要素間の関係を明らかにしよう!
1. はじめに
本連載は、UMLの導入に敷居の高さを感じている方を対象としています。そんな方に、手軽で有効的なUMLモデルの利用方法を紹介することが、本連載の目的です。
第1回では「モデルがコミュニケーションを円滑にする」と述べました。まずは「最小限のUML仕様の知識だけでUMLモデルを作成し、手軽に、有効的に使ってみる」ことを提案しました。
今回は、最小限のUMLの知識を用いて、分析や設計の情報を正しく表したUMLモデルを作成する手順を解説します。
第1回で「厳密な仕様に基づいたUMLモデルの作成方法は解説しない」と述べましたが、今回はあえてUMLモデルの作成方法を解説します。ただし、あくまでもコミュニケーションを支援することを目的に、最小限のUML仕様と基礎的なモデリングの知識だけを用い、「役立つUMLモデルを手軽に作成する」ための手順を解説します。
文書や口頭だけで設計情報を伝えるのは、とても難しいことです。なぜなら、要素(クラスやオブジェクトなど)間の関係を明確に示すことが難しいからです。
オブジェクト指向の分析・設計では、要素間の関係がとても重要です。要素間の関係が明確になっていなければ、分析・設計の情報が正しく伝わらなかったり、誤解して受け取ってしまう可能性があり、重大な不具合や、拡張性や移植性の低下につながってしまうこともあります。
このような事態を避けるためにも、要素間の関係を明確にすることには、とても価値があります。UMLモデルは、要素間の関係を、さまざまな角度から表すことができます。
今回は、UMLのクラス図とオブジェクト図を用いて、要素間の関係を明らかにする手順を解説します。
2. 商品スペックと在庫商品の関係
例として、商品スペックと在庫商品の関係を表す設計を考えてみましょう。商品スペックとは、商品カタログに載っているような、商品の情報のことです。在庫商品とは、商品の物理的な実体のことです。
飲料水の自動販売機を想像してみてください。ディスプレイされている飲料水の見本が、商品スペックです。自動販売機の中に保管されている飲料水の実体が、在庫商品です(図1)。
図1: 飲料水の商品スペックと在庫商品の関係 |
次ページでは早速、飲料水の商品スペックと在庫商品の関係を、UMLモデルで表してみましょう。