タスクとコードをつなげるMylyn

2007年9月25日(火)
近藤 寛喜

用途に合わせたEclipse 3.3のパッケージ

   こんにちは。チェンジビジョンの近藤です。Eclipse 3.3(コード名:Europa)がリリースされてはや2ヶ月が経ちました。普段Eclipseをお使いの方はEclipse 3.3へ乗り換えられたでしょうか。

   今回リリースされたEclipse 3.3では用途に合わせて5つのパッケージが用意されています。


  • これまで通りの構成で作成されたEclipse Classic
  • 一般的なJava開発エンジニア用のEclipse IDE for Java Developers
  • JEE開発エンジニア用のEclipse IDE for JEE Developers
  • C/C++言語開発者用のEclipse IDE for C/C++ Developers
  • RCP/Plugin開発者用のEclipse for RCP/Plug-in Developers
表1:Eclipse 3.3のパッケージ

   またPHP開発者のためのPDTプロジェクトがリリースされる予定ですので、もしかするとPHP開発者用のパッケージが公開されるかもしれません。

   そのほか配布サイトではサードパーティのWebサイトへのリンクがあります。これらのWebサイトにアクセスすることで、必要なプラグインを自分で選択しながら開発環境を作成できます。




   さて、このパッケージの機能比較一覧ですが、この中には見慣れない機能があげられています。それはEclipse 3.3のリリースで、同時にリリースされた「Mylyn」というプラグインです。

   MylynはClassicとC/C++以外のパッケージに含まれているので、ほぼ標準的に組み込まれたプラグインであるといえます。本連載ではこのMylynがアプリケーション開発にどんな便利さを提供するかを解説していきます。

Mylynとは

   Mylynとはタスク指向UIを開発環境に提供するために開発されているプラグインです。以前Mylynは、Mylarという名前でリリースされて いました。Mylarがリリースされたのは2006年12月で、そのころから気になっていたり、すでに使っている方も多いのではないでしょうか。

   Mylynを使うのはどのような場面なのでしょうか。

   例えば、クラスの数が1,000以上あるプロジェクトの障害調査をしているときを思い浮かべてください。ある障害について調べていて、関連したクラ スを追いかけていきます。「この辺が怪しい、もう少し中の処理を調べてみよう・・・」といった感じで、気づくとEclipose上で20、30のファイル を開いていることがあるのではないでしょうか。そして、自分がはじめた作業や調べていた作業がなんだったか忘れてしまうことはないでしょうか。

   筆者の場合はある障害について調べている最中、他の障害になりそうなところをみつけてしまうと、そちらが気になってしまう癖があり、本来やるべき だったタスクを忘れることがよくあります。タスク指向UIとはこういった問題を解決するために考えられたUIだと筆者は考えています。

タスク指向UIとは

   図1はMylynのタスク指向UIを有効にした画面です。

Mylynの提供するタスク指向UI画面
図1:Mylynの提供するタスク指向UI画面
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


   図1の左にあるパッケージエクスプローラを見てください。現在行っているタスクに対応するファイルのみが表示されています。このようにMylynを使うことで、現在行っているタスクに対応するファイルのみ表示するようにフィルタリングすることができます。

   Mylynではタスクと編集対象の対応を「タスクコンテキスト」と呼んでいます。MylynからタスクコンテキストのデータをBTS(Bug Tracking System)に登録でき、さらに登録されているコンテキストのデータを復元することもできるので、開発メンバーでそのコンテキストを共有することができ ます。これにより、迅速なタスクの引き継ぎを行うことを実現しています。

Mylynの提供する機能

   Mylynの提供する機能は大きく分けて6つあります。
 

  1. 現在行っているタスクの制御や、タスクのスケジューリングが行えるTask List View
  2. タスクごとに分割した変更履歴の管理
  3. タスクの入力や、編集を行えるリッチエディタ
  4. パッケージエクスプローラーやアウトラインなど、Eclipseが標準的に配布するビュー上でのタスク指向UIモード
  5. BTS(Bug Tracking System)との連携
  6. タスクの検索
表2:Mylynの提供する機能

   Mylynプロジェクトから提供されている機能は大きく分けると上記の6つですが、他のプラグインと連携することでより便利に使えるように設計されています。

   例えば標準で提供されているCVSの変更履歴の管理も、SubversiveやSubclipseなどのMylynを使ってタスクごとに行えるよう、連携するプラグインが提供されています。

   またBTSとの連携機能では、MylynはBTSとの接続口をコネクタとして拡張ポイントを定義しています。Mylynが標準でサポートしている BTSとのコネクタに、BugZilla、Trac、JIRAがあります。その他、サードパーティ製のコネクタもいくつか公開されています。

   今回はMylynのインストールやMylynの基本的な使用方法について取り上げ、変更履歴の管理やBTSとの連携については次回に取り上げます。

株式会社チェンジビジョン

株式会社チェンジビジョンにて製品開発を行うかたわら、Eclipseプラグイン開発など、オープンソース活動に従事。OSGiなどアプリケーションのモジュール化技術に興味があり、趣味で実践し、仕事に生かしている。また、かんばんとスクラムなど、ソフトウェア開発に役立つ記事や書籍の翻訳活動にも従事している。

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