Hyper-Vのライブマイグレーションとその他の拡張機能

2015年4月6日(月)
樋口 勝一

仮想ネットワーク NVGRE

WIN2012のHyper-Vから実装されたNVGREは、Hyper-Vでサポートされている仮想ネットワークの1つです。NVGREを用いることで、Windows Server間、Hyper-Vの間では1つ物理ネットワークで複数の仮想ネットワークを構築することが可能となります。

Network Virtualization using Generic Routing Encapsulation

http://tools.ietf.org/html/draft-sridharan-virtualization-nvgre-02

NVGREの仕組みを簡単に説明すると、1つの物理ネット—ワーク内で、それぞれの仮想ネットワークの通信内容をカプセル化して、他の仮想ネットワークの通信内容と混在しないようにする方法です。サーバーとサーバーの間は、仮想ネットワークごとにトンネルが構築された状態で通信されています。Hyper-V自体が各仮想ネットワークのルーティングテーブルを持つ仕様となっており、特にネットワークコントローラーなどを配置する必要はありません。vNextのHyper-Vでもこれまでと同様にNVGREによるネットワークの仮想化が可能となっています。ネットワークの仮想化関連については、今現在のvNextの時点では特に変更点などは発表されていないので、WIN2012R2のHyper-Vと同等のものが利用可能となっています。念のため、実際に仮想マシンを使ってNVGREの設定を行い、検証してみました。

結果、これまでと同様にまったく問題なく仮想化ネットワークを構築できることを確認したので、互換性は問題なしと判断しました。今回の検証には、Hyper-Vコミュニティーの「InvokeV」にて無償で提供されているNVGREの設定ツール「WNVManager」を利用しました。「WNVManager」はNVGREに特化した、簡単にNVGREの設定、確認ができるツールとなっています。

InvokeV - Facebook

https://www.facebook.com/groups/749187091776055/

WNVManagerによるNVGREの設定

図1:WNVManagerによるNVGREの設定(クリックで拡大)

WMI とPowerShell

vNextのHyper-Vは、WIN2012のHyper-Vと同様のWMI「root\virtualization\v2」という名前空間(API)が利用できます。したがって、メソッドやプロパティーはまったく同じものが使えます。「root\virtualization」から「root\virtualization\v2」に変わったときのような悪夢は回避できたようです(ほっ)。本連載の第1回「注目すべき新機能」で紹介した、メモリとネットワークアダプタの動的追加・削除、プロダクションチェックポイントについても、これまでと同様のメソッドでプログラマチックに利用可能です。WMIが元となっているPowerShellも同様に、これまでのコマンドが利用可能です。チェックポイントの項目については、設定項目が増えた関係でパラメーターが増えています。

メモリの動的変更

Set-VMMemory -VMName "VMName" -DynamicMemoryEnabled $false -StartupBytes 4GB

ネットワークアダプタの動的追加・削除

Add-VMNetworkAdapter -VMName "VMName" -Name "NICName"
Remove-VMNetworkAdapter -VMName "VMName" -Name "NICName"

チェックポイントの取得・適用

Checkpoint-VM -Name "VMName" -SnapshotName “CHKName”
Restore-VMSnapshot -VMName "VMName" -Name “CHKName”

チェックポイントの種類の設定

プロダクションチェックポイント + スタンダードチェックポイント
Set-VM -Name " VMName " -CheckpointType Production 
プロダクションチェックポイントのみ
Set-VM -Name " VMName " -CheckpointType ProductionOnly
スタンダードチェックポイント
Set-VM -Name " VMName " -CheckpointType Standard
チェックポイントの取得を無効
Set-VM -Name " VMName " -CheckpointType Disabled

さらに、WIN2012ではHyper-V関連のPowerShellは178個ありましたが、vNextでは186個に増えています。コマンド一覧は以下で確認できます。

Get-Command -Module Hyper-V

コマンド数は以下で確認できます。

Get-Command -Module Hyper-V | Measure-Object

追加されたコマンド

Update-VMConfigurationVersion仮想マシンを6.0にバージョンアップ
Get-VMAssignableDevice利用用途不明
Add-VMAssignableDevice利用用途不明
Remove-VMAssignableDevice利用用途不明
Mount-VMHostAssignableDevice利用用途不明
Dismount-VMHostAssignableDevice利用用途不明
Get-VMVideoHyper-Vマネージャーから仮想マシン接続した場合の画面の大きさ情報の取得(拡張セッションモード未使用時)
Set-VMVideoHyper-Vマネージャーから仮想マシン接続した場合の画面の大きさの設定(拡張セッションモード未使用時)

Hyper-Vクラスターのローリングアップグレード

WIN2012R2でHyper-Vフェールオーバークラスターを構成している場合に、仮想マシンを止めることなくvNextがクラスターの新しいノードとして参加することが可能です。また、仮想マシンを止めることなくWIN2012R2をvNextにアップグレードすることも可能です。WIN2012R2とvNextが混在しているクラスター環境では、新規で作成される仮想マシンのバージョンは5.0となり、vNextの持つHyper-Vの新機能は利用することができません。クラスター環境で新機能を利用するためには、PowerShellのコマンドUpdate-VmConfigurationVersionでクラスター自体のアップグレードが必要となります。ただし、一度アップグレードしたクラスターにWIN2012R2は追加することができなくなります。

おわりに

いかがでしたでしょうか。サービス開発者の立場でvNextをいじくりたおしてみました。今回ご紹介できなかった新機能など一部ありますが、次期Windows Server のHyper-Vの魅力は十分お伝えできたはずです。今までよりもさらに進化し、そして十分な互換性を保持した仮想化プラットフォームHyper-V、待ち遠しい限りです。筆者がこれまで開発してきたサービスは、必ずしもHyper-Vの機能を100%発揮しているものではありませんでした。サービスとして提供するためには、ユーザーが本当に必要としているものは何か、コストはどう抑えるのか、トラブルに強くするためにはどう作ればよいか、などなど、さまざまな大人の事情が絡み合います。新しいHyper-Vでは、サービスとして必要なもの、ユーザーに喜んでもらえるもの、そしてHyper-Vの機能が十分に発揮できるようなサービスを作り上げたいものです。

そんなことを考えていると時間の進み方が通常の8倍の速度といわれているWindows Worldにどっぷりと浸かり込み、あっという間に時間が過ぎてしまいます。筆者の頭の中の仮想世界では、すでにHyper-Vのサービスがいくつも組み立てられています。作っては壊し、作っては壊しを繰り返して日々バージョンアップが繰り返されています。頭の中も仮想化されているようです。仮想化って本当に楽しいですね!

GMOインターネット株式会社 Windowsソリューション チーフエグゼクティブ

GMOインターネットでWindowsのサービス開発運用に関わって16年、数年単位で進化し続けるMicrosoftのWindowsは新しもの好きにはたまらない製品です。自動販売機に見たことのないジュースがあれば、迷わすボタンを押します。そんなチャレンジが僕の人生を明るく、楽しくしてくれています。

お名前.com デスクトップクラウド
http://www.onamae-desktop.com/

お名前.com VPS Hyper-V
http://www.onamae-server.com/vps/hyperv/

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