NullObjectパターン
Log4Jに見るNullObjectパターン
NullObjectパターンが実装されている例として、Log4Jの中のNullAppenderがあります。Log4Jは有名なロギングのフレームワークで、ログの出力方法を切り替えるためにAppenderクラスを用います。
Log4Jでは、Appenderインターフェースを実装した、AppenderSkeletonというアブストラクトクラスがあり、各Appenderクラスは、AppenderSkeletonを継承して作られています。例えば、WriterAppenderは、ストリーム系へ出力するためのAppenderクラスで、AppenderSkeletonを継承しています。これは、ログを出力する処理を切り替えるためにStrategyパターンが適用されていると言えます。
同様に、NullAppenderもAppenderSkeletonを継承していますが、動作に必要なactivateOptions、addFilterなどのメソッドの中では何もしていません。結果として、NullAppenderを使った場合はログを出さないということになります。例えば、ログを出したくない場合に、設定ファイルがないと警告が出ますが、NullAppenderを設定しておけば警告なしでログを出さない状態にできます(*2)。
(*2)しかし、実際はNullAppenderが利用されることはあまりなかったようで、Log4J1.3からはNullAppenderは削除されています。
このようにNullObjectパターンは、何もしないケースをほかのケースと同様に扱えるというメリットがあります。
パターンの組み合わせ
NullAppenderの実装を見てみると、getInstance()メソッドでは、staticなフィールドinstanceにセットされたインスタンスを返すようになっており、Singletonパターンになっています。NullAppenderは状態を持つ必要がないので、余分なインスタンスを作らないようにしているわけです。
ここまで、Log4Jというロギングフレームワークの中で、NullObjectパターンとそのほかの複数のパターンが組み合わされて使われている例を見ていきました。最初に説明したように、フレームワークの中にはデザインパターンが含まれているということがわかると思います。
【参考文献】
Erich Gamma(原著), Ralph Johnson(原著), Richard Helm(原著), John Vlissides(原著), 本位田 真一(翻訳), 吉田 和樹(翻訳)
「オブジェクト指向における再利用のためのデザインパターン」改訂版 ソフトバンククリエイティブ(発行年:1999)
Mark Grand(著),原 潔(翻訳),瀬尾 明志(翻訳),宮本 道夫(翻訳)「UMLを使ったJavaデザインパターン―再利用可能なプログラミング設計集」カットシステム(発行年:2000)