ブラック・ダック新CEO発表会で語られた、OSSの業界動向
3月12日、ブラック・ダック・ソフトウェアは新CEOの就任を発表した。当日はソフトウェア内のオープンソースを検知するソフトウェアを手がけてきた同社ならではの業界の分析や、近日リリースが予定されているBlack Duck Suite 7をはじめとする同社の製品群について紹介された。
新CEOのシップリー氏が語るOSSの市場動向
2014年1月に就任した新CEOのルー・シップリー氏は、同社の取り組みと現在のオープンソースの動向について語った。
ブラック・ダック・ソフトウェアでは、ソースコード内のオープンソースを検知するProtexなど、開発の現場でOSSを活用するための製品を取り扱っている。こういった製品に役立てるため、新しいオープンソース・プロジェクトが登場するたびに同社のデータベースであるBlack Duck KnowleageBaseに登録を行っている。それによると、現在世界中で100万以上のオープンソースプロジェクトが存在するという。
現在活発に活動を行っているプロジェクトの一例として紹介されたAllseen Allianceという業界団体では、家電やモバイル端末などをスムーズに接続する「モノのインターネット」を推進しており、「AllJoyn」という接続用のフレームワークをオープンソース化して家電製品に組み込み普及させることを目的としている。2014年度は韓国LG社のSmart TV全機種にこのAllJoynが搭載されることになっており、プロジェクトメンバーにはパナソニックやクアルコム、シャープなどの有名企業が名を連ねている。
他にも、Googleが車載用の組み込みソフトにAndroidを搭載するOpen Automotive Alliance(OAA)の取り組みを行っている。OAAにはホンダやGM、現代自動車などの大手自動車メーカーが参加しており、同社ではこうしたプロジェクトの今後の動向を注目している。
こうしたオープンソースのプロジェクトが増えていくことは、同時にライセンスやセキュリティに関するリスクが増えることも意味している。海外の大手多国籍銀行では、自社開発しているアプリケーションではコンポーネントの90%がオープンソースで構成されており(大企業の平均は30%)、次々に登場するOSSを積極的に取り入れたい現場の要望に対して、リスクを回避するため、カタログ化を進めて把握し、承認済みの段階で使用しているという。
シップリー氏はこうしたOSS管理のリスクや複雑さを解消し、原点から消費の時点までコード管理を自動化するOSS Logisticsの考えを紹介した。同社が提供する製品にもコンセプトが盛り込まれている。
OSSニーズの変遷とこれから
ブラック・ダック・ソフトウェア株式会社の代表取締役である金承顕氏は、日本法人設立から現在に至るまでの製品の変化、またOSSに対するニーズや取り扱う業界の変遷について語った。
日本法人であるブラック・ダック・ソフトウェア株式会社は2009年に設立。ソースコードに含まれるオープンソースを検知してライセンス準拠などの判断をするためのProtexをはじめ、OSSの検索やコード使用の承認・取得、脆弱性の監視機能などを備え、社内で積極的にOSSを活用するためのCodeCenter、またソースコードに含まれているOSSの暗号化アルゴリズムを検知し、海外への出荷規制に必要な情報を得ることが出来るExportの3製品を提供してきた。これらの製品の提供には、世界最大級のOSSデータベースであるBlack Duck KnowleageBaseが役立てられている。
それから5年を経て、Protexを日本語化したほか、2014年6月からは、Code Centerなどを統合したBlack Duck Suite 7を提供開始する。
新たなツールおよびサービスも順次追加されている。Code Sighitは社内に散財しているソースコードをキーワードでアクセスできる検索エンジンで、開発の現場で役立てられている。2010年にはオープンソースに特化したコンサルティング会社とWebサイトを買収。オープンソースに特化したポリシーや戦略、プロセスまで上流から策定するサービスの提供と、「Black Duck Open HUB」(Ohlohから改称)では、開発者が無償でオープンソースのプロジェクトに関する多くの情報を得ることができる。
他にも、Black Duck Hubは、同じソースコードを沢山の人が見てバグフィックスや機能追加を行うといった、オープンソースでも採られている「Inner Sourcing」の開発手法を企業内でも取り入れるためのソフトをリリース。順次機能を追加していく予定だという。
オープンソースに対するニーズや、取り扱う業界も変遷を続けている。2009年頃のニーズといえば、主にライセンスのリスクが懸念されていたが、現在は優秀なOSSをより積極的に使っていくためのガバナンスや管理、また前述したInner Soucingの取り組みや、OSSを使ってレガシーシステムをどのようにマイグレーションしていくかを課題として捉える企業も多い。
以前は複合機や電機メーカー、ソフトウェア業界が中心だった業界も、現在は車載や医療、ゲームなどの分野が増えてきており、今後は金融やメディアなどのエンタープライズ分野に注目しているという。こういった事業会社にOSSの利用促進を考えており、そのために同社の製品やナレッジベースや力を発揮できると説明した。
金氏は最後に、同社が取り組んでいるオープンセミナーやリーガルセミナーの実施、OBCI(オープンソースビジネス推進協議会)の理事としての活動やメディアでの情報発信などについて紹介しながら、引き続きオープンソースの啓発に力を入れていきたいと語った。
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(リンク先最終アクセス:2014.03)