連載 [第31回] :
  Gen AI Times

【Perplexity AI】が拓く次世代AIリサーチの可能性

2025年3月6日(木)
中嶋 正純
本記事は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」に所属するメンバーが、生成AIに関するニュースを紹介&深掘りしながら、AIがもたらす「半歩先」の未来に皆さんをご案内します。

はじめに

本連載は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」で活動している各分野のエキスパートが執筆を担当しています。生成AIの活用がビジネス領域において本格化する中、私たちは理論と実践の両面から、最新の知見に基づいた実践的な情報をお届けしていきます。

2024年7月に「Perplexity AI」について紹介しましたが(【注目】生成AIサービス「Perplexity」の独自機能と信頼性を徹底解説)、2025年2月現在、新機能「Deep Research」を搭載して大きな進化を遂げています。従来の検索エンジンと生成AIの境界を再定義するこの機能は専門家レベルのリサーチを短時間で完了させ、無料ユーザーでも1日数回の利用が可能という画期的なツールとなっています。

本記事では、他の多くのサーチAIよりも早い段階で市場に参入しているPerplexity AIの現在について取り上げます。

Deep Research:Perplexity AIの新たな進化

2025年2月14日、Perplexity AIはDeep Researchを発表しました。この機能は、従来の検索エンジンを超えた高度なリサーチ能力が備わっており、専門的な調査や分析を短時間で実現する機能です。

【出典】Introducing Perplexity Deep Research(Perplexity 2025年2月14日)

Perplexity AIのDeep Researchの特徴

Perplexity AIのDeep Researchの特徴は下記のとおり。

  • 無料利用枠:無料プランでも1日数回の利用が可能。
    Proプラン(月額20ドル)では500回まで利用可能
  • 高速性:平均3分以内で約1,310語のレポートを生成
  • 高精度:SimpleQAのベンチマークで93.9%の精度を達成
    ※SimpleQA:OpenAIが開発したAIモデルの評価基準。4,000以上の質問で構成され、AIの回答の正確性を測定
  • 多様なフォーマット対応:PDFやMarkdown形式でレポート出力可能
  • 幅広い応用範囲:市場調査から医療研究まで多岐にわたる分野で活用可能

これらの特徴により、Perplexity AIは専門家レベルの調査能力をもつツールの1つとして活用できるようになります。

(著者作成)

また、ChatGPT、Geminiと比較するとPerplexity AIは無料枠がある点で敷居が低く、多くのユーザーが気軽に試せる利点があります。一方で精度面ではChatGPTが優位なように感じますが、価格差を考慮するとPerplexity AIの方がコストパフォーマンスが高いのではないかと思われます。

ユーザーからの評価

Deep Researchは、スピードと効率性で高い評価を得ています。詳細なレポート作成もわずか2〜3分で生成できるため、従来数時間かかっていた調査も大幅な効率化につながります。また、無料ユーザーでも利用可能で、競合他社と比較してコストパフォーマンスが優れています。

一方で、現時点では情報の精度や深度に課題があり、一部のユーザーから「複雑なクエリで期待通りの結果が得られない」と指摘を受けています。また深い調査には数分を要するため、即時性に欠ける場合がある点も課題です。しかし、その多機能性と利便性から多くのユーザーに支持されており、さらなる進化が期待されています。

今後への期待

Deep ResearchはAIが複数の検索クエリを自動生成し、数百もの情報源を統合して包括的なレポートを作成する高度なリサーチ機能です。特に金融やマーケティング、学術研究などの専門的な分野での利用に適しており、複雑な調査を短時間で効率的に行える点が特徴です。

現状、ChatGPTやGeminiなどからもDeep Researchが提供され、各社が独自のアプローチでリサーチ機能を強化しています。中でもPerplexity AIによるDeep Researchは、その独自性から大きな可能性を秘めていると感じます。しかし、現時点(2025年2月)では情報の精度や深度に関する課題が指摘され、複雑なクエリに対しては期待通りの結果が得られないケースも散見されている状況です。

こうした課題を考慮すると、Perplexity AIのDeep Researchにはファクトチェック機能の強化が強く求められます。具体的には高度な自然言語処理(NLP)技術の活用、リアルタイム処理能力の向上、さらには人間との協働モデルの導入といった多角的なアプローチが不可欠ではないでしょうか。これらのアプローチによりユーザーからの信頼をより一層獲得し、ツール全体の価値向上が実現されるのではないかと思います。

4つの先進AIモデル:選択できる次世代検索体験

Perplexity AIでは「Sonar」「Gemini 2.0 Flash」「Claude 3.7 Sonnet」「GPT-4.5」という4つのAIモデルが利用可能となり、検索体験がさらに進化しました。これらのモデルはそれぞれ異なる強みを持ち、ユーザーの多様なニーズに応える設計となっています。以下では、それぞれのモデルの特徴や用途、活用事例について紹介します。

各モデルの特徴

  1. 高速かつ正確な日常検索を得意とするSonarモデル
    特徴:

    SonarはPerplexity AI独自のモデルで日常的な検索やシンプルなクエリに最適。高速かつ正確な応答を提供するため、情報収集や簡易的な調査に向いている
  2. 高度な分析や多段階の推論で力を発揮するGemini 2.0 Flash
    特徴:

    Gemini 2.0 Flashは複雑なクエリや専門性の高いタスク、マルチモーダルデータ(テキスト、画像、音声など)を含む検索に適する。高度な分析や多段階の推論が必要な場面で力を発揮
  3. 優れたコーディング能力が魅力のClaude 3.7 Sonnet
    特徴:

    Anthropic社が開発した最新モデルで、迅速な応答と深い思考をシームレスに切り替えられるハイブリッド推論システムが特徴。「拡張思考モード」を備え優れたコーディング能力が魅力
  4. 創造的思考を得意とするGPT-4.5
    特徴:

    OpenAIの最新モデルで、最大256,000トークン(約20万語)のコンテキストウィンドウを持ち長文処理に強みがある。人間のような理解力と創造性、多言語対応も向上

(著者作成)

モデル選択のポイント

Perplexity AIでは、タスクの特性に応じて最適なモデルを選択することで、より効果的な検索や情報処理が可能となっています。日常的な検索やシンプルなクエリにはSonar、マルチモーダルタスクにはGemini 2.0 Flash、透明性の高い推論が必要な場合にはClaude 3.7 Sonnet、長文処理や創造的作業にはGPT-4.5と、それぞれ特性を理解して選択すると良いのではないかと思われます。

さらに、「Auto」モードを選択することでクエリの内容に応じて最適なモデルを自動的に選択することも可能です。これにより、ユーザーはモデル選択の手間を省きつつ、各タスクに最適化された検索体験を得られるのではないでしょうか。

また、Perplexity Proプラン(月額20ドル)では、こうした多様なモデルを全て制限なく利用できるため、Perplexity AIは強力かつ利便性の高いツールとなっていると考えられます。

o3-miniモデルとDeepSeek R1モデル:
高度な推論を実現する新たな選択肢

2025年1月末より、Perplexity AIはOpenAIの「o3-mini」モデルと中国DeepSeek社の「DeepSeek R1」モデルを利用可能にしました。これらのモデルはそれぞれ異なる強みを持ち、ユーザーの多様なニーズに応える設計となっています。

o3-miniモデル

  • 用途
    o3-miniは高速かつ低コストで基本的な推論タスクに適する。特に科学・数学分野において効果的で日常的な利用にも最適
  • 事例
    科学分野:「化学反応式のバランス調整」
    数学分野:「複雑な方程式の解法」
    日常利用:「天気予報や株価情報などの日常的な検索」

DeepSeek R1モデル

  • 用途
    DeepSeek R1は複雑なタスクや多段階推論が必要な場面で力を発揮する。高度なリサーチや専門性の高い用途に向き、特に医療データ解析や市場分析などで有効
  • 事例
    高度リサーチ:「医療データから病気予測アルゴリズムを構築するための情報収集」
    市場分析:「競合他社分析と戦略立案」
    多段階推論:「複数条件を満たす製品選定」

(著者作成)

用途別選択ポイント

これら2つのモデルはそれぞれ異なる強みを持つため、利用シーンに応じて使い分けることがおすすめです。o3-miniは基本的なタスクや日常利用向け、一方でDeepSeek R1は高度で専門性の高いタスク向けとして設計されています。また、Perplexity AIではクエリ内容に応じて最適なモデルを自動選択する機能も搭載されており、ユーザーは手間なく最適化された検索体験が得られます。

これらのモデルを使い分けることで、さまざまなニーズに応じた最適な検索体験が可能になるのではないでしょうか。

Focusモード:検索目的に特化した次世代AI検索

Perplexity AIの「Focusモード」は検索目的に応じて特定の情報源に絞り込むことで、より正確で効率的な情報収集を可能にする機能です。2025年1月時点でこの機能が見直され、より使いやすく、効果的にアップデートされました。現在は「Web」「Academic」「Social」の3種類が利用可能で、それぞれ異なる用途に応じた検索体験を提供します。

それぞれの違いや活用例は下図のとおりです。

(著者作成)

Focusモードの活用によるメリット

Focusモードは検索範囲を絞り込むことで無駄な情報を排除し、必要なデータのみを迅速に取得できます。それぞれのモードが特定のニーズに応じて設計されており、ユーザーは目的に合った最適な検索体験を得ることが可能です。これにより、Perplexity AIは単なる汎用検索エンジンではなく、専門性と効率性を兼ね備えたツールへと進化しています。

Perplexity Assistant:
Android向けに登場した次世代AIアシスタント

2025年1月末、Perplexity AIはAndroidデバイス向けの「Perplexity Assistant」をリリースしました。この新機能は、従来の検索エンジンとしての役割を超え、日常業務を支援するAIアシスタントとして進化しています。

【出典】Perplexity Assistant

概要

Perplexity Assistantは検索エンジン機能とAIアシスタント機能を融合させたツールです。ユーザーのニーズに応じて複数のアプリと連携し、日常業務を効率化します。特にマルチモーダル対応や文脈保持機能で、より高度なタスク処理が可能です。

主な特徴

  1. 日常業務の効率化
    レストラン予約やリマインダー設定、Uberの呼び出し、メールの下書き作成など多様なタスクを自動で実行可能。これらの機能は日本でも利用可能だが特定のサービスは日本での対応が制限される場合がある
  2. マルチモーダル対応と文脈保持
    カメラや画面情報を活用し、物体認識や表示内容について質問することが可能。また一度行った質問内容を記憶し、その文脈を踏まえた応答が可能
  3. 他アプリとの連携
    SpotifyやYouTubeで音楽再生、Uberでライドシェア呼び出しなど、多くのアプリと連携が可能。ただし一部の連係機能は日本では未対応の場合がある

まとめ:
進化を続けるPerplexity AIとサーチAIの未来

【出典】Perplexity

Perplexityは2024年6月にソフトバンクとの戦略的提携を発表し、その存在感を高めました。この提携によりPerplexityのAIサービスは多くのユーザーに広く利用される機会が増え、信頼性と独自性だけでなく、注目度も一層高まりました。

その後、2025年2月にはDeep Researchによる専門家レベルの高速リサーチ、Focusモードによる目的特化型検索、Perplexity Assistantのマルチモーダル対応など、革新的な機能を次々と追加し大きな進化を遂げています。他にも回答内の特定のタイトルや見出しに関連する内容を深掘りできる「Follow up」という仕組みも追加されており、ユーザーが興味のあるトピックについて効率的に詳細情報を得られるよう設計されました。

Perplexityはエージェント検索用に構築された独自のWebブラウザ「Comet」の展開も予定しており、今後も多目的かつ高度なデジタルパートナーとして私たちの日常生活や業務に貢献してくれるのではないでしょうか。Perplexity AIの進化はサーチAIが切り拓く第一歩であり、その可能性は私たちの想像を超えて広がるものと期待したいです。

株式会社マクロミル
マーケティングリサーチを通じて、クライアントのマーケティング課題解決をサポート。
・社内生成AI導入推進プロジェクトマネージャー
・「生成AI EXPO in 犬山」でマーケティング関連コンテンツで登壇
・生成AIハッカソン、海外のプロンプトハッカソンで入賞実績あり

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