日本発のOSS「プリザンター」、グローバル展開の第一歩 〜ベトナム・コードラック社との交流訪問記〜

プリザンターは、株式会社インプリムが開発する日本発のオープンソースソフトウェア(OSS)のノーコード・ローコード開発ツールです。無料で導入できるという敷居の低さやクラウドでもオンプレミスでもどちらでも構築可能であり、WindowsでもLinuxでも構築できるという動作環境のバリエーションの豊富もあって、国内外での利用が徐々に拡がっています。すでに国内では多くの企業や団体に導入され、業務効率化を支えるノーコードプラットフォームとしての可能性が評価されつつあります。国内でのプリザンター活用の実績をベースに、日本企業の海外拠点にプリザンターが展開されている事例は徐々に増えているものの、グローバル市場においての認知度はまだまだこれからといった段階です。ですが、そのような状況のなかで、2024年はその転換点と言える年となりました。
今年、プリザンターは初めて海外企業を認定パートナーに迎えました。その企業がベトナム・ハノイに拠点を置くコードラックテクノロジー株式会社(以下、コードラック社)です。このパートナーシップは、英語版ユーザマニュアルの公開や英語による技術サポートの提供など、グローバル展開の基盤を整えるための重要な一歩となりました。
コードラック社とは
コードラック社は、2020年に設立されたベトナムのIT企業で、日本とドバイにも支社・関連会社をもっており、日本市場向けのオフショア開発に数多くの実績を持つ企業です。同社はAI、ローコード開発、DXソリューションなど最先端の技術分野を広くカバーしており、高い品質基準を維持するためにISO 9001やISO/IEC 27001の認証を取得しています。
特にプリザンターに関しては深い知識と豊富な技術コンサルおよびサポートの経験を有した専任チームを編成し、約21名のエンジニアが携わっています。このチームにはBrSE(ブリッジSE)や開発エンジニア、品質保証担当(QA)が含まれ、日本側の仕様や要件を理解した上で要件定義から詳細設計、コーディング、テストに至るまで幅広い作業を担当しています。コードラック社はプリザンターの豊富な開発経験を活かし、APIによる他システムとの連携、スタイルやスクリプトを用いたカスタマイズなど、顧客の多様なニーズに応える高い技術力を持っています。
また、プリザンター以外の技術領域においてはVueJS、ReactJS、PHP Laravel、Powershellなどの多彩な技術を活用し、柔軟なシステム開発を実現しています。
プリザンターのグローバル展開に向けて
2024年7月にリリースされたプリザンターver.1.4.6では、既定言語が日本語から英語に変更されました。これは、OSSとしてグローバル市場での展開を視野に入れた重要な変更となります。すでに7か国語対応しているプリザンターですが、既定言語を英語に設定することで英語圏市場でのさらなるユーザの獲得と認知度の向上を目指しています。
導入事例としてすでに公開されているものもありますが、日本企業が海外拠点でプリザンターを導入している事例も増えており、これらの成功事例がグローバル展開の足がかりとして活用されています。まだまだ小さな一歩ですが、プリザンターはOSSとしての柔軟性を最大限に活かし、世界中で利用されるプラットフォームとなることを目指して、最初の一歩を踏み出したと言えます。
ベトナム訪問の背景と目的
今回の訪問はコードラック社が12月から英語によるプリザンターのサポートサービスの提供を開始することを前に、技術的なバックサポートを提供し、現地エンジニアとの交流を深めることを目的に実施されました。訪問したのはインプリムのプロダクトデザイン部シニアエンジニアの小林氏と、DXソリューション部チーフエンジニアの三澤氏の2名です。

左からコードラックテクノロジー株式会社 SISD事業本部長 ファン・ズイ・クオン氏、同CEO-代表取締役社長 グエン・ヴ・ヒエン氏、株式会社インプリム プロダクトデザイン部 シニアエンジニア 小林 寛忠氏、同DXソリューション部 チーフエンジニア 三澤 直弥氏
また、今回の訪問では、コードラック社がこれまでに手掛けた英語版ユーザマニュアルの翻訳やサポートサービスを契約しているユーザに提供される運用管理ツール「Operations Tools」の開発プロジェクトに関する振り返り会も行われました。これにより、これまでのプロジェクトの課題や成功ポイントが共有され、今後の展望を明確にする機会ともなりました。
現地での活発な技術交流
ハノイにあるコードラック社のオフィスでは、プリザンターに関する活発な質疑応答が行われました。コードラック社のエンジニアたちは、プリザンターの機能仕様についての確認や要件実現のための具体的な実装方法、新機能の開発計画など、実際の業務で直面している課題についてなど、様々な質問を投げかけられ、小林氏と三澤氏がその場で回答しました。
「Operations Tools」の開発プロジェクトの振り返り会では、現在のツールがどのようにユーザのニーズを満たしているか、さらなる改良が必要な点はどこかについて、さらにはプロジェクトにおける成功点や課題点など具体的な議論が交わされました。こうした対話を通じて、技術的な課題が明確化されるだけでなく、両社間の信頼関係もさらに深まる結果となりました。
コードラック社のグエン・ヴ・ヒエン代表は「日本とベトナムのエンジニアが直接顔を合わせ、現場の課題を共有しながら解決策を模索することは非常に意義があり、今後の協力体制をより強固にする礎となった」と語ります。
コードラック社が果たす役割
コードラック社は単なる技術提供企業にとどまらず、プリザンターのグローバル展開における戦略的なパートナーとして重要な役割を果たしています。同社が担当する英語によるサポートサービスは英語圏市場での信頼性を高める大きな要素です。また、オフショア開発を通じて開発コストの最適化と迅速な技術提供を実現しています。
さらに、コードラック社は先端技術への対応力を活かし、プリザンターのユーザ体験を向上させるための新たなソリューションの開発にも寄与しています。これにより、プリザンターがOSSとしての柔軟性を維持しつつ、グローバル市場での競争力を高めることが可能となっています。
英語圏市場へのサポートサービス提供を前に、ヒエン氏はこう語ります。「すべてのプリザンターユーザーが、言語や地域に関係なくシームレスな統合を体験し、最適な機能を享受できるようにすることを私たちは約束します。このサービスの開始は、グローバルなお客様サポートに対する当社の取り組みと、国境を越えたデジタルソリューションの推進を示すものです」
今後の展望と期待
今回の訪問は、プリザンターのグローバル展開に向けた重要な一歩でした。OSSとしての可能性を広げるためには、現地パートナーとの信頼関係の構築や技術的な課題への迅速な対応が欠かせません。今回の訪問で得られた成果を基にプリザンターはさらなるグローバル市場への進出を目指します。
プリザンターはOSSとしての柔軟性と拡張性を活かしながら、世界中の企業や団体にとって不可欠な業務ツールを目指しています。今後、コードラック社との連携を一層深め、英語圏市場を皮切りに他地域への展開も視野に入れています。
読者の皆さんも、OSSとしてのプリザンターがどのように進化していくのか、ぜひ注目していただければと思います。その成長の歩みは、OSSの可能性を広げるだけでなく、日本発の技術力を世界に示す1つのモデルケースとなるでしょう。
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