管理会計ニーズの高まりとBIの役割
BIツールの「相性」
BIツールを利用して管理会計システムを構築するケースでは、「BIツールを使えば、どんな分析でも容易に実現できるだろう」という、イメージ先行型の間違ったとらえられ方をしているケースが多いように思います。
実際にBIツールを利用して管理会計システムを構築する場合、「エンドユーザーは、いったいどのような立場の人で、どのような情報を欲しがるのか」、という意思決定のプロセスを十分に理解していなければ、BIツールを利用したシステムは「使えない」システムになってしまいます。
実際、筆者も多くのユーザー企業を見てきましたが、十分にBIツールを活用できているユーザーはごく一部です。うまく使いこなせていない多くのケースは、BIツールのデモンストレーションを見て、「何かといろいろ汎用的に利用できそうだし、導入すればデータの分析に役に立つだろう」という理由からツールを導入してしまっているものです。
BIシステムの構築にあたっては、意思決定のプロセス(どのような担当者が、どのような判断を行うために、どのような情報を必要とするのか、という3つのポイント)を明確に定義しておく必要があります。
分かりやすい例では、営業系の担当者と会計系の担当者では、判断を行うためのデータの種類、粒度やリアルタイム性など、求められる情報が大きく異なってきます。もっと言えば、同じ会計系の担当者であっても、予算を管理する企画部の担当者と、実績管理の経理部の担当者では、求められる情報が変わってきます。
情報にも、現在を把握するためのものと未来予測を行うためのものがあるように、BIツールにもそれぞれ特徴があり、対応できる情報管理の幅や深さが異なっているというわけです。
BIツールの分析機能が会計ERPを補完
BIツールごとに異なる特性がある一方、ほとんどすべてのBIツールに共通する特徴もあります。例えば、「視覚化」「データ追求」「次元軸変更」といった、ERPパッケージのような業務アプリケーションにはない得意分野を持っています。
ERPパッケージで処理されてデータベースに保存された処理結果は、あくまでも「データ」でしかありません。定点観測的に画面照会や帳票としてデータを加工し、「情報(Information)」として取り出すことが可能ですが、動的な分析作業は得意としていません。
例えば、予測と異なる数値を発見し、その原因を追究しようとする場合や、数値の傾向をさらに別の角度から分析したい場合などは、何度かERPパッケージから出力をやり直すか、あるいは一覧のデータをExcelなどに出力し、都度データを加工するといったような「ひと手間」が必要になってしまうケースが多いのが現実です。
こうした、ERPパッケージなどの業務アプリケーションが不得手とする分野を、「視覚化」「データ追求」「次元軸変更」などの機能を持つBIツールが補完します。業務アプリケーションとの役割分担が理解できれば、非常に「相性の良い」組み合わせでシステム構築ができます。
次回は、会計システムなどの業務アプリケーションと相性の良いBIツールを利用してシステムを構築していく際の具体的なポイントや、BIツールにおける利用イメージについて解説します。