元にある機器の側には基本的に保存されることはない。そして、この端末側の機器としては、これまでもモバイル環境として利用されてきたノートパソコンがその役目を担うこととなった。

   さて、一方でASPやSaaSを導入するということは、データにアクセスしている間はなんらかのネットワークを利用する必要がある。これは、Webブラウザや専用のクライアントを利用してデータにアクセスしている以上、仕方のない制約といえる。

   なお、一部のリッチクライアントアプリケーションを利用した場合は、端末側でデータを保存/処理することが可能なため、連続した接続が必要ない場合もある。ただし、この場合は別の手法でデータへのセキュリティを確保する必要があるため、ここでは取りあげない。

   日本では、i-modeをはじめとして、携帯電話各社がWebブラウザを搭載した携帯電話端末を市場に投入しており、かつ一般的に利用可能な状況がある。これはすなわち、簡単なWebベースのASPやSaaSサービスであれば、携帯電話から利用できる環境がすでにある、ということを意味している。

   実際に様々なASPやSaaSサービスが携帯電話への対応を行い、実際に利用できるようになっている。しかし、通信速度や回線使用料、さらには表示サイズなどの課題により、あくまで補助的に利用される程度にとどまっている。

   この携帯電話にかわるものとして、導入が進められているのがWindows Mobileデバイスに代表されるモバイル端末だ。

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  携帯電話とPDA
  W-Zero3がもたらした、Windows Mobileの大転換