新人のアジャイル開発体験

(1) 今回の事例: 社内の情報共有!SNS構築
第1回では、アジャイル・ブームの再来について、日本にXP(eXtreme Programming)が伝わり、それがどのように広がり、ブームとなったのかを紹介しました。今回からは、3回にわたって、筆者がかかわった事例を中心に、生のアジャイル開発の現場を紹介します。今回の事例は、「社内SNSの構築」です。
新人でもあり、開発が始まっているプロジェクトに途中から参加した筆者。そんな筆者が、プロジェクトの状況や開発しているシステム、開発の流れを理解できたのは、アジャイル開発では自然と行える「情報共有」があったからです。「情報共有」を通して、アジャイル開発を学ぶこともできました。
以下では、どうやってチーム内で「情報共有」を行っていたのかを伝えます。まずは、今回の事例で取り組んでいた「社内SNS」について、簡単に説明します。
筆者が所属するTISには、常々、以下のような課題がありました。
- 部門間を越えたコミュニケーションを行うのが難しく、個人が情報を社内全体に発信できる場が無い
- 有益な技術情報がプロジェクトごとに点在していて、技術的課題の解決に時間がかかる
これらの課題を解決するため、「コミュニケーションの促進」と「ナレッジの共有」を目的として、「サービス提供者である開発チームと、実際に利用するTIS社員とが、一緒にサービスを育てていく」という考えのもと、「社内SNS」の開発・展開を開始しました。
プロジェクトの開始当時には、筆者はTISに在籍していませんでした。こういった背景もあり、顧客からのフィードバックを基にシステムを作っていく"アジャイルな開発手法"が採用されたのではないか、と推測されます。
現在、この社内SNS「SKIP」は、オープン・ソースとして公開されています。当時の上司でありPM(プロジェクト・マネージャ)兼チーフ・プログラマでもあった倉貫義人が代表のTIS社内ベンチャー「SonicGarden」により、SaaS事業としても展開しています。詳しくは、コチラを御覧ください。
図1: SKIPのスクリーン・ショット(クリックで拡大) |
(2) 初めての社会人/初めてのプロジェクト
2006年、世の中は、コンテンツ提供者だけが情報を発信する時代から、「Web2.0」というキーワードに象徴される、個人個人誰もがブログ・サービスやSNS(mixiやGREEなど)で情報を発信する時代へと変わりつつありました。こうした中、筆者は新入社員としてTISに入社し、プロジェクトのメンバーになりました。
筆者が配属された当時、プロジェクトのメンバーは5人で、XPが日本に上陸した当初からアジャイル開発を実践していた倉貫(プロジェクト・マネージャ)を中心に、XPによる開発を行なっていました。
当時は、SNSソフトのSKIPを社内システムとして開発していた最中であり、会社内でも公認ではなく、試作的なサービスという位置付けでした。
以下は、筆者が所属していた期間の、プロジェクトの概要です。
表1: プロジェクトの概要
項目 | 内容 |
---|---|
参加期間 | 2006年10月~2008年3月 |
人数 | 5~10人 |
エンドユーザー | TIS社員(誰でも可能) |
ビジネス・オーナー | プロジェクト・マネージャ |
新社会人になり、すでに開発されているプロジェクトに配属された時、一番最初に戸惑うのは、「何も分からない自分」という状態に対してではないでしょうか。経験やスキルも無い自分に対して、あるいは、先輩は何をしているんだろう、開発ってどうやるんだろう、といった次々とわく疑問に直面して、悶々(もんもん)とすることもあると思います。
こうした戸惑いを解決する鍵となるのは、「チーム全体で情報を共有」(情報共有)することです。チームで「情報共有」する手段としては、メンバー間で「コミュニケーション」を取ったり、常に情報を見える状態にする「見える化」を行ったりするなど、多くの方法があります。
次のページからは、筆者と筆者のチームがどのように「情報共有」を行って仕事をしていたのかを、「計画の共有」、「進ちょくの共有」、「開発の共有」の3つに分けてお話します。