OSIネットワーキングモデル(後編)

2014年12月1日(月)
Wendell Odom(ウェンデル・オドム CCIE No. 1624)株式会社クイープ[訳]
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この記事は、書籍『シスコ技術者認定試験 公式ガイドブック Cisco CCENT/CCNA ICND1 100-101J』の内容を、Think IT向けに特別公開しているものです。

OSIモデルのレイヤとそれらの機能

CCENT試験では、OSIモデルの各レイヤで定義されている機能を基本的に理解していることと、レイヤの名前を覚えていることが求められます。また、本書全体にわたって参照されているデバイスやプロトコルごとに、そのデバイスやプロトコルで定義されている機能に最も近いOSIレイヤを理解していることも重要となります。

現在、ほとんどの人はOSIモデルの機能よりもTCP/IPモデルの機能のほうをよく理解しています。このため、OSIレイヤの機能について学ぶとしたら、TCP/IPモデルの機能について考え、それをOSIモデルに関連付けてみるのが最も効果的です。5層のTCP/IPモデルを使用する場合、OSIとTCP/IPの下位の4つのレイヤはほぼ対応しています。唯一の違いは、OSIモデルのレイヤ3(ネットワーク)とTCP/IPの初期モデル(インターネット)の名前です。OSIモデルの3つの上位レイヤ、すなわちアプリケーション層(レイヤ7)、プレゼンテーション層(レイヤ6)、セッション層(レイヤ5)で定義されている機能はすべて、TCP/IPモデルのアプリケーション層にそのままマッピングされます。OSIモデルの7つのレイヤの機能を以下にまとめています。

OSIモデルの各レイヤの定義

レイヤ7(アプリケーション層)

通信ソフトウェアと、インストール先のコンピュータ以外との間でやり取りする必要があるアプリケーションの間のインターフェイスを提供する。ユーザ認証のプロセスも定義している

レイヤ6(プレゼンテーション層)

ASCIIテキスト、EBCDICテキスト、バイナリ、BCD、JPEGなどのデータフォーマットを定義し、ネゴシエートすることを主な目的としている。OSIでは、プレゼンテーション層のサービスとして暗号化も定義されている

レイヤ5(セッション層)

セッションと呼ばれる対話の開始、制御、終了の方法を定義する。一連のメッセージの一部だけが完了している場合にアプリケーションに通知できるよう、このレイヤには複数の双方向メッセージの制御と管理が含まれる。これにより、プレゼンテーション層が受信したデータストリームをシームレスに認識できるようになる

レイヤ4(トランスポート層)

トランスポート層のプロトコルはさまざまなサービスを提供する。OSIのレイヤ5〜7はアプリケーション関連の問題に焦点を合わせているが、レイヤ4はエラーリカバリやフロー制御といったコンピュータへのデータ配信に関連する問題に焦点を合わせている

※サービスの概要は上記のとおりですが、サービスの詳細については本連載では解説しません。書籍では5章(P.109~)で詳細を説明しています。

レイヤ3(ネットワーク層)

主な機能として論理アドレッシング、ルーティング(転送)、パス決定の3つを定義している。ルーティングはデバイス(通常はルータ)がパケットを最終目的地に転送する方法を定義する。論理アドレッシングは各デバイスにルーティングプロセスで使用できるアドレスを割り当てる方法を定義する。パス決定とは、ルーティングプロトコルが候補ルートをすべて学習し、最も効果的なルートを選択するために行う作業のことである

レイヤ2(データリンク層)

デバイスが物理メディアを通じてデータを送信できる状態を判断するためのルールを定義している。データリンクプロトコルは、メディアに接続されたデバイスがデータを正しく送受信できるようにするヘッダーとトレーラのフォーマットも定義している

レイヤ1(物理層)

通常は、他の標準化団体で定義された規格を参照する。これらの規格は、コネクタ、ピン、ピンの使用、電流、エンコーディング、光変調、および物理メディアの使用を有効または無効にする方法を定めたルールなど、伝送メディアの物理特性を扱っている

表1は、CCNA試験で出題されるデバイスとプロトコルの例と、それらに対応するOSIモデルのレイヤをまとめたものです。多くのネットワークデバイスは、複数のOSIレイヤのプロトコルを実際に理解しなければなりません。このため、表1に示されているのは、実際には、デバイスがそのコア機能を実行するときに考慮すべきレイヤのうち最も上位のものです。たとえば、ルータはレイヤ3の概念を考慮する必要がありますが、レイヤ1とレイヤ2の機能もサポートする必要があります。

表1:OSIモデルのデバイスとプロトコルの例

レイヤ名プロトコルと仕様デバイス
アプリケーション、プレゼンテーション、セッション(レイヤ5〜7)Telnet、HTTP、FTP、SMTP、POP3、VoIP、SNMPホスト、ファイアウォール
トランスポート(レイヤ4)TCP、UDPホスト、ファイアウォール
ネットワーク(レイヤ3)IPルータ
データリンク(レイヤ2)イーサネット(IEEE 802.3)、HDLCLANスイッチ、ワイヤレスアクセスポイント、ケーブルモデム、DSLモデム
物理(レイヤ1)RJ-45、イーサネット(IEEE 802.3)LANハブ、LANリピータ、ケーブル

上記のOSIモデルの各レイヤの基本機能と、表1に示した各レイヤのプロトコルとデバイスの例に加えて、レイヤの名前も覚えておく必要があります。

著者
Wendell Odom(ウェンデル・オドム CCIE No. 1624)

1981年からネットワーキング業界に従事している。これまで、ネットワークエンジニア、コンサルタント、システムエンジニア、インストラクター、講座クリエータとして活躍し、現在は執筆や認定ツールの作成に従事している。Cisco Pressから出版されたCCNA Official Certification Guideシリーズのすべての著者である。また、『CCNP ROUTE 642-902 Official Certification Guide』、『QoS 642-642 Exam Certification Guide』、『CCIE Routing and Switch Official Certification Guide』の共著者であり、他にもさまざまな書籍を執筆している。PearsonのCCNA 640-802 Network Simulatorとその次期バージョンのコンサルタントでもある。www.certskills.comにおいて、学習ツール、自身のブログへのリンク、およびその他のリソースを管理している。

著者
株式会社クイープ[訳]

1995年、米国サンフランシスコに設立。コンピュータシステムの開発、ローカライズ、コンサルティングを手がけている。2001年に日本法人を設立。主な訳書に、『Raspberry Piユーザーガイド』、『IT技術者なら知っておきたいストレージの原則と技術』、『Smashing Android UI』などがある(いずれもインプレスジャパン発行)。http://www.quipu.co.jp

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