より速く、より小さく、より軽く、 新基盤 Nano Server (前編)

2015年10月9日(金)
樋口 勝一
次期Windows Serverとなる予定の「Windows Server 2016」には注目されるべき新しいテクノロジーがいくつか実装される予定となっています。

次期Windows Serverとなる予定の「Windows Server 2016」には注目されるべき新しいテクノロジーがいくつか実装される予定となっています。前回までにご紹介したコンテナ技術はそのうちの1つです。そして、さらにもう1つ注目すべきテクノロジーとして、「Nano Server」が提供される予定です。「Nano Server」とはいったいどういうものなのか、その役割、構築方法など、Windows Server 2016 Technical Preview 3がリリースされた現在までに明らかになっている範囲で、今回と次回の2回に分けてご紹介していきます。

前編では、Nano Serverの概要、市場ニーズ、インストールについて解説します。

※本記事はWindows Server 2016 Technical Preview 3を元に作成されています。今後のリリース内容により仕様等が変更される場合があります。

Nano Serverとは

Nano Serverは、すでにWindows Server 2016 Technical Preview 2のリリース時には、実際にインストールして、評価できるものが提供されていました。最近のマイクロソフトのイベントやセミナーでは、より積極的にNano Serverについていろいろな情報が公開されています。その中で再三出てくるキーワードが、 refactoring (リファクタリング)とfootprint(フットプリント)です。Nano Serverにおいて、この2つのキーワードは、次のような意味を持ちます。

  • リファクタリング:Windows Serverを作り直すこと
  • フットプリント:Windows Server自体の容量と実行時の必要資源

Nano Serverについては、次に示すマイクロソフトの公式ブログでも詳しく解説されています。関心のある方は、ぜひ参照してみてください。

Windows Server Blog
http://blogs.technet.com/b/windowsserver/archive/2015/04/08/microsoft-announces-nano-server-for-modern-apps-and-cloud.aspx

これら2つのキーワードを踏まえて、これまで公開されている情報をまとめると、Nano Serverとは「Windows Serverを徹底的にリファクタリングし、フットプリントを極限まで小さくした新しいオペレーティングシステム(OS)」ということです。特徴としては、次のような点が挙げられます。

  • 修正パッチを最少にすることによるセキュリティと稼働率の向上
  • 起動時間の短縮
  • 構築・展開速度の向上
  • リモートからの管理に限定

Nano Serverが利用されるシナリオでは、マイクロソフトは2つの点に注力しています。1つは、仮想マシンや、物理マシン、これから登場するコンテナ内で稼働する様々なクラウドアプリケーションの開発言語をサポートすること。もう1つは、マイクロソフトのクラウド基盤としてのHyper-VクラスターとストレージクラスターとしてのScale Out File Serverをサポートすることです。これらを実現すべく、Nano Serverは次世代のOSとして準備されています。

Nano Serverの追加機能パッケージは、数種類用意されています。Hyper-Vの役割が構成されたもの、フェールオーバークラスターの役割が構成されたもの、ファイルサーバーの役割が構成されたものなど、利用用途によって使い分けるようになっています。それぞれが、必要最低限のファイル、ライブラリのみがインストールされており、他のアプリケーションなどはインストールされない状態で提供されます。

Nano Serverは、利用者が必要としている機能だけをインストールした、最小の状態で利用することができます。その半面、より小さく、より速く、より安全に、といった点を実現するために、Nano Serverでは次に示したように、いくつか削られたり、限定されたりした機能があります。

これまでのフル装備のWindows Serverと比べると、極小となった半面、ユーザーには使いづらい部分も出てくる可能性もあります。それらを補うために、マイクロソフトではリモートからのGUI管理やPowerShellの拡充、新しいSystem Centerによる統合管理機能など、様々なサポートツールの準備も行われています。

以上が現時点までで分かっているNano Serverの概要となります。

Nano Serverの必要性

これまでのWindows Serverの利用されてきた市場を振り返ってみて、Nano Serverが提供されるようになった経緯を推察してみましょう。現在リリースされているWindows Server 2012 R2は、インストール直後のハードディスク容量で約14GBとなっています。システム要件を見ると、必要メモリは最低512MB、ハードディスク容量は最低でも32GB必要ということなにっています。

Windows Server 2012 R2 のシステム要件
https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/dn303418.aspx

Windows Serverは、IISではWebサーバーの機能、Hyper-Vでは仮想化プラットフォーム、Active Directoryでは認証サービスなど、様々な機能や役割を提供できるマルチなOSとして作られています。さらに、OS上では必要に応じてアプリケーションをインストールすることで、より使いやすいシステムを構築することができるようになっています。これらのアプリケーションプラットフォームとしても 十分な役割を担っています。

1つのOSでこれだけ様々なことができるというのは、使う側としてはとても使いやすく便利なOSであるといえます。しかし、これまで度重なるバージョンアップを繰り返し、多機能化していくにつれ、必要とするハードディスク容量やメモリが徐々に肥大化してきました。また、様々なモジュールが複雑に数多く含まれており、セキュリティ面でのリスクが高まるという、深刻な問題が顕在化してきました。

多くのユーザーが様々な使い方をするクラウド時代の真っただ中では、1つのOSですべてを賄おうとする今のWindows Serverは大きすぎるのです。クラウドによる急激な変化にさらされているIT市場では、これまでのように、Windows Server自体のアップデートを数か月、数年単位で待ってはいられません。Window Serverは、多様化するユーザーのニーズに応えるために、短期間でアップデートを繰り返す必要があります。そこで、機能ごと、役割ごとにサーバーのサービスを細分化して、その集合体として1つの大きなサービスを構築しようという考え方へシフトしています。このサービス提供方法は「マイクロサービス」と呼ばれ、Web関連のサービス分野では注目を集めているキーワードとなっています。

マイクロサービスでは、サービスを提供するアプリケーションがそれぞれ独立しており、提供する機能や変更、スケールは独立した範囲内で完結します。Nano Serverは、マイクロサービスのプラットフォームを担うべく登場した新しいOSと考えられます。さらに、Nano Server同様に注目を集めているコンテナも、マイクロサービスを構成する上でアプリケーションプラットフォームとして重要な基盤となっています。

Nano Serverやコンテナで構築されたサービスは、マイクロサービス単位での短期間のアップデートを可能にします。クラウドファーストを提言しているマイクロソフトにとって、常に最新のサービスを提供することができるNano Serverは、自身の提供するパブリッククラウドサービスであるMicrosoft Azureにおいても、また、同様の技術利益を享受できるユーザーにとっても、必要性の高い新しいOSということになります。すでにMicrosoft Azureでは、マイクロサービスプラットフォームサービスの「Azure Service Fabric」を提供しており、Webアプリケーションを自動的に分散システム化して、拡張していくことが可能となっています。マイクロサービスベースのサービス提供は、今後ますます増えていくことが予想されます。

Nano Serverのインストール

Windows Server 2016 Technical Preview 3(TP3)で提供されているNano Serverを実際にインストールしてその将来性を体感してみましょう。以下では、Getting Started with Nano Server(https://technet.microsoft.com/en-us/library/mt126167.aspx)を参考に、解説を進めていきます。

※以下の操作はTP3をインストールした仮想マシン上で行っています。

現時点では、TP3のインストールメニューにはNano Serverの選択項目がありません。

Nano Serverの関連のファイルは、TP3のインストールメディア内の“NanoServer”フォルダに含まれています。まずは以下の手順で、Nano Serverのインストールされたvhdファイルを作成します。

  1. TP3のインストールメディアのISOファイルをマウントします。今回はDドライブとなります。
  2. ISOファイルの中身をすべてローカルフォルダにコピーします。今回は”C:\ISO”にコピーします。
  3. “C:\ISO\NanoServer\Packages\en-us”のフォルダ名を”C:\ISO\NanoServer\Packages\ja-jp”に変更します。(システムロケールが英語の場合は不要)
  4. 作業フォルダとして”C:\NanoServer”を作成します。
  5. “C:\NanoServer”フォルダに、"D:\NanoServer\convert-windowsimage.ps1"と"D:\NanoServer\ New-NanoServerImage.ps1"の2つのファイルをコピーします。
  6. PowerShellを管理者権限で起動します。
  7. コピーしたフォルダに移動して、" . .\New-NanoServerImage.ps1"を実行します。
    PS C:\NanoServer> . .\new-nanoserverimage.ps1
    これで「New-NanoServerImage」コマンドが実行できるようになります。
  8. “New-NanoServerImage”コマンドを実行します。
-MediaPath ISOの中身をコピーしたフォルダパス
-BasePath NanoServer.wimからベースとなるファイル生成して保存するフォルダ
-TargetPath NanoServerのvhdファイルを保存するフォルダ
-ComputerName 作成するNano Server名
-GuestDrivers Hyper-V上でNano Serverを実行する場合に指定
<a href="/sites/default/files/645905.jpg" rel="lightbox">New-NanoServerImage -MediaPath C:\ISO -BasePath C:\NanoServer\Base -TargetPath C:\NanoServer\VHD\Nano01 -ComputerName Nano01 -GuestDrivers
</a>

コマンド実行後にadministratorのパスワードを指定して、しばらくするとNanoServerのvhdファイルが”C:\NanoServer\VHD\Nano01”に作成されます。

Nano Serverへログイン

以上でNano Serverのインストールは完了です。Nano Serverを仮想マシンとして起動してみましょう。作成されたvhdファイルをWindows Server 2012 R2のHyper-Vにコピーします。通常の仮想マシンの作成手順と同じくvhdファイルなので、第1世代の仮想マシンを作成します。Nano Serverのハードディスクはわずか500MB、起動もあっという間です。15GB近くあるWindows Server 2012 R2とはまったくの別ものと言えます。

起動したNano Serverへログインしてみましょう。シンプルなログイン画面となっています。

User Name Administrator
Domain 空白
Password New-NanoServerImageコマンド実行時に指定したもの(TP3の現時点ではキーボード配列が101キーボードになっているので注意)

ログインすると、Nano Serverの設定情報を確認することができるようになっています。この画面では、Nano Serverのログアウト、シャットダウン、再起動ができるようになっています。

分かりづらいかもしれませんが、「Tabキー」で「>Networking」にフォーカスしてEnterキーを押すと、ネットワークアダプタが表示されるので、さらにEnterキーを押すと詳細なネットワーク設定情報を確認することができます。

ここで、ネットワークの設定変更を行いたいところですが、参照するのみの画面となっています。あくまでも緊急時に対処するための最低限の管理画面です。Nano Serverの設定変更は、すべてリモートからの操作が基本となります。

次回は、Nano Serverの操作について、ファイルサーバーの機能を例に解説を行います。

GMOインターネット株式会社 Windowsソリューション チーフエグゼクティブ

GMOインターネットでWindowsのサービス開発運用に関わって16年、数年単位で進化し続けるMicrosoftのWindowsは新しもの好きにはたまらない製品です。自動販売機に見たことのないジュースがあれば、迷わすボタンを押します。そんなチャレンジが僕の人生を明るく、楽しくしてくれています。

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http://www.onamae-server.com/vps/hyperv/

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より速く、より小さく、より軽く、 新基盤 Nano Server (前編)

2015/10/9
次期Windows Serverとなる予定の「Windows Server 2016」には注目されるべき新しいテクノロジーがいくつか実装される予定となっています。

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