キャッシュによる高速化
データキャッシュ機能の強化
続いて、データキャッシュ機能の強化をみていきましょう。
TimesTen製品には、スタンドアロンのデータベースとして使用可能なOracle TimesTen In-Memory Database(以下、TimesTen IMDB)と、バックエンドのOracle Databaseからデータをキャッシュし、連携することが可能なOracle In-Memory Database Cache(以下 IMDB Cache)の2つがあります。従来Cache Connect to Oracleと呼ばれていた機能がIMDB Cacheには含まれています。新機能を紹介する前に、IMDB Cacheについて説明します。
IMDB Cacheの活用方法として、主に2つの使い方があります。
1つ目は、IMDB Cacheを参照専用のキャッシュサーバーとして使用する方法です。Oracle Databaseはマスタとして存在しており、IMDB Cacheへデータを同期させます。大量の参照処理はIMDB Cacheにさばかせ、マスタデータの更新に限ってバックエンドのOracle Databaseに直接処理させます。更新されたマスタデータの差分情報は、定期的にIMDB Cache側に同期させます。
2つ目は、IMDB Cacheにすべての更新処理をさばかせる方法です。Oracle Databaseでは処理しきれない大量のトランザクションをいったんIMDB Cacheにさばかせ、それを後でバックエンドのOracle Databaseへとデータ伝播させます。データを伝播させるタイミングとして同期と非同期が選択可能ですが、通常はOracle Databaseの性能に引っ張られないようにするため非同期で行われます。
これまでのIMDB Cacheでは、IMDB Cacheサーバーを複数台立ててOracle Databaseと連携させる場合、それぞれのIMDB Cacheサーバーに同じデータを持たせる方式(Shared Everything型)が中心でした。このため、大量のデータをキャッシュさせたい場合は、すべてのIMDB Cacheサーバーにメモリを増設させるスケールアップが必要でした。
CacheGridによるスケールアウトの拡張
これに対して、Shared Nothing型の構築を可能としたのが、11gの新機能であるCacheGridです。
Cache Gridは、複数台のIMDB Cacheサーバー間で互いの持つデータの情報を共有しており、クライアントからのアクセスをどのIMDB Cacheサーバーが受け付けてもレスポンスを返すことができるようになる機能です。クライアントからみると、大規模なインメモリDBのように見えるかたちです。
この機能のおかげで、それぞれのIMDB Cacheサーバーごとに異なったデータを持たせることが可能となりました。これまで、データ量の増加に対するアプローチは、メモリ増設というスケールアップだけでしたが、11gでは、IMDB CacheサーバーをCache Gridの構成サーバーとして追加するスケールアウトの拡張も行えるようになります。
つまり、これまでの悩みどころであった、将来増加するデータ量を想定したサイジングを行う必要がなくなります。現状のデータ量をベースにサイジングしたシステム構築を行っておき、データ量が増加した際にIMDB Cacheサーバーを追加するという、スモールスタート/オンデマンドベースの拡張が可能となるわけです。
CacheGridのアーキテクチャーを表したのが図2です。Oracle Database上のデータが各IMDB Cacheサーバー上に分散されて格納されているのがわかります。
CacheGridでは、データを持たないノードへのアクセスが多発すると、高速化の恩恵を受けられない可能性もあります。ですが、アプリケーション・パーティショニングなどの工夫によって、ある程度そのリスクを回避することができます。
旧バージョンまではスケールアップしか拡張の選択肢がなかったことを考えると、スケールアウトやスモールスタートを検討できるようになったことで、可能性を秘めた面白い機能といえるのではないでしょうか。
ここまではTimesTen11gの新機能を紹介してきました。ここからは、キャッシュによる高速化製品としてTimesTenと比較されることの多い、Oracle Coherenceについて紹介したいと思います。