CNDT 2022、Raspberry PIを使ったマイクロクラスターにKubernetesを入れ可視化した実験を解説
CNDT 2022から、日本アイ・ビー・エムのエンジニアがKubernetesの動きをRaspberry Piを複数使って構成したクラスターを用いて解説するセッションを紹介する。プレゼンテーションを行ったのは日本アイ・ビー・エムでクラウドに関するコンサルティングなどを行っている花井志生氏だ。「目で見て体験! Kubernetesのしくみ」というタイトルで、そのままRaspberry Piを使って構成されたKubernetesクラスターの上でPodを実行、アクセスや起動の際にLEDを発光させることで「見える化」を行っているという内容だ。
PCやクラウドを使わずにRaspberry Piを使った理由に関しては、PCを複数台用意するのが大変だから、そしてクラウドではない理由はハードウェア障害を発生させるのが困難だからと説明した。
デモの環境は、3台のRaspberry Piを使用してクラスターを構成している。Kubernetes自体はハードウェアを抽象化する仕組みでもあるため、Raspberry Pi上に構成されたLEDというハードウェアを制御するという部分においては試行錯誤の結果、Named pipeを使ってGPIOを操作するという方法を選択している。
Raspberry Pi上にブレッドボードを使ってLEDを発光させる回路を実装。ここでは6つのLEDを一つのコンテナから制御していることが説明された。
ブレッドボードに配置されたLEDをコンテナから制御するというのがこのデモの内容だ。
ただしRaspberry Piを使った副作用として、OSとKubernetesのバージョンの組み合わせによっては動かないものがあったこと、ファイアウォールの設定、Raspberry PiのOSが不安定だったことなどを挙げた。
Raspberry Pi 4をマスターノードにRaspberry Pi 3を2つのワーカーノードとして実行、PCからのアクセスをランダムにPodに振り分けるというデモの中では、ワーカーノードの1つのKubeletを終了させて疑似的に異常を発生させた後でレプリカ数を2と定義されているPodが別のワーカーノードで起動されるというのが最初のデモだ。
この他にもアプリケーションが異常終了した際に自動的に再起動が行われるデモやアプリケーションの更新に伴うローリングアップデートのデモ、アプリケーションのデプロイに失敗した際に再起動を行うイメージプルバックオフや時間を置いて再起動するクラッシュループバックオフなどもデモを使って説明した。
またKubernetesの特徴であるオートスケーラーについてもデモを行った。これはCPU使用率を最大20%と定義した上でアクセスを大量に発生させ、Podを1から4まで複数起動させるというデモで、Webアプリなどの運用には必須の機能となる。
実際にCPU使用率が上昇し、Pod数が3つまで起動されていることをデモの中で紹介している。
他にもデータベースなどの状態を維持しなければいけないワークロードのためのステートフルセットについても言及し、複数起動されてしまうことでデータストアに不具合が生じないような工夫がなされていることを解説した。
全体を通してRaspberry PiのLEDの動きを元にKubernetesの動きを説明しているが、待ち時間も多くコンソールからのコマンドで状態を確認することのほうが実際の運用のスタイルには近いのではないだろうか。Raspberry Piを使ってハードウェアに障害を起こさせるというデモも実際にはKubeletを終了させることで疑似的に行っていることを考えると、Raspberry Piを使うことに拘る理由は少ないように思えた。図画工作の延長としてRaspberry Pi上にLEDランプの実装、そのインフラとしてKubernetesの利用はRaspberry Piのホビーとしては有効かもしれないが、これがクラウドネイティブなシステムのための実験かと言われたら若干疑問点が残るように感じた。
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