現場エンジニアのための「Proxmox VE」活用術 1

「Proxmox VE」とは? 製品群の全体像と仮想化基盤として注目される理由

第1回の今回は、Proxmoxの4製品の位置づけを整理したうえで、OSS仮想化基盤「Proxmox VE」の特徴と、導入ハードルの低さや安定性など注目される理由について解説します。

大石 大輔

6:30

はじめに

本連載では、オープンソースの仮想化基盤として注目されている「Proxmox VE」について、基本的な考え方からインストール、仮想マシンやコンテナの管理、ストレージ、ネットワーク、バックアップ、クラスタ、HA、セキュリティ、GPU活用、運用監視まで解説していきます。

また、実際に「VMwar」eからの移行をさまざまな環境で行ってきたエンジニアの目線から「VMwareからの移行の現実」と題して話もしようと思います。

第1回となる今回は、前提として「Proxmoxとは何か」、そして「Proxmox VEとは何か」について整理します。

「Proxmox」とは

近年、仮想化基盤の見直しや、いわゆる「脱VMware」の文脈で、Proxmox VEの名前を見かける機会が増えています。

実際、Proxmox VEは「VMware vSphere」などの商用仮想化基盤の代替候補として語られることが多く、プロプライエタリ(開発元が仕様やプログラムの権利を独占し、非公開にしている状態や製品)な仮想化ソリューションのオープンソース代替として導入される事例が増えています。

ただし、最初に押さえておきたいのは、「Proxmox=Proxmox VE」ではありません。多くの方が「Proxmox」と聞いて思い浮かべるのは仮想化基盤のProxmox VEかもしれませんが、Proxmoxはオーストリア・ウィーンに本社を置くProxmox Server Solutions GmbHが開発・提供するオープンソース製品群、あるいはそのブランド名です。

Proxmoxの歴史については、2025年4月29日にリリースされた20周年の記事が参考になると思います。

2026年7月時点で、Proxmoxの製品(プロダクト)は次の4つです。

製品名略称概要
Proxmox Virtual EnvironmentProxmox VE、PVEKVM仮想マシンとLXCコンテナを統合管理する、オープンソースのサーバー仮想化プラットフォーム
Proxmox Backup ServerProxmox BS、PBSVM、コンテナ、物理ホストのバックアップ/リストアを行うバックアップ製品
Proxmox Datacenter ManagerProxmox DM、PDM複数のProxmox VEクラスタやProxmox Backup Serverを一元的に管理するための製品
Proxmox Mail GatewayProxmox MG、PMGメールサーバーをスパム、ウイルス、フィッシングなどから保護する、ゲートウェイ型のメールセキュリティ製品

Proxmox Virtual Environment

「Proxmox Virtual Environment」は、2008年に初期版が公開されました。開発の動機はProxmox Mail Gatewayの開発・評価環境構築のため、とも言われています。

日本国内で商用利用の候補として認知されたのはここ数年かと思いますが、ホームラボ用途などでは広く使われていました。

本連載で主に取り上げるのは、このProxmox VEです。次章以降で詳しく解説しますが、Proxmox VEは単なるハイパーバイザーではありません。仮想マシン、Linuxコンテナ、ストレージ、ネットワーク、クラスタ、HA、バックアップ連携などを統合的に扱うためのプラットフォームです。

Proxmox Backup Server

「Proxmox Backup Serverは」、2020年に最初の安定版がリリースされた、Proxmox VE上の仮想マシンやコンテナ向けのバックアップ製品です。

「Proxmox VE専用ではないのか?」と疑問に思った方もいるかもしれませんが、Linuxホストのバックアップ取得も可能です。増分バックアップ、重複排除、暗号化、データ整合性の確認といった機能を備えています。

Proxmox VEには標準のバックアップ機能もありますが、より効率的にバックアップを取得し、3-2-1-1-0のようなバックアップ戦略を考慮すると、Proxmox Backup Serverとの組み合わせが重要になります。バックアップについては、連載の後半で詳しく扱います。

Proxmox Datacenter Manager

「Proxmox Datacenter Manager」は、2025年12月4日に安定版1.0がリリースされた、Proxmox製品群の中では新しい製品です。

複数のProxmox VEクラスタ、Proxmox Backup Serverインスタンスを単一画面で全体のヘルスチェックやリソース状況、更新状況などを集約して管理・把握できます。

最新のバージョン1.1では、自動インストールワークフローの統合、サブスクリプション管理機能など、多くの新機能が追加され、今後も多くの機能追加が予定されています。

小規模な単一クラスタでは必須ではありませんが、Proxmox VEの利用が広がり複数クラスタを管理する段階になると、各クラスタに個別ログインして状態を確認する、という運用負荷が緩和されて重要性が増してくる製品です。

本連載では、運用・監視の回で本製品について解説する予定です。

Proxmox Mail Gateway

「Proxmox Mail Gateway」は、2005年4月29日にバージョン1.0がリリースされた、Proxmoxの歴史の中で最初に登場した製品です。

メールサーバーの前段に配置するメールプロキシ型のセキュリティソリューションであり、SpamAssassin・ClamAV・Postfixなどで構成され、受信・送信メールを制御し、スパム、ウイルス、フィッシング、トロイの木馬などの脅威からメールシステムを保護します。

時代の流れか、メールシステムを自前で構築・運用するケースは以前より少なくなり、利用機会も減少傾向にあると思います(弊社では利用していますが…)。

現在も継続的にメンテナンスされていますが、バージョンアップ頻度・優先度が他製品と比べて低い印象があり、Proxmoxのトップページの主要な製品紹介枠では他製品に比べて目立ちにくいなど、少し不遇な存在です。

「Proxmox VE」とは

公式サイトでは、Proxmox VEを「エンタープライズ仮想化向けの完全なオープンソース・サーバー管理プラットフォーム」と説明しています。

より具体的に言うと、Proxmox VEは次のような要素を1つのプラットフォームに統合したものです。

  • KVMによる仮想マシンの実行
  • XCによるLinuxコンテナの実行
  • Web GUIによる管理
  • CLIおよびREST APIによる操作
  • クラスタ管理
  • ライブマイグレーション
  • HA(高可用性)
  • ソフトウェア定義ストレージ
  • ソフトウェア定義ネットワーク
  • バックアップ/リストア
  • Proxmox Backup Serverとの連携

ひと言でまとめると、「仮想化基盤に必要な要素を一通り搭載している製品」と言ってしまって良いと思います。

Proxmox VEが注目されている理由

Proxmox VEが注目されている理由として、以下のものがあると考えています。

長い歴史と安定動作

初期リリースから15年以上の歴史があり、枯れている製品と言えます。実際に運用していたり、テクニカルサポートを提供したりしている立場から見ても、基盤側に起因する基本的な障害(例えばVMが突然止まってしまったなどの事象)は、少なくとも弊社の把握範囲ではここ数年間で一度も聞いたことがありません。

導入のハードルが低い

まずはProxmox VEがどのようなものかを知るために、「とりあえず触ってみる」というハードルが非常に低いです。

OSSであり、利用できる機能に制限がありません。特定の機能をアンロックするために有償契約が必要といったこともなく、全機能無料で使えます。

ISOイメージをダウンロードし、ブート用のメディアを作成するだけです。既存の仮想化基盤上に構築することもできるので、その場合はブート用の物理メディアも不要です。

また、ISOイメージの入手のために、Proxmoxのウェブサイトでアカウントを作ったり、利用の申し込みをしたりする必要もありません。

公式なHCL(ハードウェア互換性リスト)は用意されておらず、Linuxが対応するハードウェアであれば動作を期待できます。そのため、余剰資産のハードウェアでも動作するケースが多いです。

実際にProxmox VEはDebianベースで、Ubuntuカーネルをベースとしたカスタムカーネルを利用しているため、Linuxが動けば動作するというのも納得です。

Web GUIが分かりやすい

「KVMベース」と聞くと、LinuxのCLIに精通していないと操作できないように感じてしまうかもしれませんが、Web GUIから簡単に操作できます。また、ローカライズもかなり丁寧に実施されています。

そのため、実際に導入している組織でも、インフラや仮想化基盤の専任でない方でも操作できている点も好評です。

もちろん、Web GUIだけでなく、CLI・APIを利用した高度な運用を行うことも可能です。

構成がシンプルかつ柔軟

vCenter Serverのような管理ノードが必要なく、Proxmox VEだけで一通りの機能を備えた仮想化基盤を構成することができます。

複数台のProxmox VEでクラスタを構成し、ノード障害発生時に自動的にフェイルオーバーするHAクラスタを構築したり、仮想マシンを停止せずノード間を移動させるライブマイグレーションも行えます。 

また、ストレージタイプとしてローカルストレージ、ネットワークストレージ、分散ストレージなどを扱えたり、Linuxの基本的なネットワーク機能やSDN機能なども備えていたりと、Proxmox VEだけでも柔軟な構成やニーズに応えることができます。

公式コミュニティによるナレッジの蓄積や
OSSゆえのソースコード公開

公式コミュニティ(フォーラム、メーリングリスト、Bugzilla)は非常に活動が活発で、情報が充実しています。またOSSであるため、当然ながらソースコードは公開されています。

かつては、日本語ナレッジの少なさを懸念する向きもありましたが、昨今は生成AIなどの技術の発達により言語の壁を意識する場面も少なくなっているでしょうし、ソースコードから仕様を確認することも容易になったことは、ProxmoxやOSSにとって追い風と言えます。

おわりに

今回は、連載第1回として「Proxmoxとは何か」「Proxmox VEとは何か」について整理しました。次回は、実際にProxmox VEをインストールし、初期設定を行うところを解説していきます。


【コラム】Proxmox公式トレーニングが日本語で受講可能に

2026年6月、本連載の執筆を担当するクラスアクトが、日本国内初のProxmox Training Partnerに認定されました。同社は2023年にProxmoxのリセラーパートナー契約を締結し、2024年12月にはアジア初のGold Reseller Partnerにも認定されており、国内におけるProxmoxの導入支援やサブスクリプション販売、技術サポートを手がけてきた経緯があります。

Training Partnerの認定にはProxmox認定トレーナーの在籍が条件となっており、Proxmox VEに関する高度な技術力や実務経験に加え、コミュニティへの継続的な貢献も求められます。従来、Proxmox公式トレーニングの受講には英語かつ海外時間帯への対応が必要でしたが、今後は日本語・日本時間での受講が可能になりました。

Proxmox VEの国内導入事例が増える中、体系的に学べる公式トレーニングが日本語で提供される意義は大きいといえるでしょう。詳細はクラスアクトのWebサイトで確認できます。

この記事のキーワード

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る

企画広告も役立つ情報バッチリ! Sponsored