PostgreSQLとOracle Databaseそれぞれの特徴
PostgreSQLとOracle Databaseのアーキテクチャ構造
本シリーズの最終回は、PostgreSQLと、商用RDBMSとして普及しているOracle Databaseとの違いについて簡単にご紹介していきます。
「第1回:PostgreSQLの概要とアーキテクチャ」で、PostgreSQLアーキテクチャの概要図を説明しましたが、PostgreSQLとOracle Databaseは同じような役割を担ったプロセスやファイルで構成されていることがわかります(表1および表2参照)。
また、図1にあるプロセスとデータベース構成ファイルを解説すると、以下のようになります。
- クライアントから接続要求を受けてデータベースと通信するためのプロセスを起動する。
- クライアントからのSQL要求を処理するプロセスが、ディスク上にあるデータをメモリ上に保持する。
- メモリ上の変更内容は専用のプロセスにより書き出され、トランザクションの変更履歴ログも蓄える。
- 万一障害が発生した場合は変更履歴ログもしくはそのコピーであるアーカイブを使い復旧を行う。
上記を見ると、基本的な動作は同じで、アーキテクチャの概要レベルではそれほど大きな違いはないように見えます。また用語も共通のものがあり、例えば、チェックポイント、ポイントインタイムリカバリ、オンラインバックアップ、アーカイブログなどの用語は共通しています。
しかし、概要レベルでは「それほど大きな構造の違いはない」と言うものの、構造の異なる点もいくつか挙げられます。ここでは以下の5つの点について説明します。
- トランザクションの違い
- スキーマ管理の違い
- 表を構成するファイル構造の違い
- SQLの解析結果を保持する仕組みの違い
- 読み取り一貫性と同時実行性の仕組み(ロールバックセグメント/追記型構造)の違い
トランザクションの違い
PostgreSQL、Oracle DatabaseともにANSI、ISOで管理された統一規格に沿うようSQLが実装されていますが、その中のトランザクションの違いについて紹介します。
トランザクションとは、一連の複数のSQLを1つの論理的な作業単位としてまとめたものです。RDBMSの核となる処理の1つですが、この実装が一部異なります。
まず、Oracle DatabaseではDML(Data Manipulation Language:レコード操作)を実行した場合、自動コミットは行われません。DML発行後にコミットしたい場合は「COMMIT」、ロールバックさせる場合は「ROLLBACK」と明示的にコマンドを発行する必要があります。
一方、PostgreSQLではDMLは自動コミットされます。トランザクションとして実行したい場合は「BEGIN」により明示的にトランザクションを開始し、トランザクションをコミットする場合は「END」もしくは「COMMIT」、ロールバックさせる場合は「ROLLBACK」を実行します。
また、DDL(Data Difinition Language:テーブル操作)にも注意が必要です。Oracle DatabaseのDDLは暗黙コミットが実行されますが、PostgreSQLでは実行されないため、トランザクション中の「CREATE TABLE」のようなDDLもロールバックすることが可能です。
さらに、トランザクション中にエラーが発生した場合の振る舞いも異なります。Oracleでは、いくつかのDMLを実行して途中でエラーを出しても、最後にCOMMITを行うと、正常に実行できたDMLについては処理が確定します。これに対し、PostgreSQLでは、BEGINの後に一度でもエラーを出すと、最後にCOMMITをしても、ROLLBACKしたのと同じ扱いになります。