ネットワーク全体から見る「スイッチ超入門」
レイヤー2スイッチのフレーム転送処理
ここからは、レイヤー2スイッチの基本動作について解説します。
レイヤー2スイッチは、端末が送信したイーサネット・フレームを受け取ると、そのフレームに書かれているあて先MACアドレスを調べ、そのあて先が接続されているポートにのみフレームを転送します。これによって、ネットワーク内に不要なトラフィックが流れないようにし、通信効率を向上させます。
このために利用するのが、MACアドレス・テーブルです。レイヤー2スイッチは、接続している端末のMACアドレスや接続ポートなどの情報を自動的に学習(ネットワーク管理者が手動で登録することもできる)してMACアドレス・テーブルに保持します。このうえで、受信したフレームのあて先MACアドレスとMACアドレス・テーブルの情報を比較し、転送処理を行います。
なお、ここでいうMACアドレスとは、物理アドレスあるいはハードウエア・アドレスと呼ばれることもあり、6バイトで構成されています。上位3バイトはメーカーごとに割り当てられたメーカー別のコードを示し、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)という団体で登録/管理しています。下位3バイトは、各メーカーが管理するシリアル番号となります。
MACアドレス・テーブルの基本動作
スイッチがMACアドレステーブルをどのように利用するかを具体的に示したのが、図2-1です。
スイッチの「ポート1」に接続されている「PC1」から「ポート4」に接続されている「PC4」にデータを送信する場合、スイッチは「PC1」から受信したフレームのあて先MACアドレス(つまり「PC4」のMACアドレス)を、MACアドレス・テーブルの情報と比較します。「PC4」のMACアドレスは「ポート4」に接続されているMACアドレスと一致するため、「ポート4」にのみフレームを転送します。
この仕組みにより、図2-2のように「ポート1」と「ポート3」が通信していても、「ポート2」と「ポート6」で通信することができます。同時に複数ポート間で通信できることで、転送効率の高いネットワークが実現できるのです。
ハブとレイヤー2スイッチの大きな違い
レイヤー2スイッチと似た装置にハブがあります。ハブは、ネットワーク上の各端末に接続された複数のケーブルを集約するための装置です。単にハブといった場合は、LANにおけるネットワーク・ケーブルを接続する機器を指します。データをやり取りする際には、いったんハブを介して、ほかの端末と通信します。
ハブは、受け取ったデータをネットワーク内の全ノードに単純に中継するだけの装置です。つまり、レイヤー2スイッチのような、送信データを管理したうえでのあて先制御は行いません。これがハブとレイヤー2スイッチの大きな違いです。
つまり、ハブは、保有するすべてのポートに対してデータを流します。受信したデータ信号をただ単に橋渡しするだけです。このことは、ハブ自体がコリジョン・ドメインであることを意味しています。
なお、ここで言うコリジョン・ドメインとは、イーサネットなどのネットワークにおいて、同時送信によるデータの衝突(コリジョン)が発生する範囲のことです。言い換えると、ハブにつながるコリジョン・ドメイン内では、同時に1対1の通信しかできません。とても非効率です。
問題は、「1つのコリジョン・ドメインの中に数多くの端末が存在している」ということです。それならば、コリジョン・ドメインを分けて、それぞれに含まれる端末を減らせばよいのです。これはハブの機能では実現できません。しかし、レイヤー2スイッチなら実現できます。
レイヤー2スイッチでは、学習済みMACアドレスあてのフレームは特定ポートにだけ送信されます。これにより、ハブとは異なり、同時に複数のポート間で通信できます。つまり、レイヤー2スイッチは、各ポートがコリジョン・ドメインなのです。
次ページでは、Virtual LAN(VLAN)について解説します。