「生成AI×オブザーバビリティ」でDevOpsが変わる、企業のデジタル競争力が変わる
はじめに
情報検索やコンテンツ制作、そして開発など、さまざまな領域での生成AIの活用が進み、人による作業プロセスや生産性が劇的に変化、向上しようとしている。そうした生成AIの技術を駆使し、システム運用のあり方を変革しようとしているのが、オブザーバビリティソリューションのプロバイダー、New Relicだ。オブザーバビリティの仕組みと生成AIの融合によってシステム運用がどう変化し、いかなるベネフィットが企業にもたらされるのか。New Relicのキーパーソンに話を聞く。
時代の要請により拡大する
オブザーバビリティの需要
ビジネスや暮らしのデジタルシフトが進むなか、企業が顧客や取引先などに向けて提供しているシステムの状態を良好に保つことが、ビジネス戦略上、きわめて重要な取り組みになっている。
そんな中で需要を急速に拡大させているのがオブザーバビリティソリューションだ。これは、企業システムを構成するインフラやアプリケーションの状態を包括的に観測(オブザーブ)・可視化し、異常の検知やトラブルシューティングを自動化・効率化する仕組みである。その活用によって企業は、サーバーなどのインフラ上の障害だけではなく、アプリケーションパフォーマンスの劣化など、システムのユーザー体験に負のインパクトを与えるさまざまな異常をリアルタイムにとらえ、障害に速やかに対応することが可能になる。
そうしたオブザーバビリティソリューションのプロバイダーとして、世界におけるリーディングカンパニーの位置づけにあるのがNew Relicだ。同社のソリューションはすでに各国の企業で広く活用されており、日本でも、製造・金融・小売・メディアなど、さまざまな業界を代表する企業を中心に約600社に導入されている。
New Relicのコンサルティング部 部長の瀬戸島 敏宏氏は、同社の製品に対する需要が拡大してきた背景要因の1つとして企業システム構造の複雑化を挙げる。
「クラウドプラットフォーム利用の一般化や、アプリケーションのマイクロサービス化の流れなどによって、企業システムの構造は複雑化し、何が原因でユーザー体験に負のインパクトが与えられるかを予測するのが困難になっています。ゆえに、監視ポイントをあらかじめ絞り込み、障害をとらえる従来型のモニタリングだけでは、異常が検知できなくなり、それに代わる仕組みとして、システム全体を観測して異常を検出し、原因を突き止めるオブザーバビリティソリューションへのシフトが進んでいます。それがNew Relic製品に対する需要の拡大につながっています」(瀬戸島氏)
また、オブザーバビリティソリューションを活用することで、システムの開発チームと運用チームの双方は共通の観測データに基づきながら、一体となって異常の原因をとらえ、トラブルシューティングに当たれるようにもなる。つまり、オブザーバビリティソリューションは、DevOps体制の中でシステムのユーザー体験を維持・向上させる仕組みとして有効に機能しうるわけだ。その期待にこたえてきたことも、New Relic製品が多くの企業に支持され、導入されてきた要因であると、瀬戸島氏は付け加える。
さらにNew Relicは、オブザーバビリティソリューションを構成する新たな機能として、LLM(大規模言語モデル)を使ったAIアプリケーションのパフォーマンスやコンプライアンス、品質を監視する「New Relic AI Monitoring」も提供している。これも製品の需要拡大を後押しするものと見られている。
そんなNew Relic製品の価値を一層高める重要な施策として、同社が力を注いでいるのが生成AIの活用である。その取り組みの成果は「New Relic AI」として2024年内にも正式にリリースされる予定だ。
生成AIで強化される
オブザーバビリティの4つの領域
New Relicでは、生成AI技術が成熟し、市場での注目を一身に集める何年も前から、AIによる製品の強化を図ってきた。その取り組みの重点はAIによる運用の効率化、つまりは「AIOps」の実現に置かれ、以下の示すような機能の開発が進められてきた。
- 異常の自動検知:あらかじめ設定したしきい値によってシステムの異常を検知するのではなく「いつもと違うシステムの挙動」を自動で検知する機能の実現
- 根本原因分析:障害の根本原因を自動で特定する機能の実現
- ノイズ除去/アラート集約:大量に発生するアラートを自動でグルーピングする機能の実現
- 障害対応の自動化:異常発生時に適切な人、システムに適切な情報を伝えたり、自動で復旧するために必要な情報を連携したりする機能の実現
生成AIを搭載したNew Relic AIは、こうしたAI活用の取り組みを加速させるものであり、主なユースケースは「①導入&設定」「②問題の自動分析」「③コードの修正」「④自然言語による対話・クエリ」がある。
このうち「①導入&設定」における機能強化は、ユーザーによるNew Relic製品の導入・設定の作業を生成AIに補佐させるというものだ。例えば「この設定方法を教えて欲しい」「アラート抑止して欲しい」といった要望を、自然言語でNew Relicのプラットフォームに伝えるだけで、生成AIがその方法を自然言語でわかりやすく返す仕組みが実現される。
また「②問題の自動分析」においては、問題に対する洞察を得たり、その原因を究明したりするのに必要な情報を自然言語による問い合わせによって生成AIから得られるようになると瀬戸島氏は言う。
一方、「③コードの修正」は、自然言語による問い合わせによって、アプリケーションのエラーを修正するためのコードや、記述したコードのテストケース、テストコードなどをAIに自動生成させる機能だ。「この機能によって、オブザーバビリティプラットフォームを通じてアプリケーションのエラーを検知してから、原因を突き止め、修正コードを記述し、ビルドしてテストを行うまでの一連のプロセスを大幅に効率化することが可能になります」と、瀬戸島氏は指摘する。
さらに「④自然言語による対話・クエリ」は、自然言語を使ってNew Relicのプラットフォームから必要な情報を引き出すための機能だ。例えば「システムに対するアクセス状況を教えて欲しい」「コスト削減が可能なサーバーはあるか」といった問い合わせをかけることで、当該の問い合わせ内容に合わせたかたちでクエリ(New Relic独自の問い合わせ言語を使ったクエリ)が自動生成され、求められた情報が自然言語でユーザーに返されるようになる。
企業のデジタル競争力の強化に
生成AIで貢献
瀬戸島氏によれば、上述したようなAIOpsの実現や生成AIの活用によって、オブザーバビリティプラットフォームは、運用担当者のみならず、開発者や事業部担当者も巻き込んで、デジタル時代における企業競争力、言い換えれば、企業のデジタル競争力を高める仕組みへと進化することになるという。
「DevOpsのサイクルと、AIOpsや生成AIの機能を備えたNew Relic製品とを融合することで、リリースしたアプリケーションに対するユーザーのフィードバックに基づいて、その品質や機能の改善・強化を図る能力を向上させることができます(図1)。その能力は、ユーザー体験やユーザーニーズ起点で高品質のシステムを速やかに提供するためのパワーであり、企業のデジタル競争力を高める源泉です。New Relicはこれからも、生成AIなどの革新技術を取り込みながらオブザーバビリティソリューションをさらに進化させ、お客さまによるデジタル競争力の強化に貢献していきます」(瀬戸島氏)
<お問い合わせ先>New Relic株式会社
URL:https://newrelic.com/jp
eメール:japan_marketing@newrelic.com
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