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連載 [第1回] :
  Elastic{ON} 2018レポート

ElasticsearchのElastic、年次カンファレンスで「全てのコードを公開する」と宣言

2018年3月15日(木)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
Elasticは2018年2月27日よりサンフランスシコで年次カンファレンス「Elastic{ON}」を開催し、同社のソフトウェアのソースコードを全て公開すると宣言した。

Elasticsearchで知られる検索エンジンを開発するElasticは、2018年2月27日よりサンフランスシコで年次カンファレンス「Elastic{ON}」を開催した。初日となる27日にCEOのシェイ・バノン氏が登壇したキーノートセッションを皮切りに、3日間のカンファレンスが始まった。今回はキーノートの概要、そして一番最後に発表されたソフトウェアのソースコード公開に関する意向表明について紹介する。

会場はMasonicというサンフランシスコ市内でも丘の上にあるミッドセンチュリー建築のイベント会場で、約3000名を超えるキャパシティを誇る建物だ。円形のオーディトリウムのアリーナに相当する部分に準備された椅子が、ほぼ満席の状態で始まった。キーノートの前に、世界中のElasticの社員がそれぞれの言葉を使って感謝の意を述べる短いビデオを繋げたものが再生された。もちろん日本人社員の動画も紹介された。

娘と一緒に登場したカナダのElastic社員

娘と一緒に登場したカナダのElastic社員

東京の象徴である建物を背景に語る日本人社員

東京の象徴である建物を背景に語る日本人社員

その後に登壇したバノン氏によれば、Elasticは800名以上の社員が34ヶ国、30ヶ国語に拡がっているという。この動画は、Elasticの規模の拡大と北米以外にもヨーロッパ、アジアなど多くの国と地域でエンジニアが活躍していることを訴求するものだった。その後のプレゼンテーションは、Elasticが開発するオープンソースソフトウェアの新機能を、壇上にセットアップされた10台のPCを使って担当者を招いて次々に紹介するスタイルとなった。

登壇したElasticのCEO、シェイ・バノン氏

登壇したElasticのCEO、シェイ・バノン氏

User Conferenceというスタイル

今回のカンファレンスのユニークな点は、オープンソースソフトウェアにありがちな「Developers Cenference」ではなく「User Conference」と称されているところである。つまり「開発は我々がやるから、ユーザーとしてElasticのソフトウェアをどう使うのかを共有してくれ」という意図だろう。

冒頭では、ヘラジカが寝そべったスライドが紹介された。そこに書かれているのは「I feel like there's more to me than what people see」、直訳すれば「私は、人々が見るものよりも、私にはより多くのものがあるように感じる」と語っている。これはアメリカの精神科医が診察を行う時に使う、寝椅子にヘラジカが寝て診療を受けてコメントをしているという場面のパロディだ。もちろんヘラジカは英語でELKであり、つまりElasticsearch、Logstash、Kibanaを指している。これは「Elasticのソフトウェアにはユーザーが知らない可能性がもっとある」ということを、ジョークとして表現しているということだろう。

ELKにはもっと可能性があるということを暗に示している

ELKにはもっと可能性があるということを暗に示している

またShape of Stackと称したスライドでは、Elastic Stackの新機能が詰め込まれたモノを使用して、単に検索エンジンとしての機能以上に多くの機能追加を行っていることを強調した。

Elastic Stackのリリースノートのようなスライド

Elastic Stackのリリースノートのようなスライド

その中で最初の新機能として紹介されたのが、Rollupだ。これは大量に発生するログのサイズを少なくするための機能で、より詳しく知りたい場合は以下のリンクを参照されたい。

Rolling up historical data

採取されるログデータを集約してサイズを減少させるRollup

採取されるログデータを集約してサイズを減少させるRollup

ここではエンジニアが実際のデモとして、Rollupされたデータと元データを比べてサイズを比較、そしてRollupされたデータに対する検索と元データに対する検索のどちらも全く同じ結果が返ってくることを見せて、データの集約が重要な新機能であることを強調した。

次に紹介したのは異常検知(Anomaly Detection)だ。

異常検知を紹介するスライド。晴れの次の日に何故かミートボールとスパゲッティが降ってくるという異常な事態

異常検知を紹介するスライド。晴れの次の日に何故かミートボールとスパゲッティが降ってくるという異常な事態

これは過去のログデータから傾向を分析し、異常を検知したり予測したりする機械学習の機能となる。サンプルデータとして、ニューヨーク市のタクシーの待ち時間のデータから過去の傾向を外れるデータを発見するというデモだ。このデモではニューヨーク市に大雪が降ったという事実から、実際にタクシーの待ち時間が大幅に増えてしまったという部分を、Kibanaで可視化するデモを行なった。この機能は、Elasticが2016年に買収したPrelertの機能を使ったものだろう。プレゼンテーションではPrelertという言葉は使われず、PrelertがすでにElasticの中に組み込まれていることを感じさせた。

通常の状態から異常を検知

通常の状態から異常を検知

次に紹介されたのは、新しいビジュアライゼーションの機能だ。これはKibanaではなく、Canvasという時系列データのビジュアライゼーションに特化した新しいユーザーインターフェースで、2017年のElastic{ON}で初めてプレビューとして公開されたものだ。

Canvas Technology Preview

今回の短い時間のデモは、模型のレースカーが周回する際に収集されたデータを使って、速度とラップタイムなどを可視化するというものだ。

「写実派から印象派へ」というタイトルでCanvasを紹介

「写実派から印象派へ」というタイトルでCanvasを紹介

これは集められたデータに対し、エンジニアが様々なクエリーを発行して可視化するというデモで、SQLとほぼ同じシンタックスでクエリーを実行する部分に、エンタープライズからのニーズを意識していることを感じさせるデモとなった。

SQLライクなシンタックスで可視化が可能

SQLライクなシンタックスで可視化が可能

買収したOpbeatの技術による可視化のデモ

次に登場したスタッフが見せたのは、2017年に買収したコペンハーゲンのベンチャー、OpbeatによるAPM(Application Performance Monitoring)の紹介だ。最初のパートはOpbeatのCo-FounderでもあるMonica Sarbu氏が登壇し、DockerやKubernetesのPodの中のCPUの利用率を計測するBeatsのモジュールを使って、Kibanaで可視化するデモを行なった。ここではPodの中にサイドカーとしてDeployされるのかどうか? Beatsのモジュールが何か? などの詳しい説明は省かれたが、kubectlを使ってPodをスケールさせても、すぐにKibanaのUIから増えたことが確認できる部分を、ライブデモで実行した。

KubernetesのPodのCPU Metricsが可視化

KubernetesのPodのCPU Metricsが可視化

Podの概要を表示

Podの概要を表示

この時、バノン氏が「この部分の紹介の時に一度もマイクロサービスっていう言葉は使わなかったけど、気がついた?」とジョークを言っていたのは、あまりにマイクロサービスがバズワード化している状況に対する皮肉だったように思える。

<編注:2018-03-15 17:20更新>記事タイトルおよび本文の一部に誤解を招く表現がありましたのでお詫びして訂正致します。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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