クラウド環境のデータストレージを使い分ける
クラウド・コンピューティングによるビジネスロジックの共有
~On-Premiseとの併用も~
最近、霞ヶ関クラウドという言葉を目にすることがあります。
和製クラウドとなると筆者はRuby on Rails とPostgreSQLの組み合わせがよいのでないかと思いますが、ITゼネコンとやゆされず、かつてのトロンOSや情報ハイウェイ構想と同じ轍(てつ)を踏まないためにも、オープンソースをベースに構築がすすめられていくことを期待したいです。
実際に日本でクラウドによるシステムがその一番の成果を見せたのは、定額給付金配布システムであったように思います。定額給付金の経済効果はわかりませんが、この給付のためにクラウドのシステムを利用した「実績」は間違いなく大きいと思います。[※7]
法律改正ごとにプログラムの変更が必要となる会計業務アプリケーションの保守作業は多大な工数となりますが、法律改正と同時に霞ヶ関クラウドにて対象となるテーブルのデータが更新され、これを利用するためのオープンソースのプラグインソフトやサンプルプログラムが提供されるようになると随分とIT業界も変わることでしょう。
一業界のみならず、こうした仕組みが確立されれば消費税をフレキシブルでき、またコミュニティーとクラウドを密接に結合させた新しい経済特区のようなものも創造できそうです。
20世紀が生んだ「制御」という概念をようやく経済学も実践できるようになるわけです。
低コストでスケールするBlob、Table、そしてこれを連携するQueue、またRDBMS型のTableを用意したことで、前者のTableのインデックスを抑えたストレージ構成はマイクロソフト社ならではのものと考えます。
一方で、クラウド環境というのは「端末を通じて大型コンピューターの資源を共同で利用する」という、パーソナルコンピュー誕生以前の自由がきかない時代に戻されてしまう一面もあります。
またクラウドではいろいろな制約があります。制約を守りプログラムを走らせていたつもりでも、利用している言語のライブラリに不具合が検出されれば、これを使用しているプログラムは一時停止されることもありえます。
こうしないと全体のシステムがダウンする危険もあるので当然の対応なのですが、クラウドの利用者側からすると自分のマシンがダウンしたのと同じ状態といえます。
よくできた共有環境に依存しすぎるのは危険な面もあり、そう考えるとWindows Azureの一番の特長は、クラウドとOn-Premiseのスムーズな連携にあると言えるかも知れません。
おわりに
オラクル都市伝説というコラムがあるそうですが、私がかつて耳にした伝説は「WindowsのOracleはWindowsより安定している」というもので、雰囲気はわかるけれどもそんなことはありえないと当時は思っていました。
しかし、オラクルというクラウドは本当に危なくなる前にORA-600を出力して自分を守るのに対して、Windows上の一般のアプリケーションは最後のエラー表示の「青い画面」まで走りつづけてしまうことがあります。
こうしたイメージがあったため「青空」を意味するAzureには正直なところ最初は驚きましたが、今回の執筆を通しAzureはさらに驚くべきものになっていくのではないだろうかという予感と、同時にWindows AzureとSQL Azureの境界も少し気になりだしました。
今後これら2つのAzureがどこまでシームレスなものになっていくか楽しみです。
[※7]クラウド・コンピューティングが拓く新たなシステム化領域(http://www.mizuho-ir.co.jp/publication/column/it/2009/0811.html)(アクセス:2009.09)