VRが変える採用活動
Deloitteが2016年に行ったアンケートでは、2000年代生まれの3分の2が今の仕事を2020年までにやめるという。人事部にとってこれは何を意味するのだろうか?
流動的で大規模な求人市場は、人材採用をこれまでになく厳しいものにしている。将来の従業員、特に2000年代生まれの人材とコンタクトを取ることは簡単ではない。LinkedInやIndeedなどにより、そういった人材を見つけることは楽にはなったが、最も欲しい人材を説得し、雇い入れることは難しくなっている。
若い求職者達は雇用者について判断するための手段を渇望している。
そこでVRの登場である。
VRは長らく没入型の変革技術だといわれてきた。ゲームやエンターテイメント業界はこのテクノロジーのアーリーアダプターだが、人事はこれに続くこと少々遅れている。
人事はルールや手続きのうえに成り立つ世界であり、柔軟性や創造性をもって働く環境ではないことからも、これは理解できることだ。しかし就活生からすると、新聞広告や大学の求人センターに貼りだされている告知などが就活の方法としては時代遅れと感じられる今、採用担当は彼らとコンタクトを取るための創造性のあるよりよい手段を課されている。
例をあげるとトヨタの場合、就職フェアで希望者に地方にあるオフィスを見学してもらう方法を模索していた。彼らを全員現地に連れて行くのは実現不可能なので、そこでVRに目を向けた。トヨタはすでに我々のInstaVRプラットフォームを使いGear VRを用いて仮想的に”一日の仕事”を見せることを行っていた。VRツアーが非常に好評なのがわかったため、トヨタはそれをアップグレードすることにした。やがて動画はGear VRの限界を超え、その結果HTC Viveを使った部屋ほどの大きさの20分以上に渡るVRツアーをつくり上げることとなった。
就活でVRによるオフィスツアーを行っている企業はトヨタだけではない。現在はWalmartの一部門であるJet.comは2015年にはVRを使ってニュージャージーにある本社とそのユニークな企業文化を就活生に紹介していた。Oculus Riftを早々に採用したGeneral Millsも同じく、2015年にミネアポリスにあるキャンパスとその周辺のVRツアーを行っている。VRヘッドセットはもはや主流のものであり、さらにはGoogle Cardboardのような安価な選択肢も存在するなか、採用担当はVR動画のデモンストレーションのために就活生と対面する必要もなくなっている。動画の配布はiTunesやGoogle Play、あるいはWeb VRなどによって可能だ。
VRが持つインパクトはヘッドセットにとどまらない
就活イベントでまず興味を持ってもらうためだけなら、VRヘッドセットを提供するだけで十分だろう。粗品やTシャツなどと違い、VRは若い就活生に記憶に残るエクスペリエンスを提供し、技術的な取り組みをしている企業なのだという印象を与えることがきでる。Inlet Shoresグループの設立者 John Alonsoは、顧客である米国連邦政府の採用イベントのためのGear VRを使った動画を制作している。Alonso氏はつぎのように説明する。「これは大成功でした。VRが効率のいいコミュニケーションツールであり、またモダンで新しいものでもあることから、イベントではこれまで以上の反応が得られたように思います」
VRはまたトレーニングの一部であり、自信を与えてくれるものでもある。Livewireプログラム開発の責任者 Jono Kirkhamは、オーストラリアで最も大規模な児童慈善団体のためのトレーニングアプリを制作している。このアプリの没入的なVRエクスペリエンスにより訓練を受けるボランティアは病院に駆け込む前に、子どもの体調が深刻な状態になるのがどういうことかを理解することができる。
「ヘッドセットを装着すると、あなたは病院のベッドに横たわっている児童の視点で機械が発するビープ音や廊下の足音など、その周りのことを経験する状況になります」とKirkham氏は語る。彼によると、これらVRアプリは病院が児童にとってどのように感じられるものかを世話人が理解し、彼らにとって最善のエクスペリエンスを提供するのに役立つものだという。
VRを使った人材採用は決して新しいものではない。大学では地理的にはるか離れた就活生の採用に、これを何年も前から利用している。
サバンナ芸術工科大学の場合では、2016年に5000台のGoogle Cardboardを見込のある生徒に送付している。米国人材マネジメント協会によると一人当たりの平均採用コストが4000ドルを超えているというが、VRは就活生の興味を引き、オフィス及び企業文化を体験してもらうコスト効率のいい方法を提供していると言える。VRを使った採用活動がますます活発になるなか、企業がこれを使うべきだろうかという
疑問は少なくなり、逆にどうしたらこのテクノロジーをもっと効率的に使えるだろうかということを考えるようになるだろう。
この記事はVRシリーズの一部である。上図の高精細版はこちらからダウンロードできる。
Andrew Woodberry
[原文4]
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