ブロケードのNew IP基盤
前回のネットワーク基盤の進化に伴い、ブロケードがどのようなネットワークインフラを提供しているか、その特徴と実際の活用事例について紹介します。
ブロケードのNew IP基盤
ブロケードは、2011年からL2ファブリックを実現するVDXシリーズデータセンタースイッチファミリを提供しています。主な特徴は、Virtual Cluster Switching(VCS)テクノロジと呼ぶ以下の機能です。
- TRILL標準を活用したL2 ECMPの実現により広帯域化
- クラスタ内のゼロタッチ配備の実現
- クラスタを論理的に単一のスイッチとして動作させ、設定する機能の実現
- クラスタ全体としては高可用性
ロジカルシャーシ以外の機能性は、ストレージファブリック技術の代表格であるFibre Channelファブリックでも実装しています。その他にもVMwareやOpenStackとの連携機能やFC/FCoEファブリックとの接続を実現する機能性も持っています。
Ethernet、Fibre Channelのどちらのファブリック技術も、すでに国内でも100社以上のサービスプロバイダ、ミッションクリティカルシステムを持つ、多くのエンタープライズ企業で利用されています。
VDXによるビッグデータ基盤の最適化
VDXシリーズでは、将来のIT基盤で問題となるような課題を解消しています。リアルタイム性や低遅延性が必要なアプリケーションにおいては、パケット棄却などによって生じる予測できない性能劣化が起こります。ブロケードのVDXシリーズでは、大きなブロックのデータと小規模のトランザクションが混在したり、大きなサブスクリプション比の通信により、マイクロバーストやインキャストが発生するような場合でも、実装している大容量バッファ(VDX6940 では 24MB)により、パケット破棄が起こりにくくなっています。また、キューノブ(Queue Knob)という機構を実装しており、問題となるキューをより細かく管理し、問題の発生を抑制しています。この機構は、設定なしで使用できるのもポイントです。
Virtual Fabric(TRILL FGL)とVF Extension
VDXが実装しているTRILLベースのL2ファブリック技術は、FGL(Fine Grained Labeling)という標準に対応しています。24ビットの識別子を持っているため、単純に4096個以上のVLANとしても使用できますし、テナント単位でのVLANの重複を、インフラで別のIDにマッピングして区別することもできます。
また、VXLANのVNIのようにテナントの識別子のように使用することも可能です。これにより、遠隔地のVCSファブリックとL3回線を利用してVirtual Fabric(VF)を延伸することもできます。
ファブリックとNFV/SDNの関係
ブロケードのスイッチ/ルーターは、すべてSDNに対応しています。SDNでコントローラーとしてはOpen Daylightのブロケードのディストリビューションである、Brocade Vyatta Controller(BVC)を提供しています。すべての製品は、Open DaylightやOpenStackと連携し、動作することが可能です。コントローラーとスイッチの間は、OpenFlowやNETCONFのようなプロトコルで制御、設定を行います(①)。Vyatta vRouterやSteelAppのようなロードバランサやファイアウォールなどの各種機能は、ソフトウェアで実装されており、ファブリックに結合されるサーバー上で動作します。将来の分散データプレーンの制御は、BVCとreactive/proactive連携するアプリケーションから実現することができるようになります。
エンタープライズユーザでは、機能連携や自動化もさることながら、管理者の人数やスキル的制約から、物理インフラと仮想インフラを同じ管理手法で管理したいという要望があります。ブロケードは、たとえばVMware vRealize OPSのような製品へのプラグインを提供しているので、物理インフラ、仮想インフラを同じコンソールの中から運用することができます(②)。
NFV/SDNを活用することにより、特定のデータセンターに縛られず、複数のサービスプロバイダ、キャリアをまたいだSDIを構成することが可能になります。
ブロケードファブリックの活用事例
ブロケードのVDXシリーズを活用した事例は多岐にわたります。プライベートクラウドやデスクトップ仮想化などのエンタープライズ利用などから、パブリッククラウドやビッグデータシステムまでさまざまです。ただ、ファブリックの利点として多くのユーザが挙げているのは、スモールスタートし、シンプルにスケールアウトできるというところです。これは冒頭に挙げたリアル・オプション的な発想をIT基盤で実現したことになります。
将来動向
IoT、ビッグコンピューティングに必要なネットワーキング
前述したとおり、3rd Platformの次の世代のプラットフォームでは、ビッグデータとリアルタイム性を持つシステムが、既存のIaaSと結合することになります。そして、リアルタイムの要求のために、コンピュートの範囲がデータセンターから基地局やアクセスポイントのようなモバイルエッジにまで、まるで「流体のように」延伸されていきます。サービスを実現するためのソフトウェア機能は、複数のクラウド、複数の事業者をまたいでデプロイされ、消費され、消滅していくことになります。IoTデバイスから上がってくる生のデータは、エッジにおいて関連性処理などを行い、リアルタイム処理のために使用されます。一方、データセンターにはほとんど生のデータが集められ、機械学習のために使用されます。このようにデータセントリックなコンピューティングに変わってきます。すべてのエンタープライズを含むOver-the-topプレイヤは、データセントリックなコンピュート環境を、ソフトウェアによるSoftware-Defined Datacenterで構築することで、自動的にこの進化に対応できるようになります。
仮想ファンクションから仮想サービス基盤へ
この流体のように物理インフラ上の至る所に染み出すインフラのコンセプトを“The New IP”といいます。複数のキャリア、クラウドで稼働するためには、ハードウェアに依存しないソフトウェアベースでかつオープンなエコシステムを実現しなければなりません。そうでなければ、ビジネスシステムは継続性を失います。また、データもオープンな形式で記述されなければ、永続性は失われます。New IPの世界では、オープン性は最も重要な概念です。ブロケードは、オープン性を積極的に取り入れ、かつ、エコシステムコミュニティをリードすることをコミットしました。Open DaylightやOpenStackのコミュニティでは、ブロケードのエンジニアが、コミッタやサポータとして活躍していることをご覧いただけます。このNew IPを活用したインフラを提供することにより、ブロケードはすべてのビジネスに対して価値を提供できる基盤を実現します。
連載バックナンバー
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- 仮想化/クラウドの進化とネットワーク市場の動向
- 仮想化から見たネットワーク機器の進化
- スイッチの帯域を高めるEthernet Fabric
- ブロケード、ヤフーの全社共通Hadoop基盤にイーサネット・ファブリック・ソリューションをを提供
- OpenStack、Docker、Hadoop、SDN、.NET…、2014年のOSS動向をまとめて振り返る
- 次世代データセンターのロードマップ
- アバイア、オープンなSDNアーキテクチャを発表
- Cisco ACI(Application Centric Infrastructure)の特徴
- サーバー仮想化と連携するエッジ・スイッチ
- ハイブリッド・クラウドに向けたネットワーク技術の将来