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SaaSビジネスにおけるアジャイルの事例

2009年4月24日(金)
倉貫 義人

SaaSビジネスにおけるアジャイルの事例

 第1回(http://thinkit.co.jp/article/906/1/)でも説明しましたが、アジャイル開発はSaaSのビジネスモデルと非常に相性が良いです。それは、ソフトウエアのソースコードを提供するビジネスではなく、ソフトウエアを動かしてサービスを提供するビジネスになっており、ソフトウエアを継続的に改善していくことができるためです。ある特定のソフトウエアの完成を目指すのではなく、ソフトウエアで提供できる価値を継続的に高めていくために、品質の中でも特に保守性を重視して、環境や要求の変化に柔軟に対応できるアジャイル開発が向いているのです。

 また、ソフトウエアのソースコードを提供する訳ではないので、サービスそのものを内部で構成しているソフトウエアに、オープンソースソフトウエアを有効に活用したり、新たな技術を採用するなどして生産効率を上げたとしても、それによって売り上げを下げることにはなりません。

 受託開発のビジネスモデルでは、最終的にソフトウエアを納品して検収してもらうことで売り上げを得る構造になっているため、ソフトウエア開発を製造業のように扱わざるを得ません。納品というゴール地点を設定し、発注側である顧客と受注側であるSIerが取り決めた内容で計画を作成し、その計画通りに進めていくことを目指します。

 このやり方の問題点の1つは、計画を立案して契約を結んだ時点の完成形にコミットメントせざるを得ないことです。ソフトウエア開発は学習の連続で、プログラミングを続けていくうちに、必ず何かを学び成長できるし、対象業務についても理解を得ていくことで新しい実現のアイデアが出てくるはずです。それが、受託開発における計画重視のやり方においては、より良いアイデアが出たとして、それが顧客価値になるとわかったとしても変更は好まれません。

 それは、成果物とその対価である金額が当初で決められてしまうビジネスモデルだからです。SaaSのビジネスモデルでは、そういった問題はなく、むしろ開発者の成長やアイデアは貴重なものと考えられます。

 アジャイル開発では、人数を多くすることでたくさんのものを作るという思想はあまりありません。むしろ少数の人間でより良いものを作っていくという考え方に基づいています。たくさんの人がいたからといって、必ずしも良いものができるとは限りませんが、受託開発の場合は特にビジネスを大きくすることができます。それはビジネスの面から見ると価値はあります。

 アジャイル開発のような少人数でもビジネスを大きくする方法として考えられるのがSaaSです。SaaSのビジネスでは、プログラミングした分だけで利益になる訳ではなく、それによって提供するサービスが利益を生み出すので、レバレッジを効かせることが可能です。逆に作った分だけでは価値提供にならないため、今まで以上に、プログラマーに求められる責任は大きくなってきますが、それはプログラマーの価値向上につながっているとも考えられるのです。

SaaSビジネスにおけるアジャイル事例

 今回事例として扱うのは、前回まで紹介してきたオープンソースの社内SNS「SKIP」をSaaSで提供している「SKIPaaS(http://www.skipaas.jp/)」です。SKIPaaSは、筆者の経営するSonicGardenで提供しているSaaSで、“SKIP as a Service”の略です。前回までに説明した通り、もともとは筆者の社内で作られて使われていた社内SNSをオープンソース化したものが「SKIP」であり、今度はそれをビジネスとして提供するようになったという訳です。SKIPaaSでは、Amazon EC2を活用した上で、ハイブリッドクラウドという形でサービスを提供しています。今回は、クラウドコンピューティングとアジャイル開発の相性について、また、マネジャーの視点から見たアジャイル開発について、事例を通じて紹介します。

TIS株式会社 SonicGarden

TIS株式会社にて、クラウドを中心とした新規事業を行うための「SonicGarden」を立ち上げ、代表カンパニー長をつとめる。また、2009年まで日本XPユーザグループの代表をつとめるなどアジャイルの普及を行ってきた。主な著作:バグがないプログラムのつくり方(2004,翔泳社)など。
Twitter:@kuranuki(http://twitter.com/kuranuki
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