コスト削減につながる11g R2の5大新機能

2009年10月29日(木)
山本 祐介

仮想データベースでアップグレード/パッチ適用を支援

■5. アプリの無停止メンテナンスを実現するOnline Application Upgrade

 5つ目は、第3回(http://thinkit.jp/article/1050/1/)で紹介した計画停止時間の最小化に関する新機能です。11g R2では、アプリケーションのアップグレードやパッチ適用時の停止時間を最小化するための機能として、Online Application Upgradeが登場しました。

 アプリケーションのアップグレードやパッチ適用の際には、列の追加・削除といった表の構成変更やストアド・プロシージャの変更など、データベースに関連する変更が多く発生します。

 こうした際に、これまでは次のような対応が必要でした。

(1)データベースを含むシステム全体を停止し、アップグレードやパッチ適用の作業を行う

(2)並行稼働のために、新しくデータベースを用意する

 特に、24時間365日の稼働が求められる基幹システムなどでは、コストが非常にかかってしまう、上記(2)の並行稼働という選択肢を取らざるを得ませんでした。

 一方、今回登場したOnline Application Upgradeでは、データベースの内部で仮想的にもう1つのデータベース(これをエディションと呼びます)を稼働させることができます。

 これにより、並行稼働のためのデータベースやサーバーを別途用意することなく、アプリケーションのアップグレードやパッチ適用が可能になります。

 アプリケーションのアップグレード時の実際の流れは図3の通りです。現行のデータベースを基にしてエディションを作成し、それに対してデータベースへの変更作業を実施します。新しいアプリケーションは、エディションに対して接続し、動作確認を行います。その後、本番運用を新しいアプリケーションに切り替えます。

 Online Application Upgradeのまとめは、以下の通りです。

・アプリケーションのアップグレードの際には、並行稼働のために新しくデータベースやサーバーを用意する → データベースの機能で並行稼働が可能になり、アップグレードのコストを低減できる

テーマ別に新機能を整理&多くの使える新機能

 これまで、ITコストの削減につながる11g R2の5大新機能を紹介してきました。以下では、テーマ別に新機能を整理するとともに、ここまで紹介できなかったけれども非常に有用だと思われる機能(※印)について紹介します。

■サーバー統合
・インフラ全体を仮想化するOracle Grid Infrastructure
・小規模データベースを集約するRAC One Node
・一元的なストレージ管理を実現するAutomatic Storage Management

■パフォーマンス
・ハードウエアの進化を最大限に活用するIn-Memory Parallel Query
・Oracleが最適なパラレル度を設定する自動パラレル度設定※
・ディスク配置を最適化するIntelligent Data Placement※
 -ディスク上の性能差(外周・内周)を考慮した配置が可能に(ASM)

■障害対策
・仮想化ソフトウェアやクラスタウエアよりも高い可用性要件が満たせるRAC One Node
・アプリの無停止メンテナンスを実現するOnline Application Upgrade
・標準バックアップ・リカバリ・ツールRecovery Manager※
 -新たな圧縮方式が追加され、データ容量の削減とバックアップの高速化を実現

■災害対策
・サイト障害からデータベースを保護するData Guard※
 -転送するログデータを圧縮することで、帯域コストをさらに低減
 -本番データベースのブロック障害に際し、待機データベースを利用して修復
・災害対策環境を最大限活用するActive Data Guard※
 -待機データベースのデータを参照する際、本番データベースと明示的に同期させることが可能に

■その他
・データベースに格納した非構造化データの容易な操作を可能にするDatabase File System※
・データ圧縮の効果と最適な圧縮方式をアドバイスするCompression Advisor※

 以上、ここに掲載した機能は、11g R2が持つ新機能のほんの一部ですが、参考にしていただければと思います。なお、新機能の一覧はOracle Technology Networkの「Oracle Database 新機能ガイド(マニュアル > Oracle Database 11g Release 2 > Generic Doc > 新機能ガイド)」(http://www.oracle.com/technology/global/jp/documentation/index.html)をご覧ください(近日中に公開予定)。

■最後に ~本連載のまとめ

 本連載では、よくご依頼を受けるテーマ(サーバー統合、パフォーマンス・チューニング、障害対策、災害対策)を通じて、Oracle Databaseの特徴について紹介してきました。

 現在のOracle Databaseは、データを格納する箱としての“単なるデータベース”、“単なるSQLエンジン”ではなく、アプリケーションやストレージなどを含めたシステム全体を最適化する機能を備えた“データベース・インフラ”へと進化しています。

 今後のシステム構想・構築の際に生かしていただければ幸いです。

 Oracle Databaseの最新情報は、以下のサイトやセミナーなどを通じてお伝えしていきます。

「Oracle Database 11g Release 2 最新情報」(http://www.oracle.co.jp/campaign/11g/
「Oracle Technology Network」(http://www.oracle.com/technology/global/jp/
「Oracle Direct Seminar」(http://www.oracle.co.jp/direct/seminar/
「Oracle Database Summit 2009 - 11g R2 & Exadata V2 登場!」(http://www.oracle.co.jp/events/dbs2009/

日本オラクル株式会社
Oracle Direct / Technical Service Group 所属。Oracle Database, In-Memory Solution, 仮想化などの製品を担当し、プリセールス活動やオンラインセミナー(Oracle Direct Seminar: http://www.oracle.co.jp/direct/seminar/)等による情報発信を行う。現在はWindows Server上でのOracle製品活用を推進している(http://www.oracle.co.jp/campaign/mb_tech/

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