相手に「分かりやすく話を伝える」方法を伝授するの巻【その2】
読者の皆さま、遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。宮川文吾です。ご縁があってこちらにコラムを書かせていただくようになり、今回は記念すべき10回目です。パチパチパチ。
これからもなるべく役に立つくだらない話を書いていきたいと思いますので、ぜひお付き合いくださいませ。
話し方のポイントを振り返る
さて、前回より「相手に伝わる話し方」について書いております。今回は後編です。
前回は「最初に結論を簡単に説明するだけで、伝わりやすさが全然違うよ!」という話を書きました。それでは、こんな回答はどうでしょうか。
【問題】:
これまでの人生で学んだことの中で、あなたが最も大切だと思うことは何ですか?
【回答例1】:
私が大切だと思うのは、コミュニケーション能力です。現代社会ではSNSが発達しており、若者はさまざまな手段で他人とつながっています。また、現代においてチームの中で適切に力を発揮できるかどうかはすごく重要な問題です。だから、私は今の世の中でコミュニケーション能力こそが最も重大な資質だと考えます。
「最初に結論を簡単に説明する」というのは出来ているように見えますね。でも、それでも何だかよく分からない文章になってしまっています。さて、どこがおかしくて、なぜそのようになっているのか。何が原因なのか、分かりますか?
「論理的ではない文章」は伝わらない
多くの方が陥りやすいのが「結論」をきちんと作った後に「論理的じゃない文章」をくっ付けてしまうことなんです。この「論理的」が分かりにくければ「つながり」と言い換えても良いかもしれません。
「明日は雨だ。だから傘を持っていく」
この文は、誰でも理解できると思います。なぜなら「明日は雨」と「傘を持っていく」のつながりが見えるからです。でも、
「明日は雨だ。だからカバンは持っていかない」
こう言われても「……なんで雨ならカバン持っていかないの?」と理解できませんよね。これは「雨」と「カバン」のつながりが見えないから理解できないのです。
「明日は雨だ。新品のカバンが濡れるのはいやだ。だからカバンは持っていかない」
これだったら「雨」と「カバン」のつながりが見えるので、理解できると思います。
論理というのは、今説明した「つながり」のこと。論理的な文章とは「つながり」がしっかりしていて、つながりが見える文章のことなんです。だから「論理的な文章だと相手に伝わる」というわけです。
そういう意味で言えば、先ほどの回答例1はどうでしょうか。「コミュニケーション能力」と「SNS」、「コミュニケーション能力」と「チーム」。この2つのつながりって、すぐに理解できますか?
前回で「最初に結論を簡単に説明する」と説明しました。そして、それに沿ってこの回答では「コミュニケーション能力が大切だ」と一言語っています。それを結論に定めたのであれば、きちんとそれに沿って、その結論と「つながる話」を展開していくべきなのです。
【回答例2】:
私が大切だと思うのは、コミュニケーション能力です。現代はSNSの発達によってコミュニケーションが多様化しているため、オフラインの人ともうまく会話できるような、高度なコミュニケーション能力が求められます。それに、他人とうまくコミュニケーションをとることができれば、上手な人付き合いをすることもできると思います。1人ではなくチームで働くことも多い現代において、上手に人付き合いができるようになることは非常に大切です。以上のことから、私はコミュニケーション能力こそが最も重大な資質だと考えます。
いかがでしょうか。こうすれば「コミュニケーション能力」と「SNS」のつながりも「コミュニケーション能力」と「チーム」のつながりも分かりやすくなりますよね。
このように「結論と中身のつながりをしっかり考えて書く」ことで、文章はぐんと分かりやすくなります。「この2つはつながるかな?」「つながらないとしたら、間をどう埋めるかな?」そう考えて、文章を作っていくことが大切です。
さて、最後にもう1つ。こちらの回答はどうでしょうか。
【回答例3】:
私が大切だと思うのは、人を信じることの大切さです。人は人を信じて、そして逆に人から信じられることで、信頼関係を築くことができると思います。昨今は人を信じられない人も増えているそうですが、しかし素直になにかを信じることで開く扉もあると思います。なので、私は信じるという気持ちが大切だと思います。
はじめに簡単に結論を述べていますし、つながりもある程度見える文が並んでいるのですが、なんか変ですよね。どこが変なのか、分かりますか?
抽象的すぎる文章は伝わらない
この文章の問題点は「抽象的」なところです。結論も論理もきちんとできるようになった後、最後に待っているのがこの落とし穴、「抽象的」です。
この回答では「人を信じる」というのが何を指すのかさっぱり分かりませんし、「信頼関係が築ける」とか「開く扉もある」とかも書いてあって、さらに何が言いたいのか、よく分かりません。しかも「あると思います」「増えているそうですが」とか、そういう曖昧な表現ばかりで、何1つ伝わってこないのです。
抽象的なことを言って誤魔化したり、曖昧な表現に逃げたりすることは人間の性です。ふわっとしたことのほうが書きやすいですし、なんだか自分も相手も分かったような気になることもあるでしょう。
しかし、真に必要なのは「抽象的な言葉に逃げない」ことです。抽象的なことやふわっとしたことを言っても伝わらないし、また相手にも「本当にこいつ分かっているのか?」と感じられてしまいます。そこで、抽象的な言葉に逃げず、具体的な文章にする努力をします。
【回答例4】:
私が大切だと思うのは、相手の話を素直に受け取ることです。私は昔から頑固で、人の言葉を疑ってかかり、親や先生の言うことをほとんど否定してしまっていたのですが、それでは何も成長することができませんでした。しかし、一度素直に親や先生の言うことを聞いて、アドバイスどおりに実践してみることで、自分のダメなところを修正し、精神的に成長することができました。頑固な自分を捨てて、きちんと人のアドバイスを素直に受け入れることが、自分が学んだ中でいちばん重要なことです。
どうですか。こっちのほうが、先ほどよりも分かりやすいですよね。「信じる」を「人のアドバイスを受け入れる」と具体的に言い換えたり、自分の具体例を入れたりすることで、先ほどとは比べ物にならないほど何が言いたいのか伝わるようになったと思います。
言葉を具体的にしたり、自分の具体例を言ったりするほかには「数字を入れる」というのも有効です。「30パーセントが……」とか「3つのポイントが……」とか、数字を引き合いに出すと、格段に説明が具体的になります。
いかがでしたか。
- 「最初に結論を簡単に説明する」
- 「論理的に結論と中身のつながりを意識する」
- 「中身が抽象的にならず、具体的であるようにする」
この3つを実践することで「何が言いたいのか分からない」と言われない文章作りができるようになります。みなさんも、ぜひ実践してみてください!
2025年の抱負と意気込み
ああ、今年も私のマジメな性格が前面に出た素晴らしいコラムから始まりましたね(結論)。
これまでは締め切りをなかなか守れなかった私でしたが、「やればできる」という素晴らしいフレーズを伝授してくれたティモンディの高岸さんに感謝をしつつ文章を書くことで、おかげさまでこのような中身のある文章も書けるのだと証明することができました(つながり)。
2025年もお仕事をいただけることに感謝しつつ、自分のマジメな性格を前面に打ち出しながら、日々努力を欠かさずに毎月決められた日にコラムをお届けしていきたいと思います(具体的)。
もちろん、毎日の晩酌も欠かさずに続けていきたいと思います(蛇足)!