基礎から学ぶLinuxネットワーク実習 第1回

「Linuxネットワーク標準教科書」について

第1回の今回は、「Linuxネットワーク標準教科書」の全体像を紹介し、「VirtualBox」を使った実習環境の構築とネットワーク接続方式(NAT・ブリッジ等)について解説します。

宮原 徹(みやはら とおる)

6:30

はじめに

「Linuxネットワーク標準教科書」は、特定非営利活動法人エルピーアイジャパンが提供している「標準教科書シリーズ」のうち、ネットワークの学習に利用していただくことを目的として開発、公開している教科書です。

「Linux標準教科書シリーズ」は、様々な種類の教科書を提供していますが、特にLinuxの基礎を学習するために以下の3冊が提供されています。

・「Linux標準教科書」
主にLinuxのコマンド操作を学習するための教科書です。

・「Linuxサーバー構築標準教科書」
主にLinuxを使ってWebサーバー、DNSサーバー、メールサーバーの構築を学習するための教科書です。

・「Linuxシステム管理標準教科書」
主にLinuxのシステム管理を学習するための教科書です。

そして4冊目となる「Linuxネットワーク標準教科書」は、上記3冊で詳細に解説できなかったLinuxネットワークについて補完するために企画、執筆されました。また、従来はPDF版やEPUB版、Kindle版で提供されていましたが、Think ITで連載形式で読むことができるようになりました。もちろん、1冊にまとめられた電子版も入手できますので、「早く読みたい!」という方はダウンロードしてみてください。

「Linuxネットワーク標準教科書」ダウンロードページ
https://linuc.org/textbooks/network/

全体の流れ

本教科書では、以下の通りに実習を進めます。

1章 ネットワーク学習環境の構築

実習環境の構築と、VirtualBoxのネットワークについて解説します。また、パケットキャプチャを行うためにWiresharkをインストールします。

2章 IPアドレス

インターネットの通信の基盤であるIPの仕組みと、IPアドレスについて解説します。

3章 TCP/UDP/ICMP

IP通信の上で使用される、TCPやUDP、ICMPについて解説します。

4章 パケットフィルタリング

IPアドレスやポート番号などを元にパケット通信の許可や拒否を行うパケットフィルタリングについて解説します。

5章 ルーティング/IPマスカレード/プロキシ

インターネットの基本的な通信の仕組みであるネットワーク間を接続する仕組みであるルーティングについて解説します。また、Linuxカーネルのアドレス変換の仕組みであるIPマスカレードや特定のプロトコルをクライアントの代理として接続するプロキシについて解説します。

6章 ネットワークインターフェースの管理

ネットワークの通信を担うハードウェアであるネットワークインターフェースについて解説します。複数のネットワークインターフェースを束ねて冗長化する方法も解説します。

7章 Ubuntuのネットワーク管理

Ubuntuのネットワーク管理に使われるツール(Netplan・UFW)について解説します。

それでは、さっそく1章から内容を紹介していきます。

1章 ネットワーク学習環境の構築

Linuxのネットワークについて学習をするための環境を構築します。

実習用環境について

本教科書の実習では、以下のような環境を想定しています。

ホストOSとしてWindows 11が動作するPC

x86_64プロセッサを搭載した一般的なWindows PCを想定していますが、VirtualBoxが動作するmacOS、Linuxでも可能です。

有線LAN、あるいはWi-Fiでインターネットに接続可能

インターネットに接続するためのルーターがあり、実習用のPCが有線LAN、またはWi-Fiでネットワークに接続されていて、インターネットに接続できることを想定しています。

実習用のPCはDHCPを使って、IPアドレスが自動的に設定されます。

Linuxが動作する仮想マシン

VirtualBoxで仮想マシンを動作させ、AlmaLinux 9.8をゲストOSとして動作させます。実習用仮想マシンの準備は後ほど解説します。

仮想マシン実行環境はVirtualBox以外のものでも構いませんが、ネットワーク設定はそれぞれの仮想マシンソフトウェアによって異なるので、機能や設定方法は個別に確認してください。

インターネット接続用ルーター

実習環境は、インターネット接続用のルーターが存在し、そのルーターを通じてインターネットに接続できることを想定しています。

以後、単に「ルーター」と記述した場合、このインターネット接続用のルーターを指します。

Wi-Fi接続と有線LAN接続

想定しているルーターは、一般の家庭で使用するWi-Fiのアクセスポイントを兼ねたものです。Wi-Fiの接続の他、スイッチングハブ機能を内蔵し、有線LANでも接続が可能です。

DHCPサーバー機能

ルーターはDHCPサーバー機能も備えており、接続したPCやスマートフォンなどにIPアドレスやデフォルトゲートウェイ、名前解決のためのDNSサーバーの情報などを提供します。

想定ネットワーク構成

企業内ネットワークとの違い

企業など数多くのクライアントがネットワークに接続する環境の場合、インターネット接続用のルーター、Wi-Fiのアクセスポイント、DHCPサーバーなどの機能はそれぞれ別々の機器を使用して構成することが多くなります。

家庭用ルーターではすべての機能がオールインワンで備わっていますが、ネットワークにどのような機能が必要なのか理解する必要があります。

スイッチングハブ

有線LANでPCを相互に接続する場合、スイッチングハブが必要です。

接続速度は1Gbpsが主流ですが、最近では2.5Gbpsや10Gbpsといった高速なネットワークを構築できるものも増えています。

以後、単に「スイッチ」と記述した場合、スイッチングハブのことを指します。

スイッチはEthernet接続

スイッチはEthernetと呼ばれるプロトコルで相互に接続します。

Ethernetは「OSI 7階層」で下から2番目の層に当たるため、「L2スイッチ」と呼ばれることがあります。

OSI 7階層

OSI 7階層はISOが定めた「OSI参照モデル」の通称で、通信機能を機能別に7つの階層に分けて定義したものです。

階層数名称例
第7層アプリケーション層 HTTPなど
第6層プレゼンテーション層文字コードなど
第5層セッション層ソケットなど
第4層トランスポート層TCPなど 
第3層ネットワーク層IPなど
第2層データリンク層Ethernetなど
第1層物理層ケーブルなど
OSI7階層

L3スイッチ

スイッチの中には、IPによるルーティングの機能を内蔵したものもあり、OSI7階層の第3階層に当たることから「L3スイッチ」と呼ばれます。

カスケード接続

ルーターにはスイッチ機能が備えられていますが、ポート数が限られています。より沢山のPCを有線LAN接続する場合には、別途スイッチを用意する必要があります。

スイッチとスイッチを相互に接続することを「カスケード接続」と呼びます。カスケード接続すると、1つのポート数の多いスイッチとして機能するようになります。

Wi-Fi接続

Wi-Fi接続は、有線LANのようにケーブルの接続が不要なため、PCやスマートフォンをネットワークに接続するために多く使われるようになりました。

EthernetとWi-Fiの関係

Wi-Fiは、「IEEE 802.11」という国際標準規格に則った無線LANのことを指します。

有線LANで使っているEthernetは「IEEE 802.3」として規格化されており、どちらも同じL2ネットワークを担っています。有線LANと無線LANは相互に接続が可能です。

Wi-Fiのセキュリティ機能

実習では、同じネットワークに接続されている別のPCから仮想マシン上のゲストOSにアクセスすることがあります。

一部のWi-Fiルーターには、セキュリティを高めるためWi-Fi接続しているPCの相互接続を許さない設定がされている場合があります。この機能は「プライバシーセパレータ」や「APアイソレーション」と呼ばれます。

実習で別のPCから仮想マシンにアクセスできない場合、この機能が有効になっていないか、ルーターの管理画面で確認してみてください。

VirtualBoxで使用できるネットワーク

VirtualBoxでは、様々な接続の仮想ネットワークが利用できます。

大きく分けて、ホスト以外の外部のコンピューターと接続する「外部接続」ネットワークと、「仮想マシンのみ」、「仮想マシンとホスト」の3種類に分類できます。

外部接続は、さらにIPによる「NAT」接続と、イーサネットによる「ブリッジ」接続に分けられます。

 名称接続方法
外部NAT外部にNAT接続(L3)
外部ブリッジ外部にブリッジ(L2)
内部内部ネットワーク仮想マシンのみ
内部ホストオンリー仮想マシンとホスト 

以下、主に使用するネットワーク接続について解説します。これら以外のネットワークについては説明は割愛します。

NAT接続

仮想マシンの設定では「NAT」という選択肢になっています。

ゲストOSからの外部への接続をホストOSからの接続に変換します。変換はIPアドレスとTCP/UDPのポート番号を使用しているので、厳密にいえば「NAPT」(Network Address Port Translation)を行っています。

NAT接続

ブリッジ接続

仮想マシンの設定では「ブリッジアダプター」という選択肢になっています。

仮想マシンからの外部への接続をホストマシンのネットワークインターフェースにEthernetで接続します。Ethernetのレベルで相互に接続することを「ブリッジ」と呼びます。

ブリッジ接続

仮想マシンのみ接続

仮想マシンの設定では「内部ネットワーク」という選択肢になっています。

仮想マシンのみを相互に接続する仮想スイッチに接続します。
外部に一切接続できないため、動作が他のPCに影響したり、セキュリティ的に問題があったりする検証を行う際などに使用します。

内部ネットワーク接続

ホストオンリー接続

仮想マシンの設定では「ホストオンリーアダプター」という選択肢になっています。

仮想マシンとホストOSに用意されたホストオンリーアダプターを相互に接続する仮想スイッチに接続します。

ホストオンリー接続

「192.168.56.1」はホストに設定されるデフォルトのIPアドレスです。

まとめ

今回は「Linuxネットワーク標準教科書」を紹介し、実習用環境とVirtualBoxのネットワークについて解説しました。

次回は実際にVirtualBoxを使って仮想マシンを作成し、ゲストOSのインストールと動作確認を行ってみます。

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