機能一覧表とI/O関連図

2005年7月1日(金)
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)

請負で仕事をするために必要な2つの作業


   システム開発の仕事では、仕様の追加や変更は日常茶飯事です。「これで仕様凍結!と宣言して、仕様変更を受け付けなければ良い」などとこちらの勝手を言う人もいますが、事はそう簡単にはいきません(安易な変更を抑制する効果はありますが…)。現実的にはその仕様のままじゃ動かなかったりするので、ある程度の追加・変更はあるものと覚悟しておく必要があります。

   社会においても「警察官や教師は、不正があってはならない」というタテマエにとらわれて対策を打たないことが問題視されています。「彼らも不正行為を犯す」という前提に立って対処方法を定めておくべきというのが現代の常識です。同じように、仕様変更も発生し得るという前提に立ち、それを吸収しながらプロジェクトを成功させるという柔軟な姿勢が重要なのです。

   常駐・派遣ベースでは、変更が生じてもリスク(コストやスケジュール)は基本的に相手側にあります。しかし、請負で仕事をする場合は、仕様変更による損失がもろにかぶさるので、十分な対処が必要です。

   対処のひとつは、口頭でなく文書レベルでやり取りするということです。具体的には、打ち合わせをしたら「打合議事録」をきちんと書く、タイムリーにレビューをして「レビュー報告書」を提出する、仕様変更は電話ではなく「仕様変更依頼書」で受け付けるなどです。これらは、PMBOKにおけるコミュニケーション管理に相当するもので、プロジェクト管理手法PYRAMIDではドキュメントテンプレートを用意して運用することを定めています。

   もうひとつ、その前段として必要なのがPMBOKにおけるスコープ管理です。つまりプロジェクトスタート時に開発範囲を明確にしておくことが大切です。スコープの表現には作業(タスク)と成果物の2つの切り口があります。

   ときどき未確定な部分があるという理由で、スコープをあいまいにしたままプロジェクトをスタートさせている例を見かけます。しかし、そんな場合でも"その他帳票10本"というように未確定ながらボリュームを抑えておくことが、請負で仕事をする際は肝心です。


機能一覧表


   第1回は、開発ドキュメント標準DUNGEONで規定されている開発ドキュメント体系を紹介しました。また、その中から「業務フロー」の標準テンプレート記入例をもとに、業務フロー記述のポイントについて解説しました。

   今回は、スコープを明確にするためのドキュメント「機能一覧表」を取り上げて説明しましょう。図1は、DUNGEON様式の「機能一覧表」の記入例です。システム開発対象となる機能を洗い出して、大分類(サブシステム)、中分類(機能分類)ごとに整理して一覧表にまとめています。

DUNGEONの「機能一覧表」記入例
図1:DUNGEONの「機能一覧表」記入例
(画像をクリックするとExcelファイルをダウンロードできます。/33.0KB)

   ここでは、機能ごとに画面入力、画面照会、帳票出力、バッチ処理の4種類に区分けをしています。このほかにも帳票出力指示画面などがありますが、それらは"照会"に区分けすることで対応します。

   プロジェクトの最初の段階では、機能の洗い出しが完全にできません。しかし、ぐずぐずと「機能一覧表」の作成を延ばしていると、全体のボリューム把握が遅れプロジェクトに支障が生じます。機能一覧表は、不完全でも良いので必ずプロジェクトの初期段階で作成し、仕様が固まるのと並行して追記・修正していくようにしてください。

著者
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)
株式会社システムインテグレータ

東芝、SCSKを経て1995年に株式会社システムインテグレータを設立し、現在、代表取締役社長。2006年東証マザーズ、2014年東証第一部、2019年東証スタンダード上場。

前職で日本最初のERP「ProActive」を作った後に独立し、日本初のECパッケージ「SI Web Shopping」や開発支援ツール「SI Object Browser」を開発。日本初のWebベースのERP「GRANDIT」をコンソーシアム方式で開発し、統合型プロジェクト管理システム「SI Object Browser PM」など、独創的なアイデアの製品を次々とリリース。

主な著書に「Oracle8入門」シリーズや「SQL Server7.0徹底入門」、「実践SQL」などのRDBMS系、「グラス片手にデータベース設計入門」シリーズや「パッケージから学ぶ4大分野の業務知識」などの業務知識系、「実践!プロジェクト管理入門」シリーズ、「統合型プロジェクト管理のススメ」などのプロジェクト管理系、最近ではThink ITの連載をまとめた「これからのSIerの話をしよう」「エンジニアなら知っておきたいAIのキホン」「エンジニアなら知っておきたい システム設計とドキュメント」を刊行。

「日本のITの近代化」と「日本のITを世界に」の2つのテーマをライフワークに掲げている。

連載バックナンバー

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています