Hyper-Vのライブマイグレーションとその他の拡張機能
2015年 仮想化プラットフォームの新事情
VMware vSphere 6.0、Microsoft Hyper-V、RHEV 3.5の仮想化プラットフォームについて、新機能と機能拡張を中心にその最新動向を探る。 この特集のまとめPDFを無料でダウンロードできるようになりました!第4回では、ライブマイグレーションやそれと関係する拡張機能について解説します。なお、Windows Serverを参照する名称として、本稿では次のような略称を使用します。
- vNext:Windows Server Technical Preview
- WIN2012R2:Windows Server 2012 R2
- WIN2012:Windows Server 2012
ライブマイグレーション
Hyper-Vの主要機能の1つ、ライブマイクレーションの互換性は非常に気になるところです。これまでの経験を振り返ってみると、WIN2012のHyper-VとWIN2012R2のHyper-Vとの間のライブマイグレーションは、WIN2012のHyper-VからWIN2012R2のHyper-Vへの一方通行のものでした。
Hyper-Vのサービス環境をすべてアップグレードする前提での移行過程としては、一方通行でも問題はありませんが、新旧のバージョンを混在してサービス提供を考えている場合は、これでは50点の出来でした。これと比較した場合、vNextのHyper-VとWIN2012R2のHyper-V間のライブマイグレーションの互換性は、ほぼ及第点の85点といった感じでしょうか。WIN2012R2のHyper-V上で作成した仮想マシンは、vNextのHyper-Vとの間で双方向にライブマイグレーションで移動可能です。このとき、仮想マシンのバージョンは5.0のままで行うことが可能です。ライブマイグレーションに仮想マシンのアップグレードが不要なので、双方向の移動が可能となっています。また、WIN2012のHyper-Vから、vNextのHyper-Vへのライブマイグレーションは、WIN2012のHyper-VからWIN2012R2のHyper-Vへと同様、一方向のみサポートされています。この場合は、仮想マシンのバージョンはライブマイグレーションと同時に5.0にアップグレードされています。WIN2012より前のWindows Server 2008R2などのHyper-Vからのライブマイグレーションはサポートされていません。
vNextのHyper-Vで作成されたバージョン6.0の仮想マシンには下位互換性はなく、vNext同士の間でのみライブマイグレーションによって移動することができます。完全互換とはいかないまでも、ここまでできれば互換性という意味では、ほぼ満足のいくレベルと言えると思います。
異なるバージョン間のライブマイグレーション | 方向 | |
---|---|---|
Windows Server Technical Preview ←→ Windows Server Technical Preview | 双方向 | |
Windows Server Technical Preview ←→ Windows Server 2012 R2 | 仮想マシンバージョン5.0のみ 双方向 | |
Windows Server Technical Preview ←—— Windows Server 2012 | 一方向 | |
Windows Server Technical Preview ×——× Windows Server 2008 R2 | サポート対象外 |
仮想マシン
vNext のHyper-V上で仮想マシンとしてサポートされるOSは、いまのところvNext自体と、Windows、LinuxやFreeBSDなど含めてWIN2012R2のHyper-Vでサポートされる内容と同様と考えられます。
Hyper-V の概要
https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/hh831531.aspx
これは、WIN2012R2のHyper-V上の仮想マシンはバージョン5.0であれば、vNext のHyper-Vとの間の双方向でライブマイグレーションが可能ということから、予想することができます。Windows Server 2003、Windows Server 2003 R2に関しては2015年7月15日にサポートが終了するため、サポートされる仮想マシンとしては除外されます。vNext のHyper-V上で仮想マシンを新規で作成した場合や、ライブマイグレーションでvNext のHyper-V上に仮想マシンを移動してきた場合は、最適化するために統合サービスをアップデートする必要があります。前述したように、vNextのHyper-Vからは統合サービスがWindows Update や Windows Server Update Services (WSUS) を通じて、仮想マシンへ提供される仕様へ変更となっています。現在Windows Updateで提供されているvNext のHyper-V用統合サービスは以下となります。
テクニカル プレビューの Windows ホスト上で実行されている Windows 仮想マシンに対する HYPER-V の統合コンポーネント
http://support.microsoft.com/kb/3004908/ja
- Windows 8.1 Update1 (KB919355適用済み)
- WIN2012R2 Update1 (KB919355適用済み)
- Windows 7 SP1
- Windows Server 2008 R2 SP1
- Windows Server 2008 SP2
LinuxやFreeBSDはOS自体に統合サービスの機能が含まれているのでそのまま利用可能です。統合サービスについては下位互換があり、仮想マシンとしてサポートされているWindowsについては、ライブマイグレーションなどでWIN2012R2のHyper-Vへ移動したとしても問題はありません。
インポート/エクスポート
仮想マシンのHyper-V間の移動手段としては、ライブマイグレーションだけではなく、インポート/エクスポートを使った移動方法もあります。インポート/エクスポートの移動要件も、ライブマイグレーションと同様にホストとなるWindows Serverのバージョンによって異なります。仮想マシンのバージョンが5.0であれば、チェックポイントや構成ファイルはそのまま変換されることはなく、相互間でエクスポート/インポートが可能です。バージョン6.0の仮想マシンは、vNextのHyper-V同士でのみエクスポート/インポートが可能となります。前述しましたが、仮想マシンのバージョンによって、構成ファイルのファイル形式とフォーマットが異なるためです。
インポート/エクスポートの互換性の問題で移行できないという場合は、限定的ですが仮想ハードディスクファイルだけをコピーして、移動先のHyper-V上で新たに仮想マシンを作成するという方法が可能です。この場合の条件としては、チェックポイント(スナップショット)は移動できないという条件付きになります。
エクスポート\インポート | 2008 | 2008R2 | 2012 | 2012R2 | Technical Preview |
---|---|---|---|---|---|
2008 | ○ | ○ | △ | △ | △ |
2008R2 | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
2012 | × | × | ○ | ○ | ○ |
2012R2 | × | × | × | ○ | ○ |
Technical Preview 5.0 | × | × | × | ○ | ○ |
Technical Preview 6.0 | × | × | × | × | ○ |
【参照】Windows Server 2008 の仮想マシンを Windows Server 2012 R2 へインポートする際にエラーとなる
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