OSIネットワーキングモデル(後編)
OSIモデルのレイヤの概念と利点
ネットワーキングモデルでは、ネットワークのさまざまな機能を分類して理解しやすくするためにレイヤが使用されていますが、ネットワーキングモデルでレイヤが使用される理由はそれだけではありません。例として、郵便サービスについて考えてみましょう。手紙を書く人は、郵便サービスが手紙をどのようにして配達するのかについて考える必要はありません。どこかの郵便局にいる職員が、手紙の内容について気にかける必要もありません。同様に、機能を複数のレイヤに分割しているネットワーキングモデルでは、他のレイヤで定義されている機能が他のソフトウェアやハードウェアによって提供されることを前提に、1つのソフトウェアパッケージやハードウェアデバイスに1つのレイヤの機能を実装できます。
プロトコル仕様をレイヤ化する利点をまとめてみましょう。
- 複雑さの緩和
レイヤモデルを使用しない場合と比べて、ネットワークモデルの概念をより細かく分類できる。 - 標準インターフェイス
レイヤ間の標準インターフェイスを定義することで、自由競争の利点をすべて享受しながら、複数のベンダーが特定の役割を果たす製品を開発できる。 - 習得が容易
プロトコル仕様の多くの詳細に関する議論や習得が容易になる。 - 開発が容易
複雑さが緩和されているため、プログラムが変更しやすくなり、製品開発をスピードアップできる。 - 複数のベンダー製品の相互運用
同じネットワーキング規格に準拠する製品を開発することで、複数のベンダーのコンピュータ/ネットワーキングデバイスを同じネットワーク上で稼働させることができる。 - モジュールエンジニアリング
あるベンダーが上位のレイヤを実装するWebブラウザなどのソフトウェアを記述し、別のベンダーが下位のレイヤを実装するTCP/IPソフトウェアなどを記述することが可能である。
OSIモデルのカプセル化用語
TCP/IPと同様に、OSIモデルのレイヤはそれぞれ1つ下のレイヤのサービスを要求します。各レイヤはサービスを提供するためにヘッダーと(場合によっては)トレーラを利用し、下のレイヤが上のレイヤのデータをヘッダーでカプセル化します。ここでは、OSIのカプセル化に関連する用語と概念を紹介します。
TCP/IPモデルでは、さまざまなレイヤとそれらのカプセル化データを表すために、セグメント、パケット、フレームという用語を使用します(図1)。OSIモデルでは、PDU(Protocol Data Unit)という包括的な用語を使用します。
PDUは、カプセル化されたデータに加えて、そのレイヤのヘッダーとトレーラを含んでいるビットを表します。たとえば図2のIPパケットは、OSI用語ではPDUになります。IPはレイヤ3プロトコルなので、IPパケットはレイヤ3 PDU、略してL3PDUになります。このようにOSIモデルでは、セグメント、パケット、またはフレームという用語を使用せず、単に「レイヤx PDU」またはLxPDUという呼び名を使用します。この場合の「x」は、該当するレイヤの番号を表します。
図3は、典型的なカプセル化プロセスを示しています。一番上はアプリケーションデータとアプリケーション層ヘッダー、一番下は物理リンクに送信されるL2PDUです。なお、L2Hはレイヤ2のヘッダー、L2Tはレイヤ2のトレーラを表します。
この記事のもとになった書籍 | |
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Wendell Odom 著/株式会社クイープ 訳 |
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