ソフトウェアテストの第一人者が語るテストの難題とは? JaSST'2013
1月30日~31日の2日間「ソフトウェアテストシンポジウム2013 東京」(以下、JaSST'13 Tokyo)が目黒雅叙園(東京都目黒区)で開催された。
JaSSTとは
ソフトウェア品質向上に関する教育や調査研究、普及振興事業を目的とするNPO法人「ソフトウェア技術振興協会」(ASTER:Association of Software Test EngineeRing)によって、全国各地で運営されるシンポジウムである。
今年はJaSST開催10周年にあたり、JaSST'13 Tokyoその節目となる年の初回の開催となっている。今後の開催予定はJaSSTのWebサイト(http://www.jasst.jp/)をご確認頂きたい。
ソフトウェアテスティング・コンサルタント第一人者が語るテストの難題
基調講演はDorothy Graham氏を招いて行われた。Dorothy Graham氏はベル研究所(主に電気通信技術の基礎研究を軸足に、数学、物理学、コンピュータープログラミング理論等まで広く研究開発を行い、ノーベル賞受賞者を多く排出している)にてキャリアをスタートさせ、40年にわたりソフトウェアテストに携わって来た。著作も多数あり、ソフトウェア自動化に対する造詣も深い。第一線で活躍する同氏の生の声を聴こうと、セッションには多くの人が参加した。
テスティング意義
「ISTQB設立によりテスターの評価・地位向上に端を発し、時代と共にテスティングの重要性は高まって来ている。また、テスティングは時代と共に変化する開発方法・技術に対応して常に迅速に対応し来ているといえる。その一方で実際にはまだ、上級のマネージャーなどはテスティング優位性に対する認識は低いといわざるを得ない。組織的な問題も含めテストについては過去から学ぶ事が重要な事」と指摘。
DDP(Defect Detection Percentage)という指標
テスティングにおいて前述の"過去に学ぶ"部分をより効率的に高め、今後のクオリティーを高めるためにどのように進める事が重要かについて、氏はDDP(Defect Detection Percentage=欠陥検出率)という指標を提唱する。
「DDPはリリース前テストでの欠陥検出数だけに着目するのではなく、リリース後の時間軸ともにユーザーによる欠陥報告をも含めた"欠陥数総数"を含めて母数と定義し、テスト時の"欠陥検出率"を指標とする事である。」との説を論じ、DDPを用いる事でカバレッジ基準を見直す事も可能となる。また、DDPを測定していくためにはユーザーからの欠陥報告体制も整えてゆく事にも繋がると語った。
テストの自動化における間違い
自動化おける過ちについても次のように言及した。「バグを探すのは自動化されたテストではない、自動化とはテストを走らせるための手段である。間違いの発端はテストの目的と自動化の目的を混同してまう事にある。欠陥が発見されないからといって、自動化されたテストを非難する必要はない。自動化すれば楽に速くなるというのは大きな間違いである。」
つまり、テストの目的とは品質の向上にあり、単純に"マニュアルテストを排除して、テスト総てを自動化する"又は、"プロジェクトの早期段階から自動化する"のは間違いである。究極的には速く精度の高いテストを行うのが目的であるが、あくまでツールはテスターを支援するものでしかないといえる。「自動化がテスターに置き換わってしまう事はない」とも断言する。
テスティングの未来
今後の予想として「モバイルやソーシャルの台頭により消費者主導のテスティングに推移している。それにより、回帰型のテストはよりリッチになって行く、回帰的なものは自動化する事が可能である。テスターは自動化によって専門性の高いスクリプト言語について多くを学ばなければならないが、より核心に近づく事ができる。自動化によって有益なテストができる事になるテスターはより深く考察する事により技術的に、よりビジネス的にコミットして行く存在になるのではないか?」と基調講演を結んだ。
シンポジウムを通して
前述の基調講演を初めとし、有意義なセッションが2日間にわたり行われた。
中でも「テスト自動化」は大きなキーワードだ。日本では導入が増え、活性化が進むと思われるが、テスト自動化研究会メンバーがセッション中で語った通り、「テストをジャッジする」事は自動化では補完できない。ジャッジするは人間の役割、つまりはテストの中心は人であり、テスターの役割・重要性はより高まる」という事を痛感した。
セッションだけなく会場ではツール等の展示コーナーも併設され、日々進化するテストについての最新情報、手法、概念を多く学べるシンポジウムであった。テスターだけでなく多種多様なプロジェクトに関わるマネージャー、エンジニア諸氏も次回開催時に一度足を運んでみてはいかがだろうか。