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問題解決のためには”問題の発生”が必要だ - Teslaの「Autopilot」死亡事故からあなたは何を学ぶ?

2016年8月16日(火)
ReadWrite Japan

アメリカ合衆国運輸省道路交通安全局 (NHTSA)が先日、TeslaのModel Sが「Autopilot」モードで初の死亡事故を起こした件についての第一次調査の開始を発表した。

CNBCによると、NHTSAは2015年のModel Sが起こした事故について、オートパイロット機能が働いており、事故当時に使われていた運転支援の性能や設計をテストする必要性があると述べているという。

事件は、今年の5月フロリダで起こった。大きなトラックがTeslaの走行していた車線に入り、そのトラックの側面に衝突し、その下に潜り込む形となった。同社のオートパイロットシステムには曇り空に対して、トラックの白い側面を認識するのは困難だったのかもしれない。

Teslaのブログの投稿には「今回の事故は、Autopilotを作動させた状態の1億3000万マイル以上になる走行で初めて起こったものだ」と述べられている。そして、米国での平均的な車での死亡率は9,400万マイルに一人、世界中での平均は6,000万マイルに一人になるという。

Teslaはさらに、事故が起こってすぐにNHTSAに報告したと付け加えている。

このことでTeslaが舞台から撤回するわけではないが、そうなる第一歩になる可能性はある。そしてオートパイロット機能はソフトウェアによるものであることから、TeslaはOTAアップデートによりこの機能を早急に削除するかもしれない。今回の事件を通じてTeslaのオーナーは不自由を強いられることにはなるだろうが、ガレージへの車の放置やディーラーへの車の返品は避けられることになる。

自動運転車の技術が成熟していく中で、いくつかのシステムはすでに運転者支援システムとして今の最新モデルに備わっている。そして、それらの機能(発車時の警告、衝突回避システム、自動駐車など)は間違いなく事故も防げ、死者も出なかったはずだ。

明らかになる倫理および法的な問題

しかし、自動運転車において、車外または車内で人が死んだということの倫理及び法的な予期しない影響は、この分野で技術の先端を走る人たちすべてに振りかかる災難だ。

最近、FordやGoogle、Uberその他の自動運転車業界も、この急速な技術の進展に並ぶよう法的整備を急ぎ、製品を早くリリースできる状況にできるようワシントン州にロビー活動を行うと発表したところだ。

しかし先月、NHTSAは、従来の車が走る米国の路上での自動運転車の立場がどのようになるかについて、各州が対応を進めるという選択をした。

ヨーロッパのような管轄権があると規制機関の間での統一が図れており、中国や英国といった国は自動運転車に合わせて法律を調整することに最も意欲的である。

また、運転するのがソフトウェアである以上、走行中の車がハッキングされることによる大混乱のリスクがあることからも、専門家たちは自動運転機能に待ったをかけるかもしれない。

もちろんそのようなハッキングが起こったという証拠はなく、今後の調査で真相は明らかになっていくことだろう。すでに自動運転を巡ってさまざまなポジショントークが国内外で繰り広げられているが、ひとつ言えることは、今回の事件はこの技術が向き合うべき現実に気付かせてくれたということだ。そして恐らくは、他の技術同様、これまでの運転リスクを過去のものとして取り除く代わりに新しいリスクが浮上してくることになるのだろう。

Covisintのチーフセキュリティオフィサーであるデイビッド・ミラー氏は、今年の始めのRWとのインタビューで次のように答えている。「ハッキングが原因となり、自動運転車で人が死ぬまでこういったことは続くだろう。彼らがセキュリティのことを考えていないわけではなく、問題を解決するためには、まずその問題が起こることが必要なのだ。」

発展途上の技術に失敗は付き物である。だが、その一言で済まされるような問題でないことは明らかだ。正当化して現実から逃げるのではなく、真摯に向き合い改善を重ねることが今後の技術の文化的発展に必要不可欠なことだろう。

ReadWrite[日本版] 編集部
[原文]

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