RACが変えるデータベース環境
Oracle Database 11gの新機能
11gではAutomatic Database Diagnostic Monitor(以下ADDM)を使用した、よりきめ細かいチューニングを実施できるようになりました。10gまでのパフォーマンス診断ツールADDMは、インスタンス単位でしか情報を取得することができませんでした。そのためRACのサーバーやインスタンスをまたいでの分析ができませんでしたが、11gからはデータベース全体としての分析/診断ができるようになっています。
例えば、RACを構成するインスタンス(あるいはサービス)ごとに、該当インスタンスのリソース使用率の高いSQLやアプリケーションを並べたり、データベースで発生した待機イベントの中でも、そのイベントに特に影響を受けたインスタンスを表示させることができるようになりました。
これらを駆使し、データベース全体、個別のインスタンス(サービス)という両方のアプローチで効率的にチューニングを進めることが期待できます。
また11gでは表データを圧縮する機能が強化されました(図3)。10gにおいても、表のデータを圧縮する機能は備わっていましたが、10gでの圧縮機能では、データの圧縮の方法に制限があり、特定の方法でロードされた場合のみ表が圧縮されるという制限がありました。このため、OLTP(OnLine Transaction Processing:オンライントランザクション処理)用途での使用には適さず、専らデータウエアハウスで使用されるケースがほとんどでした。
11gの新機能のAdvanced Compression Optionを使用することで、通常のINSERT、UPDATE、DELETEでも圧縮を行うことが可能となっています。制限がなくなったことで、OLTPデータベースでも領域管理とパフォーマンス向上のメリットを享受できるようになり、RACとの親和性も高まっています。
Oracle RACの今後の方向性
今回はRACの機能概要について紹介しました。最後に、将来リリースされるバージョンでは、以下のような方向性で開発が進められるのでは?との予想を述べさせてもらいます。
なお、以下の予測は筆者の期待値も込めた私見であり、Oracle社の公式見解とは何ら関係の無いものとなります。
1つ目は「ノード拡張時のプラグアンドプレイ化が進む」です。ノードの追加作業がより一層簡単になると思います。追加対象となるノードの電源を入れると自動的に追加作業が始まり、一切管理者の手をかけること無く追加作業が完了するようになるのでは?!
2つ目は「プラットホーム混在化」UNIXとWindows、Linuxなど異なるプラットホーム間でRACの構築ができるようになるのでは?実現されれば、手持ちの資産を生かしながら、その時々にあったサーバーを加えてRACを構成できますね。
3つ目は「仮想環境でのRAC化」です。各種、仮想化製品でのOracle RACへの対応を期待したいです。Oracle VMでの仮想化対応がもっとも現実味がありそうですね。そのほかの製品も検討対象に入ると良いのですが。
さて次回は、Oracle RACの使用にあたっての勘所を検証結果とともにご紹介していきます。