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連載 [第1回] :
  Elastic{ON} 2018レポート

ElasticsearchのElastic、年次カンファレンスで「全てのコードを公開する」と宣言

2018年3月15日(木)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
Elasticは2018年2月27日よりサンフランスシコで年次カンファレンス「Elastic{ON}」を開催し、同社のソフトウェアのソースコードを全て公開すると宣言した。

APM関連の各種デモ

次に登壇したエンジニアは、APMについて実際にインストールの方法からNode.jsで書かれたアプリケーションにAPMエージェントを追加し、パフォーマンスに関するドリルダウンまでを、Kibanaから実行するデモを行なった。APMは商用化されている競合他社のソフトウェアとは違って、オープンソースで公開されており、以前バノン氏にインタビューを実施した際にも「オープンソースでAPMを実装することに意義がある」というコメントがあった通り、オープンソースとして開発が進められているという。

Kibanaに用意されたAPMのメニューからデモを実施

Kibanaに用意されたAPMのメニューからデモを実施

実際にどの部分で時間がかかっているのかを表示するデモでは、HTTPのリクエストごとに可視化を行なっていた。

レスポンス時間を可視化

レスポンス時間を可視化

より詳しくドリルダウンする機能も実装されているが、対応する言語がNode.jsとPythonという部分の仕様を見ると、Istioなどのサービスメッシュのソリューションとは異なり、依存するライブラリにモジュールを追加することで、モニタリングが可能になる形式のようだ。

JavaScriptのコードごとに処理時間を読み取ることができる

JavaScriptのコードごとに処理時間を読み取ることができる

この後、さらなるAPMのデモとして、E-Commerceのデモサイトでのパフォーマンスモニタリングについて、解説が行われた。デモサイトは、PythonのWebアプリケーションフレームワークであるDjangoで書かれたものだ。

E-Commerceのデモの概要

E-Commerceのデモの概要

Node.jsとPythonのDjangoという現時点でAPMがサポートする2つの言語についてデモが行われたのは、後発のAPMとしてもっと露出を狙ってのことだろうか。

APMサーバーが収集したデータをKibanaで可視化

APMサーバーが収集したデータをKibanaで可視化

次にバノン氏が壇上に招いたのは、Elasticの社員ではなくUSAネットワークで放映されている「MR. ROBOT」というTVシリーズの関係者だ。氏名がまったくスライド上に表示されないので、ここではあくまで憶測であることはご理解頂きたい。

こんな子供騙しの画面を使うことはしないと断言

こんな子供騙しの画面を使うことはしないと断言

このシリーズでは、ハッカーが企業のITリソースに対してハッキングを行う部分の描写にKibanaが使われているということから、駆り出されたらしい。実際のドラマの中で使われるスクリーンや操作画面を、素人が分かりやすいものにするのではなく、極力リアリティのあるものをそのまま使うという方針だそうで、KibanaのUIやコマンドラインなども実際に使われていたという。しかしコンピュータの専門家はドラマで一瞬しか使われない画面にも「表記が間違っている」というツッコミを忘れないというエピソードを紹介した時に、会場からは大きな笑いが起こった。

中国語UIのKibanaを使って攻撃を可視化

中国語UIのKibanaを使って攻撃を可視化

そして最終的にシステムの概要として、7万台のPCなどのエンドポイントからElastic Stackにデータを集約して、リスク管理を行っていると解説。ここでもエンタープライズ向けのユースケースが紹介されたことになる。

制作会社におけるElastic Stackのユースケース

制作会社におけるElastic Stackのユースケース

この後に行われた別のセキュリティのデモでは、社内のネットワークから異常な行いが検知され、CEOのPCが狙われているというシナリオで原因とユーザーを特定するというものだった。ここでは、Windows PCを使うCEOが狙われるという、いかにもありそうな状況を詳しく解説しており、セキュリティに対するElasticの力の入れ方を垣間見た気がする。

セキュリティアラートシステムの概要

セキュリティアラートシステムの概要

特にKibanaを使って「どのようなコマンドが使われているのか?」「ユーザーは?」「ターゲットになるPCは?」というようにドリルダウンできる辺りは、Kibanaのメリットが全開という感じであった。

Kibanaからセキュリティアラートをドリルダウン

Kibanaからセキュリティアラートをドリルダウン

次のデモは、KibanaにGIS(Geographic Information System:地理情報)をレイヤーとして追加するデモだ。具体的には今回のカンファレンスの参加者のデータを使って、国の情報とElasticをダウンロードした情報を、地図上で重ね合わせてその傾向を可視化するというものだ。

地理情報もKibana上で可視化できる

地理情報もKibana上で可視化できる

最後のデモでは、サイト内検索が取り上げられた。これはElasticが2017年11月に買収したSwiftypeというベンチャーのソリューションを紹介するものだ。ここでバノン氏は「Googleがサイト内検索を諦めて、Googleの検索アプライアンスも終了するということは、我々にとって良いこと」と言うコメントをしており、ここでも自社サイト内の検索機能として、エンタープライズに向けてのメッセージがはっきりと出た瞬間であった。

サイト内検索のデモ

サイト内検索のデモ

ここでは「ニューヨークの寿司レストランを探す」という検索に対して、Promotedのように順位を上げる操作をマニュアルで行い、それがちゃんと反映されることをデモで見せた。単にHTMLの全文検索だけではなく、データベースの中に格納されているコンテンツに対しても高度な操作が可能であると見せつけることで、Google以上の機能をElasticが実装できるというアピールは成功したと言えるだろう。

最後のデモは、Elastic Cloudのインスタンス作成が複数のスライドバーできめ細かくできることを紹介するものだ。

Elastic Cloudのきめ細かなコントロールパネル

Elastic Cloudのきめ細かなコントロールパネル

ソース公開というサプライズ

そしてCertified Engineerになるためのトレーニングコースの紹介、Elasticが社会を良くするための活動に対して表彰を行うElastic Cause Awardsの受賞者の紹介に続いて、最後に飛び出したのが、X-PACKなどの有料のソフトウェアのソースコードを公開するという発言だ。

これまではOSSの上に無料のソフトウェアと有料のソフトウェアが乗っている形

これまではOSSの上に無料のソフトウェアと有料のソフトウェアが乗っている形

これはElasticsearchやKibana、Logstashなど、既存のオープンソースのソフトウェアとその上で実行されるアドオンに関して、全てのコードをGitHubで公開すると発表したのだ。

ソースコードを公開した上で全部をまとめてパッケージングする

ソースコードを公開した上で全部をまとめてパッケージングする

ただし追加の部分について使うかどうかはユーザーが選択できることになるとして、Opt-inしたものだけが実装されるということになる模様だ。これまではオープンソースの部分とクローズドな部分が分かれており、それぞれインストールしなければいけなかったものを、ひとつのZIPファイルとしてインストールできるようになるというのが具体的な変更点だろう。

営利企業として、無料のオープンソースソフトウェアとそれに追加する有料のソフトウェアという発想が「どうしても受け入れることが難しかった」というコメントから考えると、今回のソース公開という動きは、経営者としての決断というよりも精神論的な発想とでも言うべきものかもしれない。この発表を行なった時に、会場からは思わず拍手が起きたことは記憶に留めたい。

ソフトウェアのソースコードは基本的に全て公開するが、有償の部分も残してサポートで利益を出すと言うモデルが、事実上Red Hat以外は継続的にはできていないという現実に対して、Elasticなりの選択肢ということだろう。この判断がどうなるのか、長い目で見守っていきたい。

<編注:2018-03-15 17:20更新>記事タイトルおよび本文の一部に誤解を招く表現がありましたのでお詫びして訂正致します。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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