OSIネットワーキングモデル(後編)

2014年12月1日(月)
Wendell Odom(ウェンデル・オドム CCIE No. 1624)株式会社クイープ[訳]

OSIモデルのレイヤの概念と利点

ネットワーキングモデルでは、ネットワークのさまざまな機能を分類して理解しやすくするためにレイヤが使用されていますが、ネットワーキングモデルでレイヤが使用される理由はそれだけではありません。例として、郵便サービスについて考えてみましょう。手紙を書く人は、郵便サービスが手紙をどのようにして配達するのかについて考える必要はありません。どこかの郵便局にいる職員が、手紙の内容について気にかける必要もありません。同様に、機能を複数のレイヤに分割しているネットワーキングモデルでは、他のレイヤで定義されている機能が他のソフトウェアやハードウェアによって提供されることを前提に、1つのソフトウェアパッケージやハードウェアデバイスに1つのレイヤの機能を実装できます。
プロトコル仕様をレイヤ化する利点をまとめてみましょう。

  • 複雑さの緩和
    レイヤモデルを使用しない場合と比べて、ネットワークモデルの概念をより細かく分類できる。
  • 標準インターフェイス
    レイヤ間の標準インターフェイスを定義することで、自由競争の利点をすべて享受しながら、複数のベンダーが特定の役割を果たす製品を開発できる。
  • 習得が容易
    プロトコル仕様の多くの詳細に関する議論や習得が容易になる。
  • 開発が容易
    複雑さが緩和されているため、プログラムが変更しやすくなり、製品開発をスピードアップできる。
  • 複数のベンダー製品の相互運用
    同じネットワーキング規格に準拠する製品を開発することで、複数のベンダーのコンピュータ/ネットワーキングデバイスを同じネットワーク上で稼働させることができる。
  • モジュールエンジニアリング
    あるベンダーが上位のレイヤを実装するWebブラウザなどのソフトウェアを記述し、別のベンダーが下位のレイヤを実装するTCP/IPソフトウェアなどを記述することが可能である。

OSIモデルのカプセル化用語

TCP/IPと同様に、OSIモデルのレイヤはそれぞれ1つ下のレイヤのサービスを要求します。各レイヤはサービスを提供するためにヘッダーと(場合によっては)トレーラを利用し、下のレイヤが上のレイヤのデータをヘッダーでカプセル化します。ここでは、OSIのカプセル化に関連する用語と概念を紹介します。

TCP/IPモデルでは、さまざまなレイヤとそれらのカプセル化データを表すために、セグメント、パケット、フレームという用語を使用します(図1)。OSIモデルでは、PDU(Protocol Data Unit)という包括的な用語を使用します。

TCP/IPのデータカプセル化の5つのステップ

図1:TCP/IPのデータカプセル化の5つのステップ

PDUは、カプセル化されたデータに加えて、そのレイヤのヘッダーとトレーラを含んでいるビットを表します。たとえば図2のIPパケットは、OSI用語ではPDUになります。IPはレイヤ3プロトコルなので、IPパケットはレイヤ3 PDU、略してL3PDUになります。このようにOSIモデルでは、セグメント、パケット、またはフレームという用語を使用せず、単に「レイヤx PDU」またはLxPDUという呼び名を使用します。この場合の「x」は、該当するレイヤの番号を表します。

カプセル化とデータ

図2:カプセル化とデータ

図3は、典型的なカプセル化プロセスを示しています。一番上はアプリケーションデータとアプリケーション層ヘッダー、一番下は物理リンクに送信されるL2PDUです。なお、L2Hはレイヤ2のヘッダー、L2Tはレイヤ2のトレーラを表します。

OSIのカプセル化とPDU

図3:OSIのカプセル化とPDU

この記事のもとになった書籍
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Wendell Odom 著/株式会社クイープ 訳
価格:4,400円+税
発売日:2014年03月05日発売
ISBN:978-4-8443-3553-5
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著者
Wendell Odom(ウェンデル・オドム CCIE No. 1624)

1981年からネットワーキング業界に従事している。これまで、ネットワークエンジニア、コンサルタント、システムエンジニア、インストラクター、講座クリエータとして活躍し、現在は執筆や認定ツールの作成に従事している。Cisco Pressから出版されたCCNA Official Certification Guideシリーズのすべての著者である。また、『CCNP ROUTE 642-902 Official Certification Guide』、『QoS 642-642 Exam Certification Guide』、『CCIE Routing and Switch Official Certification Guide』の共著者であり、他にもさまざまな書籍を執筆している。PearsonのCCNA 640-802 Network Simulatorとその次期バージョンのコンサルタントでもある。www.certskills.comにおいて、学習ツール、自身のブログへのリンク、およびその他のリソースを管理している。

著者
株式会社クイープ[訳]

1995年、米国サンフランシスコに設立。コンピュータシステムの開発、ローカライズ、コンサルティングを手がけている。2001年に日本法人を設立。主な訳書に、『Raspberry Piユーザーガイド』、『IT技術者なら知っておきたいストレージの原則と技術』、『Smashing Android UI』などがある(いずれもインプレスジャパン発行)。http://www.quipu.co.jp

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