Webの常識、業務システムの常識

2010年1月13日(水)
神田 貴博

「常識」の違い

みなさんは、「業務システム」を開発する際にたくさんの会議を行い、資料を作成すると思います。プロのエンジニアとしては、「会議力」、「文章力」というのは重要なスキルの1つですが、「Webサイト構築」の開発の場合は、そのようなスキルが通じない(必要とされない)場合があります。

なぜかと言うと、「業務システム」と「Webサイト構築」では、開発の「スピード」、「システム運用期間」、「品質の意識」が大きく違うからです。

「業務システム」では、大規模になると設計のみで1年以上をかける場合もあります。一方、「Webサイト構築」では、プロジェクトの開始からリリース(本番稼働)まで3カ月というような短い期間の場合が多々あります。これは、「Webサイト構築」のターゲットが一般の人となるからです。

特にティーン・エイジャーなどの若者がターゲットのWebサイトの場合、流行の移り変わりが激しいため、リリースまで何年もかけていると、リリース時には流行がまったく変わってしまっていることがあります。よって、「スピード」が非常に重要になります。

流行が変わるとサイトも変更する必要があるので、「システム運用期間」も「業務システム」に比べてはるかに短くなります。「業務システム」の運用期間は一般的に5年と言われますが、「Webサイト構築」は半年や3カ月という場合も多くみられます。極端な例ですが、キャンペーン目的のWebサイトなどは、1週間で終了という場合もあります。

最後に「品質の意識」です。「業務システム」のリリースは、不具合がないようにしっかりとテストをするのが「常識」です。エンジニアにとって品質の高いシステムを作ることは重要なスキルです。しかし、「Webサイト構築」の場合は、「スピード」が最も重要なので、致命的な不具合がなければリリースしてしまう場合もあります。つまり、品質は多少犠牲にしてでも納期通りにリリースするほうが重要なことが多いのです。そして、サイトを運営しながら不具合の修正や不足機能の追加などを行います。

今回は、「Webサイト構築」に初めて取り組んだシステム構築会社が遭遇した「Webサイト構築」の「常識」と、その「常識」にどう対処したかを解説します。

「Webサイト構築」への挑戦

今回事例として紹介するのは、あるITベンチャーが受注した大規模「Webサイト構築」のプロジェクトです。そのITベンチャーでは、主に数億円規模の業務システムの請負開発を行っています。また、中国に開発子会社を持っており、オフショア開発の実績もあります。システム開発以外に自社フレームワークなどを販売しています。

しかし、近年におけるオープンソースの普及により、自社フレームワークの販売が伸び悩んでいました。そこで、ビジネスの拡大のため、今まで行ってこなかった「Webサイト構築」を行う方針をたて、EC(電子商取引)サイト再構築のプロジェクトを受注しました。

受注したWebサイトは、ティーンズ(10代)向けのモバイル・ショッピング・サイトで、ピーク時に1時間で数億円を売りあげる巨大サイトです。ショッピング・サイトとバック・オフィス・システムの作成に加えて、他社が作成中のサブシステム(メール・マガジン・システムなど)のプロジェクト・マネージメント支援も依頼されました。

そのITベンチャーでは「Webサイト構築」の経験はありませんし、もちろんモバイル・サイトやメール・マガジンなどのノウハウもありません。当然不安はありましたが、かなり大規模な案件なので「業務システム」のノウハウも活用できると考えていました。また、オフショア開発を活用すればコストも抑えられると考えていました。加えて、このWebサイト運営会社と組んだビジネス展開の計画もあったため、このビジネス・チャンスを逃すわけにはいきませんでした。

プロジェクトの体制は、日本側が10人、オフショアのパートナである中国側が30人。日本側では設計、中国側では開発を担当することで、プロジェクトがスタートしました。

次ページからは、同プロジェクトが遭遇したトラブルと、解決にいたった過程を解説します。

ウルシステムズ株式会社
ウルシステムズ株式会社 シニアコンサルタント。ITベンチャーを経て、2009年より現職。システム開発プロジェクトの技術分野においてITコンサルティングを提供している。趣味は自転車で、サイクリングのほか、レースやロングライドのイベントにも参加している。今年は佐渡ロングライド(210km)に挑戦予定。 http://www.ulsystems.co.jp/

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