仮想化から見たネットワーク機器の進化

2011年2月7日(月)
小宮 崇博

2010年にブロケードが提唱したこと

Brocadeは2010年6月、前述した3種のネットワークを構成するコンポーネント群として「Brocade One」を発表した。前述の3種類のネットワークに対するBrocadeのアプローチであり、以下の3つのコンポーネントで構成する。

  1. 主に、スループットの向上と管理性能の向上を目的とした技術「Virtual Cluster Switching」(VCS)
  2. サーバー仮想化を高密度に実現するためのオフロード技術「Virtual Access Layer」(VAL)
  3. ネットワーク・エレメント管理機能や、統合管理フレームワークに対するプラグインを提供する製品「Brocade Network Advisor」

図3: Brocade Oneコンポーネント

図3: Brocade Oneコンポーネント(クリックで拡大)

このうち、VCSとVALについては第2回以降で詳細に触れるが、今回も簡単に紹介する。

図4: Virtual Cluster Switchingの4つの基盤技術

図4: Virtual Cluster Switchingの4つの基盤技術(クリックで拡大)

VCSには、4つの技術的な基盤がある。

  1. Ethernet Fabric(スループットを高める技術)
  2. Distributed Intelligence(可用性と管理性を高める技術)
  3. Logical Chassis(複数スイッチを論理的に1台に見せる技術)
  4. Dynamic Service Insertion(サービスを付加するためのリダイレクト技術)

(a)Ethernet Fabricは、スループット向上のための技術である。具体的には、IETF TRILLと同じフレーム・フォーマットを使用し、Ethernetネットワークのスループットを2倍以上に向上させる技術である。概要は、2010年2月に掲載した連載第4回でも記述している。Ethernet Fabricによって、TRILLが形成する複数の等価コスト・パスも使用できるようになる。

(b)Distributed Intelligenceは、Ethernet Fabricの可用性を高めるコンセプトである。VCSは、マスターレス構成であり、すべてのスイッチ上でEthernet Fabricを構成するインテリジェント・サービスが動作している。これがDistributed Intelligenceの名前の由来である。この結果、どの単体スイッチに障害が発生しても、ファブリック全体としては無停止である。この概念は、実は新しいものではなく、FC スイッチでは既に実現しているものである。

Distributed Intelligenceは、サーバー仮想化技術をデータセンター全体に広げる際に必須な機能でもある。データセンターでは、仮想マシン単位にVLANを設定することが必須になるが、QoSやFCoEなどの設定も必要である。これらの情報はスイッチ・ポートにひもづく属性であり、仮想マシンが移動した際には仮想マシンに追従する必要がある。ここで、仮想マシンの管理はサーバー管理者が、ポート属性はネットワーク管理者が管理しているため、仮想マシンの移動というイベントに応じて、自動的にネットワーク・スイッチが対応する必要がある。Distributed Intelligenceは、これらを自動的に連携させる(Automatic Migration of Port Profile機能)。

(c)Logical Chassisは、管理をシンプルにする機能である。複数台のスイッチで構成するEthernet Fabricを、単一の論理スイッチとして管理する機能である。論理シャシーを構成すると、設定はすべてのスイッチ間で、一元的かつ同期的に管理される。これにより、管理工数が1けた下がる。

Logical Chassisによって、仮想リンク・アグリゲーション機能(vLAG)も使えるようになる。通常のLAGの場合、2台のスイッチ間のリンクを論理リンクとして構成できるが、vLAGでは、VCS側のスイッチが2台になってもリンク・アグリゲーションが可能である。

図5: VCSの機能概要

図5: VCSの機能概要(クリックで拡大)

(d)Dynamic Service Insertionは、一種のリダイレクション機能であり、今日ではまだ提供されていない。スイッチに対して各種のサービス機能、例えばストレージ暗号化スイッチやデータ暗号化ファイアウォール、ロード・バランサなどのネットワーク・サービスを動的に組み込むための仕組みである。

図6: Dynamic Service Insertion

図6: Dynamic Service Insertion(クリックで拡大)

これからの連載

今回(2011年2月の連載、第1回)は、2010年2月の記事をもとに、2011年1月時点で何が可能なのかを振り返った。2010年2月時点での予告は、ほぼ実現されているか、もしくは実現のめどが立ってきたと言える。第2回以降は、より詳細に解説する予定である。楽しみにしていただきたい。

ブロケードコミュニケーションズシステムズ
UNIXサーバメーカや運用管理ソフトウェアメーカでSEを勤め、2001年からブロケードに所属。主にFC-SANスイッチのプリセールスに携わり、2008年からは新技術、新製品の開発などの日本での技術サポートを行なう。現在は、ソリューション・マーケティングとして、FC-SANだけではなく、LAN/WANやI/O仮想化なども含めた広範なネットワークソリューションの提供に向け活動をしている。個人的にもストレージエリアネットワーク啓蒙のためのメーリングリストを主催している。
http://groups.yahoo.co.jp/group/san-tech/

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