ネットワーク全体から見る「ルーター超入門」
ルーターの用途によって設置場所と呼び名が変わる
前回は、LANの根本技術であるスイッチについて学びました。今回は、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)とWAN(ワイド・エリア・ネットワーク)の橋渡し役であり、異なるネットワークへの通過ポイントとして使われるルーターについて、その基礎技術を学びます。
今回も、「個々の技術をひとつひとつ極める」という従来の考え方をいったん脳裏からすべて捨てて、ネットワーク全体を俯瞰(ふかん)して全体像を把握したうえで、「ルーターの基礎技術」を学んでいきます。
ルーターと聞いてまず連想するのが、WAN(通信サービス)とLAN(企業の構内ネットワーク)を仲介するWANルーター(エッジ・ルーター)です(図1-1)。WANとLANの中間に位置し、互いのエリアの橋渡し役を担っています。今回は、このような機器であるルーターについて解説します。
そもそもルーターとは、ネットワーク機器の1つで、OSI参照モデルの第3層にあたるネットワーク層(TCP/IPではインターネット層)において、データの行き先を判断/転送する中継装置です(図1-2)。ルーティング技術を駆使し、パケットに含まれるIPアドレスを見て、データの行き先を決定します。
前回のスイッチ(レイヤー2スイッチ)ではフレームという形式でデータを処理しましたが、今回のルーターはOSIの第3層であるパケットという形式でデータを処理します。
今ではルーターは、一般ユーザーにとっても身近です。インターネット接続が当たり前の世の中になり、ブロードバンド回線の低価格化にともない、ブロードバンド・ルーターが一般家庭に浸透するまでになったからです。
図1-3のように、ルーターは用途によって、ネットワーク上の設置場所が変わり、呼び名も変わります。一般家庭用のルーターは、ブロードバンド回線につなぐので、一般にブロードバンド・ルーターと呼ばれます。
企業ネットワークで利用するルーターのうち、WANとLANの仲介を意図した用途で使われるものには、LANから見たWANエッジ部分のWANルーター(エッジ・ルーター)と、社外ネットワークから見たLANエッジ部分の内部ルーターの2つがあります(これとは別に、社内LANの内部で使われるルーターもあります)。
WANルーターは、インターネット網やIP-VPNなど、通信サービス事業者が提供するWANサービスに接続するためのルーターです。接続するWANに応じて、必要となるインタフェースが決まります。なお、最近のWANサービスは、イーサネットで接続できるものがほとんどです。
一方、内部ルーターは、社内LANとファイア・ウォールの境界にあって、社内LANと社外ネットワーク(インターネットなど)間でやり取りするパケットの橋渡しを行います。また、インターネット回線へ接続するルーターのことを、インターネット・ルーターと呼びます。
このようにルーターにはさまざまな用途があり、それぞれの用途に応じて呼び名が変わります。
ルーターの機能はパケットの中継
ルーターもスイッチ同様に、一般消費者向けの製品から企業向けの製品まで、さらに通信事業者向けにさまざまなプロトコルを搭載した製品まで、用途に応じてさまざまです。しかし、規模の大小や使用場所に関係なく、「ルーティング」(経路情報にのっとってパケットを転送する)という基本的な仕組みや機能は同じです。
ルーターは、異なる複数のネットワーク(図1-4ではLAN-1とLAN-2)に接続して使います。これら複数のインタフェースごとに、それぞれのネットワークで利用するIPアドレスを設定します。このうえで、ルーティング(経路制御)により、直接所属していない離れたネットワーク同士を接続します。つまりルーターは、ほかのネットワーク同士を橋渡しする役割を担っています。
次ページからは、ルーターの基本動作「ルーティング」について解説します。